口腔環境が原因じゃないことも?口臭が気になる時に疑った方がいい、深刻な病気とは|医師が解説


「口臭が強い…」それ、口腔環境だけが原因じゃないかもしれません。医師が解説します。
口臭は、主に呼吸器系・消化器系の内臓疾患、虫歯・歯周病等の口腔内疾患が原因として発生する病的口臭と起床時や空腹時などに発生する生理的口臭に大きく分類されます。
病的口臭のほとんど多くは、口腔内にその原因があり、歯周病、むし歯(う蝕)、歯垢、歯石、舌苔、唾液の減少、義歯(入れ歯)の清掃不良などが良く知られています。
また、病的口臭の場合には、扁桃腺炎、慢性鼻炎、副鼻腔炎(蓄膿症)など、感染による炎症が鼻やのどにあると、口の中に膿みが流れ込んでしばしば口臭を発生させますし、逆流性食道炎などでは、すっぱい胃液が食道に逆流することによって口が臭うことがあります。
全身の病気による代謝産物が血液中に増えて、口臭がひどくなることがあり、例えば、肝機能低下(アミン臭)、腎機能低下(アンモニア臭)、糖尿病(アセトン臭)、そして特に舌がんなどの悪性腫瘍(腐敗臭)が挙げられます。
舌がんとは?

舌がんはその名の通り、舌に形成される悪性腫瘍であり、舌以外にも、歯茎、上顎部、頬部粘膜などに認められる口腔がんのひとつのタイプと認識されています。
男女比にすると3:2とやや男性に罹患者数が多く、発症する好発年齢は60代以降に最も発症率が多いと指摘されていますが、若年者にも稀に認められます。
舌がんは、鏡を利用して実際に患部を自分で確認することができる悪性腫瘍であり、舌の先端部や表面中央部分ではあまり認められない一方で、舌の両脇に形成されることが多く、時に舌裏側など見えにくい部位に発生することもあります。
自覚症状としては、舌に硬いしこりが触れることがありますが、強い痛みや大量の出血があるとは限りませんが、がんが進行すれば痛み症状が悪化して病変部から出血が持続する、あるいは口から異臭や異常な口臭が認められることが挙げられます。
現在のところ、舌がんの明確な原因は明らかではありません。
これまでの研究から、舌がんの発症危険因子として、日常的に喫煙や飲酒によって化学的な慢性刺激が舌部分に与えられている人、あるいは適切でない詰め物や偏位している歯牙などによって機械的に舌が慢性的な刺激を受けている場合にはより罹患しやすいです。
口腔内が不衛生な状態が継続している、あるいは白板症を始めとする舌粘膜の病変が時に加齢に伴って癌化することも考えられますので、慎重に経過観察することが重要です。
舌がんに対する一般的な治療方法は、個々のがん患者さんにおける病変の進行度や全身状態などから判断されることになっています。
まとめ
他人と近い距離で話す時に、口臭が気になると、後ろめたさや居心地の悪さを感じますね。
本人に悪気はなくても、周囲を不快にさせてしまいかねない口臭に対しては、十分にケアすることが重要です。
口臭のほとんどは、口腔内で剥がれ落ちた粘膜・唾液・食べ物の老廃物に含まれるタンパク質が、口内の常在菌によって分解・発酵されることによって発生しますが、それ以外にも、舌がんなどの悪性腫瘍に伴って、強い口臭が発生することがあります。
口臭の原因となっている病気を同定して、クリニックや病院で精査加療することで、口臭を改善できる期待感が持てますので、心配であれば、歯科口腔外科など専門医療機関を受診して、相談してみましょう。
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