「惚れた・腫れた」で終わらないのはなぜ?「かくれ繊細さんの恋愛」はなぜ底なし沼なのか?3つの要因
3・性との出会い方・付き合い方
物欲の話ともつながるのですが、かくれ繊細さんは興味を持つとどうしてもそれを手に入れたくなるように感じます。知りたがりで、試してみたい、見てみたいという気持ちがむくむくと湧き上がってくる。特に、若いころ(30代くらいまで)はそうで、自分が繊細だといわれてもピンとこないくらい、知りたい欲の方が強い時期です。ただし年齢とともに、その勢いはどんどん減衰していきます。
そもそも性に関することは昔から、「大人がなにか隠しているもの」という違和感があるものです。そして、かくれ繊細さんは、違和感の発見に鼻が利きます。ちょっとした違和感を感じると、そこに焦点を合わせます。「違和感発見レンズ」を持っているような体なんですね。そして、その違和感を隠されると、逆に興味を強くしていきます。「え?なに?その隠したもの」と逆に食い気味に、興味が高まっていってしまう。それによって、性の分野に早くから興味を持ったかくれ繊細さんは多いのではないでしょうか。
他の子ども達に比べると、好奇心が旺盛だったり、知りたい欲が強いということと相まって、HSP的な感受性の高さを持ち合わせていますから、性をうまくとらえられなかった可能性は高いと思います。そのショックを引きずって、大人になって異性と付き合えと言われても、どうしてよいかわからないという面も少なからずあるのかなと感じます。
今の日本の性教育の現状を考えれば、ただでさえ上手に性を理解するのは難しいのに、かくれ繊細さんだったら、性欲を感じる自分に罪悪感を感じたり、その結果極端に異性を遠ざけたり、性欲を感じないように自分を抑え込んだり、自己否定を強めたり、あるいは性体験に対する興味が強くなりすぎて抑えきれなくなったり、家族の隠し持っているアダルト系の本や写真を探し出したり、抑圧しすぎて中性的な感じをねらってふるまったり、と様々な方向に飛び火して発現します。
もともと性的なことは隠された分野のことなので、そもそもなにをしてもあまり人目につきません。それがむしろ、かくれ繊細さんにとっては好都合で、そこで暗躍してしまうこともあります。たとえば、表向きはなんの変哲もない社会人で無害な人なのに、性的な部分に関してはかなり危なっかし経験をお持ちのかくれ繊細さんは意外に、多いです。
そして、そういう自分に強烈な罪悪感を感じているのに、それも本当かどうかもわからなくなったりして、ややこしさが加速します。
もともと性に関して早熟だったり、知りたがりだっただけなのに、そのことに罪悪感やコンプレックスやさまざまな意味をまとわせてしまった結果、本来望んでいなかった方に向かっって、「もう取り返しがつかない」と思い込んで、年齢的なプレッシャーで焦って空回りしてしまう。それで「もういい」とぜんぶあきらめて、めちゃくちゃ極端な選択をして「これでいいんだ」と納得しようとしたりもします。
それでもいいんです。それでもいいんですが、本当はどのように人と関わりたいのかを、理解して紐解いていくと、本来作りたかった人間関係に望みが出てくると思います。
まとめ
繊細さんの恋愛は、上述した3つの要素が複雑に絡み合っています。「自分の気持ちがわからない」「自分には結婚や恋愛は遠いもののように思える」「恋愛感情自体に嫌悪感がある」「自分の性的な関心を相手に伝えられず、結果セックスレスに陥る」「いい子を演じてしまう」などなど…単純に「惚れた・腫れた」で済まない無限ループに陥るというのは、こういった理由だからです。
次回からは、ケース別にかくれ繊細さんの恋愛パターンを深掘りしていきましょう。きっとそこに、恋愛の苦しさ・人間関係の難しさを解決するヒントがあるはずです。
AUTHOR
時田ひさ子
HSS/HSP専門カウンセラー。繊細で凹みやすいが同時に好奇心旺盛で新しいものへの探求欲が旺盛なHSS型HSPへのカウンセリングをのべ5000時間実施。講座受講生からのメール、LINEのやりとりは月100時間以上。著書に『その生きづらさ、「かくれ繊細さん」かもしれません』(フォレスト出版、2020年)がある。
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