【医学博士が教える】子宮頸がんの発症リスクを抑える可能性のある「最強野菜」トップ3
日本では年間約1万人が子宮頸がんに罹患しています。子宮頸がんはワクチンで感染を、検診で進行を予防できるがんであり、加えて食事をはじめとする生活習慣でもがん化のリスクを減らせます。その効果が身近な野菜にあるとしたら、知っておいて損はないはず。今回は、子宮頸がんの発症リスクを抑える効果が期待できる最強野菜について医学博士の岩崎真宏さんに伺いました。
発症原因は、誰でも感染の可能性がある「HPVウイルス」
――近年、子宮頸がんの罹患数が増えていると聞きますが、発症原因を教えてください。
「子宮頸がんは女性が罹患するがんのうち世界で4番目に多く、非常に問題となっています。ほとんどはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルス感染が原因で、HPVは性行為によって男性にも女性にも感染します。HPVには200種類以上の遺伝子型があり、そのうち40種類を超える遺伝子型が生殖管に感染する可能性があります。ワクチンはHPV16型・18型など特にがん化リスクが高い遺伝子型の感染を予防し、子宮頸がん検診を定期的に受けるとがんを早期に発見し治療につなげられます」
――HPVに感染すると、かならず子宮頸がんを発症するのでしょうか?
「HPVは、性行為の経験があれば誰でも感染するごく一般的なウイルスで、感染してもほとんどの人は免疫によって消滅しますが、一部の人でがんになることがあります。HPVがなくならず持続感染すると、細胞異型を起こした細胞の多さで決まる軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成または上皮内がん(CIN3)という3つのグレード(がんになる手前の状態・前がん病変)を経て、さらに進行すると子宮頸がんを発症します。
子宮頸部の頸管粘液にはHPV感染を防ぐ作用があり、子宮頸部が未熟で粘液の分泌量が十分でない30代未満の女性は持続感染しやすいと報告されています。また50歳以上の女性の持続感染も多く報告されており、これは免疫の低下によりHPVウイルスを除去するウイルスクリアランス能力の衰えが原因と考えられています。子宮頸がんの発症リスクを抑えるには、ワクチン接種や子宮がん検診の定期的な受診とあわせて、生活習慣を見直して免疫を保つことが一つの鍵になると言えます」
免疫維持に必要なのは、睡眠、運動、食事バランス
――ウイルスクリアランスを左右する「免疫」を保つには、生活習慣で何に気をつければいいですか?
「睡眠が5時間未満の人と7時間以上の人を比べると、前者は感染症の発症率が4倍以上も高くなるという報告があるので、免疫を保つには十分な睡眠時間の確保が大切です。運動不足の人も免疫が下がる傾向があります。免疫細胞にはウイルス感染を発見するとすぐに除去してくれるナチュラルキラー細胞が存在し、運動によりこの細胞が増えることがわかっています。運動をやめると元に戻りますが、定期的に体を動かしているとナチュラルキラー細胞が増加してパトロールの活性化が期待できます。もう一つ大切なのは食事です。免疫細胞は血液中にあり血中の糖を活用して働くので、過度な糖質制限をして糖が不足すると免疫細胞が弱化して子宮頸がんを発症しやすくなると考えられています」
免疫を食べて維持!「子宮頸がんの発症リスクを抑える最強野菜トップ3」
――野菜のなかでも、子宮頸がんの発症リスクを抑える効果が期待できるトップ3を教えてください。
1位 モロヘイヤ
子宮頸がんの発症リスクを抑える効果が期待できるのが緑黄色野菜です。具体的にどの栄養素が発症リスクを減らすかは研究中ですが、緑の野菜に含まれるβカロテンやルテインの血中濃度が高いほど発症リスクが低下することがわかっていて、緑の濃い野菜を食べることが一つの指標になっています。モロヘイヤはβカロテンを多く含み、すべてのCIN(子宮頸部異形成)グレードに対する防御効果が期待できます(※1)。加熱すると出てくる粘りの主成分である食物繊維は、腸を整えて免疫を活性化。おひたしのほかにパン生地に混ぜるとよく膨らみ、抹茶のような味わいが楽しめます。
