桃尻ブームのその先にあるものとは｜ブームに合わせて身体を変えていくことの“不自然さ”について

身体のトレンドは変わります。1960年代は、ミニスカートの流行の影響で「スラッとした脚」が女性の理想的な身体の象徴でした。2000年代には、ローカットジーンズでヘソを出すことが流行り、腹筋がうっすら見える「ペッタンコなお腹」が注目されました。そして現在は空前の「桃尻ブーム」。丸いお尻を強調するジムタイツや、お尻の形がよく見えるハイライズのジーンズに人気が集まり、「桃尻専門」と謳う筋トレの専門家も出てきました。

しかし、こうして移り変わる身体のトレンドを「不自然では？」「誰のためにあるの？」という目線で見ている人はどれだけいるでしょうか？

流行は必ず変わる、身体は変わらない

今流行ってる「桃尻ブーム」にもいずれ終わりが来ます。 流行に乗って今一生懸命にお尻のトレーニングしてる人は、ブームが終わった後のことや、流行に合わせて身体を変えた後のことまで考えているでしょうか？

流行は数年で変わります。もう海外のファッション雑誌では次の流行ボディの話は出始めているし、Z世代を中心に2000年代のファッションが「Y2K」という名で再来しているので、ぺったんこお腹のブームがまたやってくる可能性もあるでしょう。この調子で、桃尻ブームはあと何年（何ヶ月）続くでしょうか？

流行は自然に発生するものではなく、どこかで誰かが1つの「理想の身体像」を定義して、数年ごとにその流行を動かしています。これはファッションでも同じで、必ず裏で「流行」という情報を動かしている人がいるのです。これは、私が学生の頃に広告会社でインターンをした時に中の人が言っていたことで、そこで初めて自分が「誰かが作った流行」に「思い通りに」振り回されていたことに気がつきました。

しかし、身体はファッションみたいに変えられません。私たちが生まれ持った遺伝子を流行に合わせて変えることは、本来おかしなことなのです。変わりゆく理想に合わせて身体を変えていくのは、私たち人間にとって不自然なこと。自分の生まれ持った身体を乱暴に扱う行為なのです。

流行に振り回されてないか？

正しく鍛えれば誰でも丸い尻は育ちます。でも、育ちにくい体質・育ちやすい体質というものが存在します。もともとお尻周りが大きい体質の私は「どうやってそんな丸いお尻手に入れたの！？私はこんなに一生懸命鍛えてるのに全然ペッタンコだよ！」と真面目な顔で質問されて戸惑った経験があります。週１の筋トレ以外、特別なことなど何もしていなかったからです。ただその尻で生まれてきた、それだけのことなのです。この桃尻ブームが終われば、こんなおかしな質問をされることもなくなるでしょう。

流行に合わせやすい体質の人がチヤホヤされて、ハマらない人はその流れに一生懸命ついていく。流行が変わったら別の人が脚光を浴びる。人間の身体をそんなブームで消費してていいのでしょうか？

身体の機能的な視点から見ても、座る時間が増えた現代人がお尻の筋肉を鍛えることにはメリットばかりです（必要以上に大きくしようとする場合を除いて）。だからこそ、お尻の筋トレはブームで終わるべきではなく、多くの人にとってお尻のトレーニングを始めるきっかけであるべきだと思っています。ブームじゃなくて、今後もずっと続く習慣になることが1番人々にとってタメになると思うのです。

後先考えずに流行の体型についていこうとすると心も身体も壊れます。壊れた先で、流行はあなたを置き去りにして移り変わっていくでしょう。 「桃尻ブーム」の向こう側で、流行に取り残されたあなたは、世間に置いていかれないように一生懸命別の身体を目指しているでしょうか？何回いたちごっこを繰り返したら自分の身体に満足できるようになるのでしょうか？

人間の身体は、数学みたいに正解が1つだけあるという訳ではありません。時の流れに左右されないで、自分の体質・骨格・ライフスタイルにピッタリ合った「自分の理想の身体」を見つけましょうね。