劇団雌猫と考える30代からの人間関係|環境の変化や価値観のズレ…大人の友情で大事なことは

 劇団雌猫と考える30代からの人間関係|環境の変化や価値観のズレ…大人の友情で大事なことは
illustration by あないすみーやそこ

女性の30代は忙しい。仕事に邁進する女性、家庭を生きがいにする女性、何も見つけられず人知れず焦りまくる女性……。学生時代は横一線だった関係に、徐々に違いが出てくる年代だ。友情という人間関係にも変化が現れて当然と頭でわかっていても、心がついていかない。自分ではない"友達"に嫉妬してしまったり、比較して卑屈になったり、意地になってしまったり…。そんな女性の揺れ動きについて、劇団雌猫に話を聞いてみた。

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劇団雌猫は、平成元年生まれの4人の女性(もぐもぐ、ひらりさ、かん、ユッケ)で構成されるハイブリットなオタク集団。宝塚、K-POP、ジャニーズなど、それぞれがハマっている「オタク」趣味を通じて知り合い、2016年冬に同人誌「悪友」を頒布。これをきっかけに、商業誌を次々と出版したりイベントに出演するなど活動の幅を広げている。4人それぞれが本業を別に持ちながら、自分の「推し」の世界を思いっきり楽しんでいる。

学生時代からの友達でもなく、仕事で知り合った仲間でもない。大人になってから「好き」で繋がった人間関係。外から見ていると「とっても自由で、楽しそうで、自分の人生を生きている」ーーそんな劇団雌猫に話を聞いてみたくて、インタビューを申し込んでみた。今回は、そんな彼女たちの中からかんさん、ユッケさんに話を伺った。

出会いから5年経った劇団雌猫の"今"

ーー劇団雌猫のみなさんは、どんなきっかけで知り合ったのですか?

ユッケさん(以下、敬称略)「最初はそれぞれがネットで繋がっていたけど、みんな同じ歳だし、一度みんなでご飯食べてみようと。それで会ってみたらリアルで話すのも楽しくて。以前は、推しや仕事の近況報告をするような感じでよく会っていましたね。その後、同人誌を出版してからかな、少しずつ関係性が変わった気がする」

ーーどんな風に変わったのですか?

かんさん(以下、敬称略)「活動を始める前と比べると、話すべきことが増えて、毎日何かしら連絡は取っているんです。でもそこでいろいろ話しているから、リアルでは飲みに行かなくなったよね。コミュニケーションが多くなったから、会う必要がないのかも」

ーーなるほど。ちなみに人間関係と言えば、コロナをきっかけに友人たちと価値観の違いが浮き彫りになった、という声もあります。お二人の周りではそんなことはありましたか?

ユッケ友人関係では特にないですが、通っているジムのトレーナーがちょっとスピリチュアルな感じになっていて、びっくりしました。トレーニングをしていて特に困るようなことはないんですが、なるほど、人ってこういうタイミングで変わるんだなと思いました」

ーーちょっと動揺しますよね。もし、ご自分のお友達がそうなってしまったら?

ユッケ「そういう経験がないからなぁ…。でも何を信じるかはその人次第なので。あまりに強引に勧誘とかされたら、ちょっと距離を置くかもしれませんが、基本は普通に接すると思います」

長く続くのが「友達」ではないと思う

ーー劇団雌猫の皆さんは大人になってから出会ったお友達同士ですが、一般的に、30歳前後になると人間関係が煮詰まるという話があります。人によっては結婚したり子供を産んだり、仕事で出世したり、環境やキャリアに多様性が見られる頃だからか「女友達との関係性」に悩んでいる人も多いと聞きます。お二人に「女友達」について伺いたいのですが…

ユッケ「うーん、私の場合は、長く続いている友達ってあまりいないんですよね。学生時代から定期的に連絡先をリセットしていて、その中で続いている人が数人いる感じ。仲の良い子は別として、オタク友達とはそれぞれ好きなものの話をしているからいいけど、それ以外の友達ーー例えば学生時代からのちょっと仲良かった子、親友ではないほどの友達とは長々と飲みに行くことはしなくなりました。会うとしても、あえて1時間ぐらいで終わるランチとかお茶にして『思い出』話を楽しむようにしてる。『今』の話をしても、盛り上がらないってわかっているんですよね」

ーーかんさんはいかがですか?

