90年代スーパーモデル、アンバー・ヴァレッタが推進するファッション界のサステナビリティ

 90年代スーパーモデル、アンバー・ヴァレッタが推進するファッション界のサステナビリティ
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横山正美
横山正美
2022-06-30

ナチュラルな美しさで90年代世界を魅了したスーパーモデルのアンバー・ヴァレッタ。現在48歳の彼女は、使い捨てを見直し、正しく作られたより良いものを消費することこそ真のファッションだと説く。

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「学生、教育者、そしてFITと連携し、このような機会を得たことに感激しています。資金調達とカリキュラムの両面からサステナビリティを重視するFITの姿勢こそ、クリエイティブ産業の未来にポジティブな変化をもたらすものだと考えています」

2021年9月、NY・マンハッタンのFIT(ファッション工科大学)初のサステナビリティ・アンバサダーに就任に際しこう語ったのは、90年代を代表するスーパーモデルの1人、アンバー・ヴァレッタだ。

1974年、イタリア&ポルトガル系の父とネイティブ・アメリカンのルーツを持つ母のもと、アリゾナ州に生まれオクラホマで育った彼女がモデルデビューを果たしたのは15歳の時。母の勧めで地元のモデルエージェンシーのスクールに通っていたところ、すぐさま米「ヴォーグ」を始めとするメディアに抜擢されスーパーモデルへと急成長した。また、同誌の「モダンミューズ」の1人にも選出された彼女は、その後「Drop Back Ten」(2000)で女優としてもデビュー。その多岐にわたる才能で世界を魅了した。

現在48歳の彼女は、デビュー以来ずっとファッション界におけるサステナビリティを模索し続けてきた環境活動家でもある。そして自身のモデルとしてのキャリアを活かし、2021年にFIT初のサステナビリティ・アンバサダーに就任。財団の理事も務める彼女は、同校が2019年に開催したサステナブル・ビジネス&デザイン会議で基調講演を行ったり、サステナブル・アワード・ガラではホストも務めるなど、役職就任以前から精力的に活動を続けてきた。そんな彼女は、活動家としての自身をこう表現する。

「私は自分自身が“サステナブル・ブランド”だと思っています。私は自然が大好きですが、それは私が売りたいものではありません。私が売りたいのは、正しい方法で作られたハイファッション。そういう点で、私自身がサステナブル・ブランドであり続けなければ意味がないのです」

環境活動家への目覚め

そんな彼女が人生でサステナビリティを意識し始めたのは、幼少期に遡る。

「環境活動家だった母の影響が大きいですね。母は幼い頃から、地域社会で活動することの大切さや、強い価値観を持って生きていくことを私に教えてくれました。よく覚えているのが私が子供の頃、ネイティブ・アメリカンの土地に湧いた原子力発電所建設計画を阻止しようと母と活動家グループが戦っていた姿です。活動家が身近にいると、社会に変化をもたらすのは“声”だという意識が自ずと芽生えるものです」

17歳でオクラホマを離れ、ヨーロッパでモデルとして活躍していた時のことを、彼女はこう振り返る。

「まさに今日、私たちが直面している深刻な問題について、当時は誰も本気で語っていませんでした。前アメリカ副大統領のアル・ゴアを中心とした科学者が尽力し、地球が危機に瀕していることを皆が意識するようになったのは90年代後半です。それはちょうど私がモデルとして多忙を極めていた時期でした」。

さらに、ファッション界で頂点を極める中、ショーや撮影で身に纏うラグジュアリーなハイファッション製造の裏側を知った彼女は、大きな違和感を覚えると同時に、活動家としての使命を感じた、と続ける。

「大規模なサプライチェーンで低賃金などの不当な扱いを受けるショップ店員の不条理。そして、ファッションを作るため大量の資源消費で地球に大きな犠牲を強いる製造工程…。ファッション界で活動すればするほど、その裏で何が行われているのか、この産業がどのような悪影響を及ぼすのかを知り、無視できなくなったのです」。

アンバー・ヴァレット
2020年2月、サステナブルスタイルアワードに出席した時のアンバー・ヴァレッタ。
photo by Getty Images

ファッション界を根本から変えるために

そして、直後に世界を席巻したファストファッションが登場し、“衣服は使い捨て”という潮流に大きな疑問を持ち始めた彼女は、ある決意をしたという。

「より安く、多くの服を売ろうという競争意識は、人と地球の双方にとって持続不可能です。私は、自然もファッションも大好きです。だから、私の大好きな二つを結びつけ、より良いファッション界を作りたいと思いました。10年前、私は自分の人生とキャリアと能力を熟考するようになり、ファッションとサステナビリティをどうにかして結びつけられないかと考えました。そして小さなチームを結成し、その実現のため調査、熟考、教育、議論にかなりの時間を費やしたのです」。

そんな彼女の切なる願いは、2013〜2016年までの5シーズンにわたり、サステナビリティ重視のファッション・プラットフォーム“Master & Muse”として結実。これまで50以上のサステナブルなハイファッションブランドが同プラットフォームを利用したことで、消費者にもサステナビリティへの理解を深めることに成功したという。

「正しく作られたより良いものを購入するという決断こそ、変化をもたらすということを知ってもらいたかった。それが実現出来て、本当に嬉しく思っています。私の使命は、さらに良い方向にファッション界を根本から前進させること。今回のFITアンバサダー就任も、そのためですから」。

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横山正美

横山正美

ビューティエディター/ライター/翻訳。「流行通信」の美容編集を経てフリーに。外資系化粧品会社の翻訳を手がける傍ら、「VOGUE JAPAN」等でビューティー記事や海外セレブリティの社会問題への取り組みに関するインタビュー記事等を執筆中。



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