2位 ほうれん草
濃い緑色の野菜は、CIN3(高度異形成または上皮内がん)に至るリスクを約50%減少させる効果が認められています。ほうれん草やアブラナ科の野菜は、論文で子宮頸がんのリスク低下との関連性が立証されているので(※2)、特に手軽に買えるほうれん草はおすすめです。加熱すると体積が小さくなるためたくさん食べられて、おひたしやソテーにするとおいしくいただけます。
3位 トマト
血液中のリコピンの濃度が高い人ほどウイルスクリアランスが高く、持続感染を抑えられることがわかっています(※3)。トマトはリコピンを多く含む野菜の代表格です。生で食べてもおいしく、加熱すると甘味が増してリコピンの吸収率がアップ。グリルで焼き目をつけたり、チーズやクリームとの相性がいいのでピザやグラタンもおすすめです。また、スイーツにも活用できて使い勝手の良さが魅力。
「おいしく、バランスよく」免疫を維持する豆知識
――最強野菜2位のほうれん草は、えぐみ(灰汁)が苦手という人もいます。えぐみを減らしておいしく食べる方法を教えてください。
「えぐみの原因は、肥料に使われる硝酸態窒素という窒素成分です。冬が旬のほうれん草を夏に収穫するには人工肥料をたくさん使う必要があり、そうすると硝酸態窒素が増えてしまいます。もしえぐみが気になる場合は、冬のほうれん草を選びましょう。冬に収穫したものはちぢみほうれん草と呼ばれ、その名の通り地面を這うように育つちぢれた葉が特徴で、寒い中で栄養を蓄えて育った葉は肉厚で食べ応え十分。また、硝酸態窒素はお母さんの母乳を経て赤ちゃんの体に入り健康被害をもたらすことがありますが、冬のほうれん草は含有量が少ないので安心して食べられます。硝酸態窒素は茹でると除去でき、3分茹でるとかなり減少します。3分以上茹でても減少率は変わりません」
――最強野菜にプラスして食べておきたい、免疫を高める食材はありますか?
「HPVウイルスに感染して免疫細胞が働く際に必要なのが、血液中のアルブミンという成分です。アルブミンの材料となるのがたんぱく質で、男性に比べて女性は肉や魚などたんぱく質源の摂取量が少なく、またダイエットで動物性たんぱく質を節制しているとアルブミンの数値が低下しがち。たんぱく質が不足すると、感染して瞬時に免疫細胞を活性化したいときのポテンシャルを失う可能性があるので、バランスの良い食事を心掛けてウイルス感染に負けない免疫を維持しましょう」
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その他参考論文
教えてくれたのは…岩崎真宏さん
医学博士、管理栄養士。病院で管理栄養士として働き、食事を変えると治療薬の効果が上がることを実証。その後、医学的根拠のある栄養学を実践するために独立。運動指導者、医療スタッフ、保育士、介護士、アスリートなどを対象にヘルスケア人材の育成と雇用創出、コンテンツ開発を行う教育事業を開始し、病気になってからではなく、健康なうちから使いこなせる栄養学を発信している。2017年には一般社団法人日本栄養コンシェルジュ協会を設立し代表理事に就任。栄養学からみた野菜の健康価値と野菜不足の社会課題のギャップ、廃棄野菜などの農業課題を解決するため、ヘルスケアと農業の循環型事業に取り組むベジタブルテック株式会社を創業。近著『野菜は最強のインベストメントである』(フローラル出版)も話題。
*本記事は、免疫維持において効果が期待できる野菜の栄養について言及したものであり、子宮頸がんの直接的な予防や治療における効果を謳う意図はありません。
AUTHOR
ヨガジャーナルオンライン編集部
ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。
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