"本当の自分"を愛し、癒すために|ベラ・ハディッドが模索するメンタルウェルネス

 "本当の自分"を愛し、癒すために|ベラ・ハディッドが模索するメンタルウェルネス
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横山正美
横山正美
2022-08-31

あの人から理解されたい、この人に良く思われたい。あらゆる承認欲求は、人を動かすモチベーションでもある。しかし、一度そのバランスが崩れると、精神や肉体に様々な不調をきたすことがある。そのバランスを模索したスーパーモデルのベラ・ハディッドが、自分自身と向き合い続けたこれまでの道のりを振り返った。

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「姉と違って私はクールでもなく、ルックスは劣っていると思っていましたし、外交的でもありませんでした。実際、そう周りから言われて育ってきたので、本当に自分はそういう存在なのだと思い込んでいたのです。だから常にルックスや食事に極度に気を使っていて、そのせいか不安や鬱状態が続いたり…そんな私が何故モデルという仕事を選んだのか、今でも毎日いつも問い続けています」

2022年春「ヴォーグ」US版にこう語ったのは、スーパーモデルのベラ・ハディッドだ。姉のジジと弟のアンウォーともにモデルとして世界中を魅了する彼女だが、一方で高校生の時から不安や疲労、集中力低下や摂食障害等々の様々な症状に悩まされてきたことを明かした。もっとも、この症状の根底には以前公表したライム病も大きく関わっていると語る。

「デビューから3年間は毎朝ヒステリー状態で目覚めたり、一人で泣いていることが多かった。そのまま仕事場に行って、泣きながら一人でランチをとって、仕事が終わるとホテルで泣いて、また翌朝起きる…そんな状態を繰り返していました。でも、そんな姿は誰にも見せられないでしょう?そうやって人前でくるくると表情を変えてきたので、私は“女優”としては良い方だと思っています(笑)」

"本当の自分"を理解してくれたら、この孤独は消えるのかもしれない

人生のほとんどをライム病との闘いに費やしてきたというベラは、一方で姉へのコンプレックスも相まって、14歳の時に鼻を"いじってしまった"と明かす。

「でも今になってとても後悔しています。先祖から受け継いできた鼻を残しておけばよかった。そうしたら、精神的にももっと違う成長ができたかもしれなかったのに…。私はインポスター症候群で、常に自分には価値がないと思い込んできたというのも理由の一つだと思います」

アメリカ「ハーバード・ビジネス・レビュー」誌によると、インポスター症候群とは、どんなに成功していても、“運がいいだけ”“人のサポートのおかげ”等々自分の能力や実績を肯定できず、成功した自分は詐欺師(=インポスター)であると思い込む精神状態こと。常に自分と成功の度合いが見合っていないと否定し続け、女性に多いと言われる一方、誰にでも起こりうる精神状態でもある。

「私はいつも『自分の存在を証明しなくては』と焦燥感にも似たものを感じていました。そして、人を喜ばせようと無理をしてしまうんです。人は私のルックスや話し方や、演技等々についてあれこれ言います。ですが、私はこれまで一度も仕事を休んだり、キャンセルしたり、遅刻したりしたことはありません。だから仕事ぶりに関しては、唯一誰も私のことを否定できないと思っています」

現在NYのダウンタウンのアパートと、家族の住むペンシルベニアの農場を行き来する生活を送り、ライフ・ワーク・バランスを実践することに重きを置いているというベラ。人も羨む成功の陰で、時にトークセラピーに参加するなど、つきまとう絶望感と戦いながらキャリアに向き合ってきた彼女にとって、ボーイフレンドとの穏やかな関係もまた、彼女の精神状態の改善にポジティブな作用をもたらしているという。

「私と実際に会うと、ほとんどの人は“あなたがこんなに素敵な人だとは思わなかった”と言います。そして、会う前は私のことを“セクシーすぎて意地悪で怖くて危険な人”だと思っていたと。本当の私の姿が理解されていないのです。きっと人がもっと本来の私を理解してくれたら、私の中の孤独は消えるのかもしれませんね。ファッション業界で作られたイメージは、人を作ることも、壊すこともできます。だから、プライベートでは常にフラットな精神状態を保つために努力を惜しみません。ファッションは、人を作ることも、壊すこともできるのですから」

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横山正美

横山正美

ビューティエディター/ライター/翻訳。「流行通信」の美容編集を経てフリーに。外資系化粧品会社の翻訳を手がける傍ら、「VOGUE JAPAN」等でビューティー記事や海外セレブリティの社会問題への取り組みに関するインタビュー記事等を執筆中。



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