知っているようで意外と知らない〈健康診断〉腹部超音波検査でわかることとは?医師が解説

 知っているようで意外と知らない〈健康診断〉腹部超音波検査でわかることとは?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-12-25

腹部超音波検査でどんなことが分かるのか、医師が解説します。

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腹部超音波検査とは?

腹部超音波検査は、胆石などの病変を検知するに際して、最も選択されやすい検査法です。

患者さんは苦痛を伴うことなく、さらに放射線被曝する心配も不要であるため誰でも安心して受けることが可能です。

主に、胆石症など腹部病変の早期発見を目指すために、最初に検査費用が約5000円と比較的簡便に実施できる腹部超音波検査を活用してスクリーニングを実施することが重要な点です。

腹部超音波検査は、腹部にプローブという端末機を当てて、臓器に反射した超音波を画像にして腹部内に異常所見があるかどうかを評価できる検査方法となります。

体外から臓器の状態を観察する検査手段であるため、腸管ガスや肥満など体格の影響を受けやすく時に病変抽出が困難であるケースも想定されますが、CT検査などのように放射線被曝の心配がなく病変部のサイズ計測も容易に出来るのが利点となっています。

腹部超音波検査でわかる病気とは?

腹部超音波検査でわかる病気のひとつとして、胆石症が挙げられます。

胆石に伴う疝痛発作が起こると、血液検査所見にてCRPや白血球といった炎症反応の上昇、あるいはGOT(別名:AST)、GPT(別名:ALT)などの肝酵素やALP、γ-GPTといった胆道系酵素の高値が認められることがあります。

胆嚢から落石した胆石病変が総胆管部における胆汁の通り道を塞ぐことによって黄疸所見や急性膵炎を合併することがあり、その際にはビリルビンやアミラーゼといった肝胆膵関連酵素マーカーの上昇所見もあわせて認められます。

このように、血液検査を実施すると胆道領域で強い炎症が引き起こされていないか、もしくは黄疸所見は有意に起こっているかどうかなどが判明します。

健診などで仮に血液検査を実行した際に炎症反応高値、あるいは肝胆道系酵素が上昇している場合には、胆石の存在を疑って腹部超音波検査をはじめとする精密検査を受けられることをお勧めします。

胆石に関する精密検査のなかで最も簡便に標準的に施行される検査方法が腹部超音波検査であり、胆のう内部における結石や肝臓内に存在する結石病変に関してはほぼ確実に結石エコーと呼ばれる像が描出できて診断に役立ちます。

腹部超音波検査は、プローブ(探触子)と呼ばれる専用装置を被験者の腹部にそっと当てるだけで画像描出することができて、患者さんの身体への負担が極めて少ないという利点が挙げられます。

腹部超音波検査においては、人間ドックや健診などを受けた際に偶然に胆石が指摘される場合もあり、患者さんに対して低侵襲に負担なく実施出来るという意味でCT検査よりも優れていると考えられます。

特に、コレステロール成分を多く含有する胆石病変の場合にはカルシウム成分が相対的に少ないため、レントゲンやCTなどの放射線検査では病変部が描出されにくく、胆石を全般的に指摘するためにはもっぱら腹部超音波検査が頼られています。

もともとすでに胆嚢内部に胆石が発見されている場合はもちろんのこと、これまでに病変を指摘されていないケースでも健診や人間ドックを定期的に受診して簡便に実施できる腹部超音波検査を可能な限り検査してもらうように心がけましょう。

まとめ

腹部超音波検査は、体の表面に超音波の出る探触子を当てて、腹部臓器の部位や形状、あるいは臓器周囲の血流状態や胆石などの異常所見を評価するための検査です。

この検査では、検査時に患者さんが痛みを自覚することはほとんどないために身体への侵襲度も少なく、その場でリアルタイムに状態を確認することができる観点から、腹部病変のスクリーニング目的に実施する場合に最適な検査であると認識されております。

特に、胆石を有する患者さんにおいては、腹痛などの症状を自覚することで医療機関を受診するケースが多く、腹部超音波検査など、色々な画像検査を組み合わせて腹部症状の原因を調査することで正確な診断に結び付けます。

各々の患者様の背景、全身状態などを総合的に判断して主治医が適切な検査法を決めていきますので、胆石症を抱えている方や腹部症状の原因を評価してほしい人はかかりつけ医や専門医に遠慮なく相談しましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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