かん「私は、友達と呼べる人は多いほうだと思います。でも特定の人と定期的に会って仲良くしているわけではないです。おばあちゃんと言われる世代のお友達とはお互いに大好きな宝塚の話をしたり、10人いれば10人と別の話をしますね」

ーーなるほど。学生時代の友達、などカテゴライズして付き合うというよりも、一人一人との友達関係にグラデーションがあるイメージでしょうか。関係が濃い人・薄い人とそれぞれに適した付き合い方をするというか…

ユッケ「会話も会うペースも、無理をしないようにしています。あんまり会いたくない人に無理して会いに行って、楽しくないなぁって雰囲気を出しちゃったら、相手にも申し訳ないですし…」

かん「私も、無理はしないですね。あとは、対面で『今度飲みに行きましょう』と社交辞令を言ってしまっても、家に帰ってから考えてやっぱり行きたくなかったら、行かないです。しゃーなし、で1回飲みに行かず、本当に会いたいのか考えるようにしています」

自分をわかっていれば、自分と合う人と付き合える

ーー「友達」との関係性について、かんさん、ユッケさんとも、既に自分なりの解決方法や処世術を身につけているように思えます。

かん「それはきっと『自分に関心がある』から、でしょうね。友達含め、周りがどうこうを考えすぎないようにしています」

ユッケ「私も、常に『自分が今何をしたいか』を考えて行動しているかも。1日24時間しかないのに、仕事して帰ってきてから推しの活動チェックしてパーソナルジム行って……やることがありすぎて、友達がとか、寂しいとか、感じる時間がないんです(笑)」

かん「劇団雌猫は4人組なので全員がそうかは分かりませんが、少なくとも私とユッケは意識が己に向いてますね。」

ーー意識が己に向いている!つまり「自分を知る」ってことだと思うのですが、簡単なようで難しいですし、それを人間関係に生かすとなると…具体的にどういうことですか?

かん「例えばですけど『遊園地のまわり方』がわかりやすいと思います。遊園地って、朝イチで入園してきっちり計画的に全部のアトラクションに乗りたい人と、特にこだわりのない人っていますよね。私は、すぐに具合が悪くなったりするので、スケジュール通りに完璧に動くのが苦手で。予定は決めずその日のノリで空いてるとこに入ったり、その結果、1つしか乗れなくても『乗れなかったねー』って笑えるタイプで、きっちり周りたい人と行くと迷惑をかけてしまう。行動パターンが合う人と付き合う方が楽だろうとは思います」

ユッケ「私も、例えば『今日ご飯に行く約束をしているけど、大雨だからリスケしよう』と遠慮せず言い合える子が、結果友達関係が続いている気がする」

かん「『無理しない』ってことですね。そのためにも、難しいことですが、自分に関心を持つことは大切だと思います。自分にとって何が”無理"なのか、"何が心地よい"のか、わかるので。それがわかれば、あとは自分に合う人と付き合っていけばいいだけ。無理をしない人間関係が一番健全というか、すごくシンプルだと思います。やりたいことがありすぎて時間がない私たちにとっては、『無理しないこと』は本当に大事なことなんです」

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長年の女友達との関係性が変わり、違和感を覚えたりモヤモヤしていた人はもとより、コロナ禍で友達との価値観のズレに相対した人もきっと多いはず。だが、そのこと自体に罪悪感を抱く必要はない。人が年齢を重ねて見た目も心も変化するように、人間関係だって変わりながら続いていくもの。自分がこれまで知っている「人間関係のカタチ」に当てはめなくてもいいし、そこからズレてしまってもそれはそれで構わない。大事なのは、自分が無理しないこと・心地よくあらんとすること。だからまずは、自分を見つめることを始めてみよう。手っ取り早いところで考えるなら、「遊園地、あなたはどんなふうにまわりたい?」かんさん、ユッケさんのように、自分の好みやストレスを知ることで、「無理をしない」人間関係を築けるようになるはずだ。

次回の劇団雌猫インタビューは「自分らしさの呪縛」について!お楽しみに。

プロフィール

劇団雌猫
平成元年生まれのオタク女4人組(もぐもぐ、ひらりさ、かん、ユッケ)。2016年12月にさまざまなジャンルのオタクがお財布事情を告白する同人誌『悪友vol.1 浪費』を刊行し、ネットを中心に話題に。2017年8月には『浪費図鑑』(小学館)として書籍化。現在はイベントや連載などに活動を広げながら、それぞれの趣味に熱く浪費している。最新著書は『海外オタ女子事情』(KADOKAWA)。

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