「セックスが痛い」は我慢するのが普通?臨床心理士と考える性交痛のこと

 「セックスが痛い」は我慢するのが普通?臨床心理士と考える性交痛のこと
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性の悩みは、こころと身体が影響しあう問題であるにも関わらず、悩んでいても「誰にも言えない」そんな人が多いようです。SNSを中心に性の悩みに関する情報を発信する臨床心理士の西田めぐみさんが、心と性にまつわる大切なお話を連載形式で綴ります。

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初めまして。臨床心理士の西田めぐみと申します。私は、教育機関で心理士としてカウンセリングを行いながら、SNSで性のお悩みについて発信をしています。そんな性のお悩みの中でも、代表的なものが性交痛。いわゆる、セックスの中で発生する痛みです。

 DMでも性交痛についてのお悩みの声をいただく一方、こんな意見もいただきます。

「性交痛って誰でもあるものですよね」

「痛いけど、いつも我慢するのが当たり前になってるんです」

たしかにそういう人は多いかもしれません。私も「痛いな」と思っても、昔はガマンしていました。でもよく考えてみてください。一般的に体に痛みがある場合、少し休んだり薬を飲んだり病院に行ったり…人はなんらかの対処をしますよね。それなのになぜ私たちは性交痛や生理痛など女性特有の痛みをガマンしてしまうのでしょうか。

性交痛の実態

性交痛とは、性交時に感じる痛みの総称のことです。米国産科婦人科学会の調査では、性交で痛みを感じることは珍しいことではなく、女性の約75パーセントは性交痛の経験があるとのこと。ですので、「性交痛はあるのが当たり前」というのはある意味間違いではないのかもしれません。

ただ《痛みへの対応》ということになると、「我慢している」が圧倒的に多いのが女性の現状ではないかと思います。SNSでも「性交痛がつらいけど、どうしたらいいのかわからなくて結局いつも我慢しています。」というDMをよく頂きます。「誰に相談すればいいかわからない」「病院にいくのは恥ずかしい」ということも、痛みを我慢してしまう一因になっているようです。

DMを読みながらいつも思うこと。それは、こんなにたくさん性に関する痛みに悩んでいる女性がいるのに、なぜ私たちはその対処法について教えてもらうことがなく、ヘルプの声をあげにくい環境にいるんだろう…ということです。

日本における性のタブー

時代は変化してきたとはいえ、日本ではまだまだ性について話すことのタブーさを感じます。場所や時間をわきまえず大っぴらに話す方がいいというわけではありません。ただ、性のことについて悩んだときや困ったときに「困っています。助けて下さい」と言える環境が当たり前だという共通認識があるとないとでは大きくちがいます。

特に未成年の子に対しては、「困ったときはここに相談できるよ」「性のことで悩むのは特別なことじゃないんだよ」というふうに、困った時の対処法をしっかり伝えておくことや、相談のハードルを下げておくことがとても大切。若い人が1人で苦しまず、自分自身も周りの人も守ることにつながります。

性交痛にはいろんな対処法がある

性交痛には様々な原因があります。大きく分けて4つ。

①女性の身体に関するもの

②男性が関係するもの

③こころに関するもの

④身体とこころに関するもの

それぞれの原因によって対処方は変わってきますが、そのためには自分の性交痛の原因を知る必要があります。

ではそれを知るためにどうすればいいのか。

まずは、《定期的に婦人科検診を受けること》。そして、《かかりつけの婦人科をつくること》。自分が困ったときに安心して相談できる場所をあらかじめ用意しておきましょう。

そして《ツールをもっと活用すること》。例えば、コンドーム。最近のコンドームは素材や形、ゼリーの種類など様々なものがあります。性交痛を軽減するためにゼリーをたっぷりにするなど、女性目線で作られたものも増えてきました。コンドームは素材によっても摩擦感はおどろくほど変わります。たくさんあるコンドームの中から、ぜひ自分にぴったりのものを見つけてほしいです。

コンドーム
コンドームは素材によっても摩擦感はおどろくほど変わります。たくさんあるコンドームの中から、ぜひ自分にぴったりのものを見つけて。photo by Adobe Stock

またコンドームと併用して使ってほしいのが潤滑ゼリーです。少し足してあげるだけで、摩擦感が軽減します。最近は潤滑ゼリーとはわからないくらいオシャレで持ち運びしやすいものも多いので、自分の身体を守るためにぜひ活用してほしいです。(膣内に使えるものと使えないものがあるので、注意してください)

ゼリー
コンドームと併用して使ってほしいのが潤滑ゼリーを使ってみて。ただし、膣内に使えるものと使えないものがあるので注意を。photo by Adobe Stock

そして何よりも大切なこと。それは《性行為の型にこだわらないこと》です。これは男女ともに知っておくべきことですが、子どもを作ることが目的でないセックスは、挿入がゴールではありません。むしろ挿入がなくたっていいんです。そこにこだわりすぎるとプレッシャーが大きくなってしまい、結果的に女性が潤いにくくなることも。お互いがリラックスして楽しめるプロセスを楽しんで、2人だけのセックスの形を追求してみてください。

 

少しでも性交痛について知ってもらって、性交痛をそのままにせずうまく付き合っていくことが大切なんだと感じてもらえるとうれしいです。今後も性について発信していきますので、ぜひチェックしてくださいね。
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AUTHOR

西田めぐみ

西田めぐみ

臨床心理士 / マインドフルネス認定講師。性のお悩みについて臨床心理士の視点から発信、カウンセリングを行う。オンライン心理カウンセリング「amariカウンセリングルーム」主宰。



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