「過食症になると自分自身を恥ずかしく思い…」ダイアナ元妃が生前語っていた摂食障害の苦悩

 「過食症になると自分自身を恥ずかしく思い…」ダイアナ元妃が生前語っていた摂食障害の苦悩
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長坂陽子
長坂陽子
2022-01-09

2021年に生誕60周年を迎えたダイアナ元妃。クリステン・スチュワートがダイアナ元妃を演じた映画『スペンサー』が英米でリリース、日本でも今年公開されることもあり元妃に改めて注目が集まっている。

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ダイアナ元妃といえばそれまでの英国王室の慣習にとらわれない生き方をした女性として知られる。たとえば乳母に任せず自分で王子たちを育てたのは元妃が最初。またエイズやHIVに対する偏見をなくそうと患者たちを見舞い、握手をしたりおしゃべりをしたりと患者たちと触れ合ったのもそれまでの王室のチャリティ活動とは異なっていた。

ダイアナ妃
1989年、セント・メアリー病院でエイズ患者たちと話すダイアナ妃。こうした活動は、これまでの王室のチャリティ活動とは異なっていた。photo by Getty Images

摂食障害の告白も元妃が慣習にとらわれなかった証。妃は王室に嫁ぐプレッシャーや孤独感、チャールズ皇太子とカミラ夫人の不倫関係を知った衝撃などから過食症を患っていた。妃はのちにそのことをインタビューで明かし、克服の過程についても赤裸々に語った。病気というネガティブな部分を進んで語ることはそれまでのロイヤルファミリーにはなかったこと。それを堂々と語ったことは世界を驚かせた。

元妃は王室の伝記作家アンドリュー・モートンとのインタビューで「私の過食症は婚約してから1週間後に始まり、克服するのに10年かかった」と告白。「皇太子は私のお腹周りに手を置いて『ここがちょっとぽっちゃりしてるね』と言った。それとカミラとのことが(過食症の)引き金になった」。元妃のウエディングドレスをデザインしたエリザベス・エマニュエルによるとドレスを作り始めたときの妃のウエストは27インチ(約68.5センチ)。結婚式直前にはそれが23インチ(約58.5センチ)にまで減っていたという。

ダイアナ元妃はテレビ局「BBC」のインタビューでも自分の摂食障害について冷静に分析していた。インタビュアーに「あなたが過食症だというのは本当?」と聞かれると「本当のこと。この病気は秘密にするべきだとされてきた。これは自分で自分に負わせる病。自尊心が低く、自分に価値がある、存在意義があると思えないことから患ってしまう。1日に4回も5回、時にはそれ以上の回数、食事をして満腹になる。そうすることで安心感が得られ誰かに抱きしめられているような気持ちになれる。でもそれは一時的なもの。お腹がいっぱいであることに嫌気がさしてすべて吐き出してしまう」。孤独感や淋しさを食べ物で埋めようとしていたことを生々しく語っている。

ロイヤルファミリーに摂食障害について打ち明けたかと聞かれた元妃の答えは「ノー」。「過食症になると自分自身を恥ずかしく思い、憎むようになる。人からは食べ物を無駄にしていると思われるので話すこともできない」「拒食症だと目に見えて痩せてしまう。過食症だと(嘔吐するので)見た目が変わることはない。だから病気であることは周りにわからない」と経験者だからこそわかる心境も。

元妃が過食症を告白したのは1995年頃。この頃から摂食障害の患者数が増え始めたそう。元妃の言葉がきっかけで治療に取り組みはじめた人も少なくないと見られている。心の病がタブー視されていた時代にそれを公表し、いち早く啓発活動に取り組みはじめた元妃。先を見通す力と勇気を持った女性だった証と言えそう。

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長坂陽子

長坂陽子

ライター&翻訳者。ハリウッド女優、シンガーからロイヤルファミリー、アメリカ政治界注目の女性政治家まで世界のセレブの動向を追う。女性をエンパワメントしてくれるセレブが特に好き。著書に「Be yourself あなたのままでいられる80の言葉」(メディアソフト)など。



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