ほてり、イライラだけじゃない!閉経前の女性の体に起きることとは?医師が教える、閉経前後の心構え
閉経前後には様々な症状がみられます。なかには症状がひどくて日常生活に支障が出る場合も。閉経前特有の症状やその対処について、医師が説明します。
閉経前に起こる体の変化
閉経前に現われる兆候として、まずは月経の乱れ(月経不順)が挙げられます。
閉経前には、それまで規則正しく訪れていた月経が、最初は短い周期で訪れるようになってきます。
減少した女性ホルモン(エストロゲン)をさらに分泌しようとするため、脳下垂体からの性腺刺激ホルモンが大量に分泌されます。
その結果、人によっては月に2回も月経が訪れますが、月経の際に出る血そのものの量は少なくなっていく現象が現われるのが一般的です。
閉経前において現われる代表的な症状として、「ほてり」や「のぼせ」などの症状が挙げられます。
ほてりやのぼせは、風呂上りによくある現象と似ていますが、自分でも気づくことが多いです。
ほてりは、身体が異常にポカポカとしてくる状態で、実際に汗をかいて顔が赤くなることがありますし、のぼせは、毎回同じような時間や動作で、頭に血がのぼったような症状が現われます。
毎回同じような状況で同一の症状が出現するので、自分でもこの状況を自覚し、適切に対応することが必要です。
閉経前の特有の症状
閉経前の特有の症状としては、「めまい」や「頭痛」といった身体的な症状も特徴的で、不快感を自覚する方が多いです。
めまいの特徴としては、まるで船に乗っているようなフラフラ感が挙げられます。
めまいや頭痛は、通常であればしばらく安静にしていると治まってくることが多いため、特に慌てることなく、自然な状態で安静な対応が取れるよう工夫しましょう。
閉経前には、イライラ・うつ症状・集中力欠如による不眠症・無気力・脱力感などの精神的な症状が現われる場合があります。
こうした症状に悩まされている場合には、そのまま放置していても状態がなかなか改善されないので、婦人科や心療内科など医師への受診が必要です。
専門の医師に相談することで、精神的にも落ち着きますし、具体的な対処方法についてアドバイスが得られるでしょう。
特に気をつけるべきなのは、環境や人間関係などが原因で起きる精神的ストレスは、症状が悪化するケースが非常に多いことです。
ストレス社会といわれる現代において、環境や人間関係による精神的なストレスは避けて通れるものではありません。
どうしても発生してしまう精神的ストレスですが、なんとか打開策を見出し、折り合いをつける努力が必要となります。
閉経前には、生殖器や尿路、皮膚の変化などが認められますし、閉経の前後に乳房痛があることなども見受けられます。
閉経の前後には、女性ホルモン量の変化によって、乳房の圧痛、気分のかわりやすさ、月経の前後あるいは月経中に起こる片頭痛(月経時片頭痛)の悪化が認められます。
抑うつ、易怒性(いらだち)、不安、神経過敏、睡眠障害(不眠など)、集中力低下、頭痛、疲労なども起こることがあります。
生殖器や尿路にも影響が現れることも
特に、腟の粘膜が薄くなって乾燥し、弾力を失っていく変化によって、性交時に痛みが生じることがあります。
小陰唇、陰核、子宮、卵巣などの他の生殖器もサイズが小さくなりますし、加齢とともに性的欲求(性欲)の低下もよくみられます。
また、尿道の粘膜が薄くなり、尿道が短くなることによって、微生物が体内に入りやすくなり、尿路感染症を起こしやすくなる女性もいます。
尿路感染症の女性は、排尿時に灼熱感を覚えて、急に耐えがたい尿意を覚えることがあり、時に尿失禁(意図せず排尿してしまうこと)につながります。
肌や髪への影響も
閉経前には、女性ホルモンが少なくなることにより、肌や髪が弱く敏感になり、その結果としてかゆみや湿疹などの症状が現われることがあります。
かゆみや湿疹は、症状が現われると非常に不快であり、日常生活にも少なからず影響が出てしまうため厄介です。
加齢による角質層のセラミドの減少によって、このような肌や髪の症状に拍車をかける結果となることも多い状況です。
肌や髪の不調以外にも、手足の痺れや震えといった症状を伴うこともあるので、ケアが必要となります。
閉経前後の心構えとして持っておくべきこと
閉経前後における障害の主な原因としては、女性ホルモン(エストロゲン)のゆらぎと減少が挙げられます。
この状態を改善するための、少量のエストロゲンを補う治療法としては、ホルモン補充療法(HRT:Hormone Replacement Therapy)が主流です。
HRTは、ほてり・のぼせ・ホットフラッシュ・発汗といった、血管の拡張と熱の拡散に関係する症状に対して特に有効です。
女性ホルモンが減少する状況は、更年期では避けて通れないことなので、こうした治療法を採用することで症状の軽減を図りましょう。
エストロゲンは、単独では子宮内膜増殖症のリスクが上昇するため、子宮がある場合には黄体ホルモンを併用します。
また、手術で子宮を摘出した場合には、黄体ホルモンを重複して投与する必要はありません。
HRT用に処方されるホルモン剤には、飲み薬・貼り薬・塗り薬など、いくつかの種類があり、投与法も同様です。
専門の医師と相談し、自分に合った投与方法を選択することが大切です。
特に、ホルモン補充療法中には軽度の副作用があり、不正出血・乳房のはり・痛み・吐き気・頭痛などがよくみられます。
処方後の経過とともに気にならなくなる場合もありますが、改善しない場合には、投与量の減量や治療の中止を選択するのが現状です。
症状が改善しない場合は、担当の医師としっかり相談し、対応策を検討しましょう。
非常にまれな副作用としては、60歳以上の高齢者への投与や肥満・高血圧の場合に、静脈血栓塞栓症や脳卒中の危険性が増加するリスクがあります。
まとめ
閉経前後には、女性ホルモンの減少に体が慣れるまでには様々な症状がみられます。
これらの症状には個人差が大きく、全く症状が現れない場合もあれば、症状がひどくて日常生活に支障が出る場合もあります。
症状がひどくてつらい場合は、婦人科や心療内科など専門の医師に相談し、適切な対応策を施すよう気を配りましょう。
AUTHOR
甲斐沼 孟
大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。
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