ほくほく?ねっとり?管理栄養士が教えるおいしい焼き芋の選び方・見分け方
寒い季節になると、甘くて温かい焼き芋を食べたくなりますね。近年はスーパーやコンビニ、ディスカウントストアでも焼き芋を販売しています。せっかく購入するなら、よりおいしい焼き芋を選びたいものです。そこで、スーパーやコンビニで販売している焼き芋の選び方を管理栄養士が紹介します。おいしい焼き芋を食べて、おなかも心も満たしましょう!
焼き芋の甘さの秘密
甘くておいしい焼き芋には、糖質が豊富に含まれています。焼き芋約1/2本(100g)のエネルギーは151kcal、糖質は34.5gであり、同量の炊いたご飯とほぼ同じ値です。
さつまいもを焼き芋にすると甘くなるのは、加熱によりでんぷんが糖に変わるためです。
加熱すると、さつまいものでんぷんは糊化します。糊化とは、でんぷんが水分を含んで糊のような粘りのある状態になること。糊化したでんぷんは、β‐アミラーゼという酵素の働きで分解されてマルトース(麦芽糖)に変わるため、焼き芋は甘くなるのです。
β-アミラーゼは50℃を超えると活性化しはじめ、75℃以上では働きが弱くなる性質があります。したがってβ-アミラーゼが活発な温度帯を長時間維持できれば、でんぷんはより多くのマルトースに変わり、焼き芋は甘くなるでしょう。
石焼き芋は、加熱した石の中にさつまいもを入れて、時間をかけて焼き上げます。石焼き芋が甘いのは、β-アミラーゼが活性化する温度帯でじっくり加熱できるから。一方で電子レンジで加熱すると、さつまいもの内部まで一気に高温になります。β-アミラーゼが活発に作用できる時間が短くなるため、あまり甘くなりません。
まずは品種をチェック
温度を保ち長時間加熱できれば家庭でも甘い焼き芋が作れますが、スーパーやコンビニで買えると楽ですよね。ここからは、スーパーなどで購入するときに気をつけたい焼き芋の選び方を紹介します。
まずは、さつまいもの品種を確認しましょう。
焼き芋に適しているさつまいもは、甘みが強い品種です。さらにさつまいもは、食感によりほくほく系・しっとり系・ねっとり系の3種類に分けられます。食感については個人の好みなので、自分が食べたい口当たりのものを選びましょう。焼き芋におすすめの品種を食感ごとにまとめました。
ほくほく系:鳴門金時、紅あずま
しっとり系:シルクスイート、紅まさり
ねっとり系:安納芋、紅はるか
しっとり系とねっとり系は食感が似ていますが、シルクスイートに代表されるしっとり系はきめ細かくなめらかな舌触りを感じます。一方、ねっとり系はクリームのような粘りのある食感です。ほくほく系のさつまいもは、天ぷらや煮物などの料理にも向いています。
おいしい焼き芋の見分け方
次に、焼き芋の見た目をチェックしましょう。
形は、真ん中が太くて両端は細い紡錘形、いわゆるラグビーボールのような形のさつまいもが理想的です。さらに手に持ったときにずっしり重みを感じると、甘みがあることが多いようです。反対にほっそりした焼き芋は、食べると繊維質が多く食感があまりよくありません。
焼き芋の表面を見ると、ひげ根がはえているくぼみがありますね。くぼみが深いとひげ根が固く、繊維質な芋の可能性があります。おいしい焼き芋を選ぶなら、表面のくぼみが浅く、なめらかなものを選びましょう。
また焼き芋の皮の表面に、黒いものが付着していることがあります。蜜のように見えるため「甘い焼き芋なのでは?」と思うかもしれません。しかしこれはさつまいもの表面に傷が付き、食物繊維のヤラピンがにじみ出たものであり、その芋が甘いわけではありません。黒い部分に土が付着して固まっていることがあるため、取り除いて食べましょう。
おいしい焼き芋を作るには手間と時間がかかるので、スーパーやコンビニで手軽に買えるのはうれしいですね。紹介した選び方・見分け方を参考にして、おいしい焼き芋を堪能しましょう。
【参考文献】
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
カゴメ「さつまいもの栄養!甘さが増す理由と、蒸し&レンジの食感の違い」
AUTHOR
いしもとめぐみ
管理栄養士。国立大学文学部を卒業後、一般企業勤務を経て栄養士専門学校に入学し、栄養士資格を取得。病院給食、食品メーカーの品質管理、保育園栄養士を経験して2022年に独立。食が楽しくなるレシピを発信するほか、栄養・健康分野の記事執筆を中心に活動中。
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