「もしかしたら〇〇が起きるかもしれない…」未来への不安に悩む人に臨床心理士が伝えたい6つの対処法

 「もしかしたら〇〇が起きるかもしれない…」未来への不安に悩む人に臨床心理士が伝えたい6つの対処法
GettyImages
石上友梨
石上友梨
2023-11-24

不安に悩む人はとても多いです。不安という感情は危険から身を守るために人間に備わった大切な機能の一つ。しかし、不安は息苦しさ、心臓のドキドキ、不眠、胃腸不調など不快な身体感覚を伴うので、人は不安な状態を避けようしたくなります。今回は、不安の中でも「もしかしたら〇〇が起きるかもしれない」という未来に対する不安の対処法についてご紹介します。

広告

今はまだ起きていない未来の不安

本来私たちは現在直面しているストレスの影響を受けて心身が不調になります。しかし、不安については「起こるかもしれない」と実際に直面していない未来のことでも脅威となり、心身が不調になってしまいます。こうした仮定のこと、想像上のことでも、私たちの体は実際に直面している脅威と同じように反応し、HPA系が作動します。HPA系とは脳の視床下部から副腎皮質をつなぐ伝達経路のことで、脳でストレスを知覚すると副腎皮質でストレスホルモンと呼ばれるコレチゾールを生産・分泌し、体の状態がストレスに抵抗できるように切り替わります。

「もしも試験に落ちたらどうしよう」
「もしも発表がうまくいかなかったらどうしよう」
「もしも恋人に振られたらどうしよう」
「もしも…」

このような未来を予測する力は進化の過程で人間が得た素晴らしい能力である一方で、私たちの脅威にもなってしまいます。頭では「そんなこと起こるはずない」「そんなこと考えても無駄」と分かっていても、体は、脳は、現実の直面しているストレスと、仮定によるものを見分けられません。自分は未来のことに対する想像の不安が多いなと気づいたら対処法を検討しましょう。

GettyImages
GettyImages

未来の不安への対処法

不安に対処するためには、以下のアプローチが役立つことがあります。

リラックスできることをする

深呼吸や呼吸法、ヨガなどは自律神経系を整え、不安感を緩和するのに効果的です。特に慢性的な不安感に悩んでいる場合は、日頃からリラクゼーションを習慣化し、日常的な不安のレベルを低下させましょう。

問題を仕分けする

 不安を引き起こす要因を具体的に洗い出し、現在解決できる問題と、現在解決できない問題に仕分けします。解決できるものは具体的な対策を立てることで、問題が抽象的でなくなり、対処しやすくなります。解決できないものに対する不安は上手に付き合っていくしかないものです。不安をなくそうと抗うのではなく、「これは不安に思って当然だ」と受け入れることも必要です。

別の視点から眺めてみる

不安な状況に対してネガティブな視点だけではなく、ポジティブな視点、客観的な視点など、別の視点から眺めてみましょう。同じような状況でうまくいったことはあるか、過去の成功体験を振り返ることも効果的です。不安な時はネガティブなことにばかり注目しやすくなります。様々な視点から眺めるように、思考のバランスを取るように心がけましょう。

健康な生活習慣

良い睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動は、精神的な安定感を促進します。不安が強い時ほど、基本的な生活習慣に気をつけましょう。

両極を感じる瞑想

不安な時は両極を感じる瞑想が有効です。両極を感じる瞑想では、反対のものを体の内側で感じていきます。最初に不安な感覚を身体で感じてください。例えば、胸が苦しい、息がつまるなど、不安感を身体のどこで感じるでしょうか?数秒間、不安な感覚を感じます。次に、安心な感覚を身体で感じます。例えば、胸の温かい感じ、お尻がどっしりとした感じなど、安心感を感じる場所はあるでしょうか?数秒間、安心な感覚を感じます。最後に、不安な感覚と安心な感覚を同時に感じてみます。うまく意識できなくても、感じてみようとするだけでも大丈夫です。不安な感覚だけではなく、安心な感覚も感じることで、不安感が軽減されたり、新たな気づきを得たりできる瞑想法です。

専門家の協力

GettyImages
GettyImages

必要であれば、カウンセリングや心理療法を受けることが役立ちます。専門家は適切なアドバイスやサポートを提供できます。強い不安に対して有効な心理療法もありますし、不安は吐き出すことで小さくなります。一人で抱え込まずに相談してみましょう。

広告

AUTHOR

石上友梨

石上友梨

大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。



RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

GettyImages
GettyImages