うつ病を併発することも…意外と知らない「パニック障害」原因と治療法|精神科医が解説

 うつ病を併発することも…意外と知らない「パニック障害」原因と治療法|精神科医が解説
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豊田早苗
豊田早苗
2024-03-03

知っているようで意外と知らないパニック障害について、精神科医が解説します。

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パニック障害とは

パニック障害は、突然、動悸や息苦しさ、めまいや吐き気、頭痛などが起こり、「このまま死んでしまうのでは?」と思うほどの強い恐怖や不安に襲われる状態(パニック発作)が繰り返し起こる心の病気の1つです。

あまりにも強い不安や恐怖に襲われるため、症状が治った後も、「またいつ発作が起こるか分からない、また起こったら」と、パニック発作が起こった時の事が忘れられず、常に不安感にさいなまれながら、さらには、パニック発作が起こった状況や場所を避けながら、日常生活や社会生活を送ることになるため、耐え難い苦痛を感じ、うつ病を併発してしまうことも多いです。

パニック障害の原因は?

パニック障害の方は、血液中の二酸化炭素の上昇を敏感に感じやすく、少しでも二酸化炭素濃度が上昇すると、交感神経の働きが強まり、動悸や呼吸困難感、めまい等いわゆるパニック発作が起こります。

また、パニック障害の方は、不安や恐怖などの感情を生み出す脳の扁桃体の働きが過剰になっていると言われており、ちょっとした体の異変も命に関わる重大な異変と捉え、不安や恐怖に襲われます。

扁桃体は、記憶の中枢である海馬の近くにあるため、扁桃体の活動は海馬にも伝えられ、恐怖体験として記憶されます。このため、一度、パニック発作を起こすと、「また、発作が起るのではないか?」と再び発作が起こることを心配して不安になる予期不安が生まれます。

通常であれば、扁桃体の過剰な働きは、思考や行動をコントロールする中枢である前頭葉によって、抑えられますが、パニック障害の方は、前頭葉の働きが弱まっているため、扁桃体の過活動を抑えることができません。

つまり、パニック障害は、自律神経を統御する脳幹部、不安や恐怖などの感情をつかさどる扁桃体、そして思考と行動の中枢である前頭葉の働きの異常が絡みあい、本来生命を維持するための「脳内のアラーム機構」が誤作動が原因で起こると言われています。

パニック障害の症状

パニック障害の症状は、突然現れる発作的な身体的症状に加えて、強い恐怖や不安を感じることが特徴です。

典型的な症状としては、次のようなものがあります。

●呼吸困難感や息切れ、窒息感

●激しい動悸や胸の痛み

●発汗や震え

●頭痛やめまい

●嘔吐や腹痛

●現実感の喪失や離人症状(自分が自分でない感覚)

●死への不安と恐怖心

これらの症状は、通常数分から数十分間続いた後、自然に治ります。

また、パニック発作は電車やバス、飛行機、渋滞中の車、人混み、狭い空間など、不安や緊張を感じやすいところで起こりやすくなりますし、炭酸飲料やカフェイン、アルコールの摂取がパニック発作を誘発してしまうこともあります。

パニック
典型的な症状は、呼吸困難感や息切れ、眩暈や嘔吐、腹痛、死への不安と恐怖心など。これらの症状が数分から数十分続いたのち、自然に治る。photo by Adobe Stock

パニック障害の治療法について

パニック障害の治療法には、薬物療法と心理療法があり、併用することで症状を抑えながら予期不安や恐怖の軽減を図っていきます。

①薬物療法:

ベンゾジアゼピン系抗不安薬:レキソタン、ソラナックス、ワイパックスなど

不安や緊張を和らげる効果が強く、即効性もあるため、発作時にも使用できます。ただ、長期間連用することで、身体的精神的依存が起こりやすく、減薬する際に離脱症状が発生することがあります。

抗うつ薬:パキシル、ジェイゾロフトなど

セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などが、発作頻度の減少や予期不安を緩和する目的で使用されます。ただ、即効性はなく、効果発現まで、数ヶ月以上かかるため、長期間継続して服用する必要があります。

②心理療法:

認知行動療法(CBT):

パニック発作が起こるメカニズムについて学びながら、パニック発作に対する過剰な不安や恐怖心の緩和を図ったり、発作時の対処法を身につけていきます。

また、筋弛緩法や呼吸法などのリラクゼーションを日常生活に取り入れたり、前頭葉を鍛えるトレーニングを行ったりしながら、自律神経のバランスを整えつつ、脳のアラーム機能の誤作動が起にくい状態を作り上げていきます。

パニック障害を克服するために

パニック障害は、ある日突然、それまで経験した事がない強い不安と恐怖に襲われるパニック発作が繰り返し起こる心の病気です。

発作に対する不安や恐怖心があまりにも強いために、日常生活や社会生活への支障が起こりやすく、多大な精神的ストレスによって身も心もボロボロになるほどに苦められます。また、なかなか完治しにくいため、将来を悲観的に考えてしまうことも多いです。

ですが、治らない病気では決してありません。これさえあれば、発作が起こっても大丈夫と自分が安心できる術を身につけることができたなら、さらには、自分の予期不安がどれくらい的中しているのか?きちんと把握することが、できたなら、不安や恐怖は和らぎ、次第にパニック発作は起こらなくなっていきます。

まずは、自分がどんなことに不安や恐怖を感じているのか?自分の中にある不安を文章にしてみる、それは、パニック障害を克服する第一歩となるはずです。

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豊田早苗

豊田早苗

鳥取大学医学部医学科卒業後、総合診療医としての研修及び実地勤務を経て、2006年に「とよだクリニック」を開業。2014年には「とよだクリニック認知症予防・リハビリセンター」を開設。「病気を診るのではなく、人を診る」を診療理念に、インフォームド・コンセントのスペシャリストと言われる総合診療医として勤務した経験を活かした問診技術で、患者さん1人1人の特性、症状を把握し、大学病院教授から絶妙と評される薬の選択、投与量の調節で、マニュアル通りではないオーダーメイド医療を行う。精神療法、とくに認知行動療法を得意とし、薬を使わない治療も行っている。



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