「背中が痛い」それ深刻な病気のサインかも?考えられる病気は…医師が解説


病状が進行すると、すい臓や食道などの臓器に関わる病気の発症リスクも向上するので注意が必要です。医師が解説します。
「背中が痛い」で考えられる病気は?
背中が痛い際に考えられる疾患のひとつとしては、「食道アカラシア」が挙げられます。
食道アカラシアとは、食道の運動機能障害のひとつであり、消化管の蠕動運動機能が低下して、下部食道括約筋(食道と胃のつなぎ目の筋肉)の機能に異常が生じる状態です。
食道アカラシアを罹患すると、食べ物がうまく通過しなくなります。
通常、30~50歳代で発症するケースが多いとされていますが、どの年齢層でも起こります。
食道アカラシアは、原因不明の食道の機能異常と考えられている病気であり、食道の蠕動(ぜんどう)運動が障害され、下部食道括約筋(かつやくきん)(胃に近い部分の食道の筋肉)が十分に開かなくなります。
主に、中年で発症することの多い病気であり、固形物だけでなく、液体もうまく飲み込めなくなります。
嘔吐症状も起こりやすく、特に夜間、寝ているときに症状がひどくなる傾向がありますし、胸の痛み、背中の痛みがでて、病状が進行すると体重が徐々に減少してきます。
食道アカラシアを発症すると、代表的な症状としては、喉のつかえ感や吐き気などの症状が認められます。
専門的な治療としては、従来は下部食道括約筋を緩めるための薬物療法などが行われてきましたが、昨今では、経口内視鏡的筋層切開術が保険適用されて、おおむね標準的な治療として知られています。
「背中が痛い」で考えられる病気は?
背中が痛い際に考えられる疾患のひとつとしては、「急性膵炎」が挙げられます。
一般的に、膵臓は、基本的に膵液を十二指腸に分泌する、あるいは血液中にグルカゴンやインスリンなどのホルモンを分泌する臓器として知られています。
膵液には消化酵素が多く含まれており、食べ物を消化する働きがありますし、インスリンは糖代謝を調節して血糖値を調節する機能を有しています。
急性膵炎の約7割は、習慣的な飲酒が原因と考えられていて、遺伝子によって膵炎になりやすい家系の人もいると伝えられています。
急性膵炎の初期段階における主な自覚症状は腹痛です。
病状が進行すると、膵臓機能が低下して、消化不良に伴う下痢症状や体重減少などのサインが出現すると同時に、栄養障害や糖尿病の発症リスクも向上するので十分に注意してください。
急性膵炎は、膵の炎症が膵局所に限局した軽症急性膵炎と炎症が全身に広がった重症急性膵炎に分けられます。
軽症急性膵炎では、数日の絶食と補液のみで、合併症なく治癒しますが、重症急性膵炎では、膵臓から逸脱した膵酵素やケミカルメディエーターによって全身組織の血管内皮が障害されて、血管透過性が亢進する病態となります。
軽症の急性膵炎では、炎症が膵臓とその周辺までに限局し、臓器不全または全身性もしくは局所の合併症は生じず、死亡率は5%未満であるといわれています。
中等症の急性膵炎では、局所または全身の合併症があるものの臓器不全はないか、あっても一過性(48時間以内に消失する)です。
重症の急性膵炎では、持続性(48時間以上続く)の臓器不全または多臓器不全がみられて、ほとんどの患者で少なくとも1つの局所合併症を伴い、死亡率は30%超となります。
心配であれば、消化器内科など専門医療機関を受診する必要があります。

まとめ
背中が痛む原因は、急性膵炎や食道アカラシアなどをはじめとして、すい臓や食道などの臓器に関わる病気である可能性があります。
日常生活の中で、食後に背中が痛むことが多い、あるいはご飯を食べると背部に激しい痛みが襲ってくるなど心配な症状がある場合には、消化器内科など専門医療機関を受診して、相談しましょう。
背中が痛む症状以外にも、喉のつかえ感や腹痛などの症状が続くときは、軽く考えずに早めに専門医療機関である消化器内科を受診しましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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