患者数そのものでは子宮頸癌を上回る〈子宮体癌〉代表的な症状やサインは?医師が解説

 患者数そのものでは子宮頸癌を上回る〈子宮体癌〉代表的な症状やサインは?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2024-05-26

比較的ポピュラーな疾患?子宮体癌は閉経した50代前後の女性にもっとも多く発症すると言われています。医師が解説します。

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子宮体癌とは

子宮体癌とは、子宮内面を覆っている子宮内膜部と呼ばれる組織から発生する悪性腫瘍のことを指しています。

子宮体癌の約8割以上は子宮内膜の増殖を促す作用を持っている「エストロゲン」と呼ばれる女性ホルモンが過剰に分泌されることが原因と言われています。

子宮体癌に対する外科的な治療は、手術操作によって子宮と両側付属器(卵巣・卵管)を切除することが基本となり、術後は、病期の確定、および術後再発リスクの分類による判定結果に応じて化学療法を含めた二次的な治療手段を担当医と相談して決定します。

2017年の段階で約1万人を超える方が「子宮体癌」と診断されており、患者数そのものでは子宮頸癌を上回っています。

子宮体癌は本邦でも比較的ポピュラーな疾患であり、年間死亡者数も2007年時点では約1600人であったのが、2017年で約2500人とこの10年間でおよそ1.5倍に増加しています。

一般的に、子宮は筋肉成分で構成されていて、その内側は受精卵が着床する部位でもある子宮内膜と呼ばれる粘膜で覆われていて、この子宮内膜は女性ホルモンの分泌によって増殖、あるいは剥がれ落ちることを繰り返しています。

子宮体癌は、そんな子宮内膜から発生する悪性腫瘍であり、閉経した50代前後の女性にもっとも多く発症すると言われています。

子宮がん
子宮体癌 イラスト/Adobe Stock

子宮体癌を疑うサインや代表的な症状

子宮体癌はおおむね50歳代が好発年齢と言われており、その中でも閉経後に発症するケースが多く認められます。

子宮体癌は、初期から症状がみられることが多いがんであり、初期症状は不正出血が代表的で、患者の約90%にみられるといわれています。

月経でない期間や閉経後に出血がある場合、子宮体癌が疑われますし、子宮体癌の場合には、おりものに血や膿が混ざることもあります。

閉経後や更年期に不正出血がある場合、閉経前でも月経不順がある場合、乳がんを患ったことがある場合は、子宮体癌の発症リスクが高く、注意が必要です。

子宮体癌が進行してきた際に現れる症状として代表的なものは、下腹部の痛み、性交時の痛み、排尿困難や排尿痛、腹部膨満感などが挙げられます。

子宮体癌は、初期の段階から不正性器出血を自覚するために比較的早期に発見できる腫瘍ですが、進行して病状が悪化すると癌細胞が腹腔内など様々な部位に転移することもあるので十分に注意が必要です。

子宮体癌の疑いがもたれた場合は、内診を行って子宮内膜の細胞を実際に採取して病理検査を行って正確な病理診断を付けることが推奨されます。

また、がんの解剖学的な位置や形状、あるいは悪性腫瘍がどこまで進展して広がっているかを評価するために、子宮鏡検査や超音波検査、CTやMRIなどの画像検査を実施することもあります。

まとめ

これまで、子宮体癌とはどのような病気か、子宮体癌を疑うサインや代表的な症状などを中心に解説してきました。

子宮体癌の約8割以上は子宮内膜の増殖を促す作用を持っている「エストロゲン」と呼ばれる女性ホルモンが過剰に分泌されることが原因と言われています。

また、子宮内膜の増殖を抑制してエストロゲンの作用を調整する役割を担っている「プロゲステロン」という女性ホルモンが不足して相対的にエストロゲンが過剰となる状態が続くと子宮内膜が異常に増殖して子宮体癌を発症するとも伝えられています。

したがって、妊娠回数の少ない人などを代表例としてエストロゲンに頻繁にさらされている期間が長ければ長いほど、子宮体癌の発症リスクが上昇すると考えられます。

子宮体癌における代表的な初期症状は、不正出血です。
子宮体癌を早期発見するには、子宮体がん検診を受けることが有用です。

特に、子宮体癌の発症リスクが高い人は、自覚症状がなくても定期的に子宮体がん検診や検査を受けましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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甲斐沼 孟

甲斐沼 孟

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センターや大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センターなどで消化器外科医・心臓血管外科医として修練を積み、その後国家公務員共済組合連合会大手前病院救急科医長として地域医療に尽力。2023年4月より上場企業 産業医として勤務。これまでに数々の医学論文執筆や医療記事監修など多角的な視点で医療活動を積極的に実践している。



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