うつ病かもしれない同僚。どう接していくべき?職場の在り方・人間関係の在り方|臨床心理士が解説

 うつ病かもしれない同僚。どう接していくべき?職場の在り方・人間関係の在り方|臨床心理士が解説
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佐藤セイ
佐藤セイ
2024-09-16

「表情が暗くなった」「遅刻や欠勤が増えた」など、同僚の様子がいつもとあまりにも違う場合、うつ病を疑ってみてもいいのかもしれません。今回は「同僚がうつ病かも?」と思ったときのチェックリストや対処法をご紹介します。

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同僚がうつ病かも?と思ったら

「同僚がうつ病かも」と思ったときのチェックリストをご用意しました。当てはまるものが多い場合、うつ病の可能性があります。

□遅刻や欠勤が多くなった

□出勤したときの顔色が悪い

□身だしなみが整っていない

□声が小さく口数が少ない

□人と話すのが億劫に見える

□愚痴が増えた

□怒りっぽくなった

□集中力がない、落ち着きがない

□単純なミスや物忘れが増えた

□業務の成果が以前より明らかに落ちている

うつ病かもしれない同僚との接し方

うつ病かもしれない同僚は心身ともに弱っており、ネガティブな感情に飲み込まれやすい状態です。ここでは、ネガティブな感情を刺激せず、穏やかにサポートするための3つの方法についてご紹介します。

うつ
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「NGワード」を押さえよう

同僚がうつ病傾向にある場合、いつも以上に言葉をネガティブにとらえる危険性があります。

特に避けた方が良いNGワードと、うつ病の人の捉え方の一例をご紹介します。

「頑張れ!」⇔「今までの頑張りでは足りないぞ!」

「気にしない方がいいよ」⇔「こんなこと気にするあなたがダメ」

「ポジティブに考えなよ」⇔「ネガティブ思考だからダメ」

「誰にでもあるよ」⇔「あなただけがつまずいている」

「大したことじゃないよ」⇔「あなただけが大げさに騒いでいる」

これらのワードに共通するのは、励ますつもりで、うつ病の人の「今」を否定していることです。うつ病の人は今の状態を維持することで精一杯。「今」のつらい考えや気持ちを否定されたり、変化するよう促されたりすると苦しくなってしまいます。

「頑張っているね」「大丈夫だよ」など「今」を肯定する言葉かけができると良いですね。

気持ちを傾聴しよう

励ましよりも大切なのは、彼らの話に真摯に耳を傾ける「傾聴」です。「頑張ってきたんだね」「そんなことを考えていたんだ」と、ただ受け止めてあげましょう。

しかし、語られる内容によっては、思わず言い返したくなったり、眉をひそめたくなったりすることもあります。

例えば、「課長がむかつくから、非通知で無言電話を何度もかけた」という不穏な発言には「ダメだよ!」と否定したくなるでしょう。そんなときは発言の【事実】と【気持ち】を分けましょう。

【事実】非通知で無言電話を何度もかけた

【気持ち】課長がむかつく

この「非通知で無言電話を何度もかけた」という【事実】には共感せず、「課長がむかつく」という【気持ち】にだけ共感します。つまり、「課長がむかついたんだね、だけど、無言電話は良くない。もっと良い方法を一緒に考えよう」という形です。

基本的に自分を傷つけたり(自傷)、他者に危害を加えたり(他害)する【事実】については共感せず、一緒に適切な方法を考えるのが良いでしょう。

Iメッセージで受診や休息を勧める

うつ病かもしれない同僚に受診を勧めるときは、「I(私)」を主語にして伝える「Iメッセージ」を使うことを意識しましょう。

例えば、「私はあなたが心配だ。一度病院を受診してほしい」などです。

うつ病かもしれない同僚は、おそらく自分でも異変に気づいています。しかし、「おかしいと思われる」「ダメなヤツだと思われる」など他者からの評価が不安で、簡単に異変を受け入れられません。

そこに「You(あなた)」を主語にしたYouメッセージを使って「最近(あなたは)変だよ。病院に行きなよ」と指摘すると、不安が刺激されて、ますます受け入れられなくなります。

Iメッセージなら、同僚への評価ではなく「私の気持ち」を伝えられるため、強い拒絶には遭いにくくなります。

うつ病かもしれない同僚を支える職場の在り方

うつ病かもしれない同僚が心身ともに持ち直し、穏やかに過ごすためには職場環境についても見つめ直す必要があります。

労働環境を整えよう

うつ病を悪化させにくい労働環境のポイントは次の3つです。

□小さな目標を着実に達成できる

□仕事量や仕事内容が調整しやすい

□ほかの人から助けを得やすい

もし、うつ病かもしれない同僚から

「なかなかノルマを達成できない」

「仕事量が多すぎて終わらない」

「誰にも相談できない」

という言葉が聞かれたり、このような状況に陥っている様子が見られたりしたら、上司と相談し、改善に向けたサポートをしてみましょう。

刺激の少ない環境をつくろう

うつ病になると、いつもなら気にならない刺激が負担になります。

例えば、

・大きな声

・ざわざわした人混み

・雑然と物が置かれた空間

・日光や蛍光灯の光

などを、しんどく感じるかもしれません。

傾聴するなかで、上記のようなしんどさを確認したら、上司に報告し、静かで刺激の少ない席に移動するなど、工夫できると良いでしょう。

おわりに

うつ病かもしれない同僚を熱心にサポートするうちに、自分まで疲れて落ち込んでしまう人がいます。同僚を支えるための負担も、「もし何かあったら…」という不安や責任も、すべて1人で背負ってしまっているからです。

1人で抱えこまずに、複数人で支えていきましょう。上司や先輩に相談したり、カウンセラーなどの専門家に話してみたりすると、それだけで負担も責任も分散され、気持ちが軽くなるはずです。

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佐藤セイ

佐藤セイ

公認心理師・臨床心理士。小学生の頃は「学校の先生」と「小説家」になりたかったが、中学校でスクールカウンセラーと出会い、心の世界にも興味を持つ。大学・大学院では心理学を学びながら教員免許も取得。現在はスクールカウンセラーと大学非常勤講師として働きつつ、ライター業にも勤しむ。気がつけば心理の仕事も、教える仕事も、文章を書く仕事もでき、かつての夢がおおよそ叶ったため、新たな挑戦として歯列矯正を始めた。



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