「なぜあんなことをしたのだろう」過去の自分の言動に後悔してばかりの人に心理師が伝えたいこと

「なぜあんなことをしたのだろう」過去の自分の言動に後悔してばかりの人に心理師が伝えたいこと
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石上友梨
石上友梨
2025-09-04

過去をいつまでも後悔してしまう事はありませんか?あの時、何故こんなことしちゃったんだろう・・・あんなこと言わなきゃ良かった・・・今回は、過去を後悔してしまう時の対処法について紹介します。

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過去にこだわるAさん

Aさんは友人関係で悩んでいました。学生時代から続いていた友人ですが、社会人になり環境や立場が変わったことで価値観が少しずつ変化してしまったようです。そんな中、久しぶりに会った際に配慮の足りない発言をしてしまい、友人を怒らせてしまいました。もちろんAさんは相手を傷つけるつもりはなかったのですが、うまく弁解できず、それ以来LINEが返ってきません。元々友人が多い方ではなかったので、長い付き合いの友人を失ったことで孤独を感じ、Aさんは「あの時どうして・・・」とその日の出来事を何度も頭の中で思い出し、後悔する日々を送っています。Aさんはどうすれば過去から抜け出せるのでしょうか。

かの有名なシェイクスピアの「マクベス」に、「元に戻らないことは、考えても無駄よ、やったことは、もう終わったこと」という台詞があります。また、1950年代に活躍したカナダの精神科医エリック・バーンは「過去と他人は変えられない」という名言を残しています。このように、私たちはずっと昔から過去について悩んでしまう性質があるようです。私たちは何故、過去にこだわって、いつまでも後悔してしまうのでしょうか。

現在に満足していないから過去にこだわる

私たちが「あの時、何故あんなことを言ってしまったのだろう」「何故あんなことをしたのだろう」と、過去の対人関係に執着してしまう時は、現在の対人関係に満足していないことがほとんどです。それは恋愛にしろ、友人関係にしろ、どのようなものにも当てはまります。もし現在の対人関係に満足していたら、過去にこだわる必要はありません。現在に満足できないからこそ、過去が気になってしまうのです。しかし、エリック・バーンが言うように、過去は変えることができません。過去にこだわり続けることで、現在をどう変えていくかという視点に切り替えられなくなってしまいます。

考えを止めようとしてもより気になるだけ

過去を考えるのをやめようと思っても、思考を止めるのは難しいことです。心理学の有名な実験があります。心理学者ダニエル・ウェグナーの実験では、Aグループに「シロクマのことを覚えておいてください」と伝え、Bグループは「考えても考えなくてもいい」、Cグループには「シロクマのことは絶対に考えないでください」と伝えました。その結果、シロクマのことをより頻繁に考えてしまったのは何とCグループだったのです。このように私たちは、考えないようにすればするほど、考えてしまう性質があります。そのため、「過去のことを考えない!」と意識するよりも、「考えちゃっても仕方がないや」と気楽に構えてみましょう。

現在の自分を満足させる

過去を振り返ることはダメなことではありません。しかし、過去を後悔することで、現在の自分は満足するのでしょうか。過去にあった事実は変えられなくても、現在の受け止め方や行動は変えることができます。もちろん、過去の失敗を「良かったこと」と無理やりポジティブに受け止める必要はありません。過去を振り返るのなら、「もし・・・していたら」「もし・・・していれば」というタラレバではなく、「それを次に活かすなら?」「同じことを繰り返さないために何ができる?」と、過去から現在・未来へと続く視点を持ちましょう。

現在の自分には、過去にこだわり後悔し続けることもできれば、それを活かしていくこと、別の行動を取ることもできます。その選択は、自由なもので、変えられるものです。現在を変えれば、過去にこだわらなくなります。過去を考えてしまう自分も許しながら、少しずつ現在の自分を満足させる方法を探していきましょう。

 

Aさんは、過去を後悔してしまう自分を許しました。「友人が少なければショックも大きいね」「後悔しても仕方がない」そして、現在の自分にできること、満足することを考えました。Aさんは、共通の友人に間に入ってもらうことも考えましたが、今回は「今の対人関係を大切にすること」「今の自分の価値観に合う新しい友人を探してみること」にしました。怒らせてしまった友人とは時間が経ち、環境が変化すれば再び交流が始まるかもしれません。今の自分には、同じ趣味で笑い合える友人が増えることの方が大切かもしれないと、気持ちを落ち着かせることができました。

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