「血管の老化」は何歳から始まる?医師が教える、血管の炎症や細胞の変化から考える老化の仕組み
「血管年齢」という言葉、健康診断やテレビなどで見聞きしたことはありませんか?実年齢はまだ40代なのに、血管年齢は60代。反対に、実年齢より若い結果が出る人もいます。こうした話を聞くと、「血管って、いったい何歳から老化するんだろう?」と気になりますよね。実は、血管の老化は、ある年齢を境に突然始まるわけではありません。年齢を重ねるにつれて少しずつ変化していきますし、普段の生活習慣によっても、その進み方は変わってきます。今回は、血管の老化が始まる時期や、その仕組みについて、できるだけわかりやすくお話しします。
血管の老化は何歳から始まる?
最近の研究では、血管の老化には、血管の壁が硬くなることだけでなく、体の中で起きる慢性的な炎症や、血管をつくる細胞の変化も関係していることがわかってきました。
結論からいうと、血管の老化が何歳から始まるのか、はっきりとした境目があるわけではありません。
血管は、年齢を重ねるにつれて少しずつ変化していきます。若いころはしなやかだった血管も、長い年月のあいだに弾力性が低下し、徐々に硬くなっていきます。
ただし、同じ年齢でも血管の状態には個人差があります。
例えば、40代でも血圧が高い状態を長く放置していたり、喫煙を続けていたりすると、血管に負担がかかりやすくなります。一方で、血圧や血糖値、コレステロールを適切に管理し、体を動かす習慣がある人では、血管の健康を保ちやすくなります。
もちろん、生活習慣に気をつけていれば血管が老化しない、というわけではありません。加齢そのものの影響は避けられませんが、その進み方には違いが出てくるのです。
つまり、大切なのは「何歳になったら血管が老化するのか」だけではなく、「今の血管にどれくらい負担がかかっているのか」ということなんですね。
血管が硬くなると、体に何が起きる?
血管の老化でよく知られているのが、血管のしなやかさが失われ、硬くなることです。
血管は、ただ血液を通すための管ではありません。心臓から送り出された血液を全身に届けるため、血圧の変化に合わせて広がったり縮んだりしています。
ところが、年齢を重ねると、血管の壁に含まれるコラーゲンやエラスチンなどの構造が変化し、血管が硬くなりやすくなります。
すると、心臓が血液を送り出すときに、以前よりも強い力が必要になることがあります。特に、心臓から血液を送り出す動脈が硬くなると、収縮期血圧、つまり上の血圧が高くなりやすくなります。
さらに、血管の硬さが進むと、心臓や腎臓、脳などの臓器にも負担がかかる可能性があります。
ただし、血管が硬くなることと、血管の内側にコレステロールなどがたまる「動脈硬化」は、完全に同じものではありません。両者は関係していますが、少し違う変化です。
血管の老化を考えるときは、血管が硬くなることだけでなく、血管の内側で何が起きているのかにも目を向ける必要があります。
血管の内側では「炎症」が起きている?
ここで、少し意外な話をします。
血管の老化には、体の中で続く慢性的な炎症も関係しています。
炎症というと、傷口が赤く腫れたり、風邪をひいて熱が出たりする状態を思い浮かべるかもしれませんね。
でも、体の中では、はっきりとした症状が出ないまま、ごく弱い炎症が長く続くことがあります。
血管の内側には「血管内皮細胞」という細胞が並んでいます。この細胞は、血液がスムーズに流れるように調整したり、血管を広げたり、血液が固まりすぎないように働いたりしています。
ところが、加齢や喫煙、高血圧、高血糖などの影響を受けると、この血管内皮細胞の働きが低下することがあります。
すると、血管を広げる働きが弱まったり、炎症に関係する反応が起きやすくなったりします。血管の内側にコレステロールなどがたまりやすくなり、動脈硬化につながることもあるのです。
ここで覚えておきたいのは、血管の炎症は、必ずしも痛みや発熱などのわかりやすい症状を伴うわけではない、ということです。
自覚症状がないまま変化が進むこともあるため、普段から血圧や血糖値などを確認しておくことが大切です。
細胞そのものも年を取る?「細胞老化」の話
血管の老化を考えるうえで、最近注目されているのが「細胞老化」という仕組みです。
私たちの体をつくる細胞は、傷ついたり、さまざまなストレスを受けたりすると、細胞分裂をやめることがあります。こうした状態の一部を、細胞老化と呼びます。
細胞老化そのものが、すべて悪いわけではありません。異常な細胞が増え続けるのを防ぐなど、体を守る役割もあります。
ただし、老化した細胞が体内に蓄積すると、話が変わってきます。
こうした細胞の中には、炎症に関係する物質などを周囲に放出するものがあります。その影響で、周囲の細胞の働きが乱れたり、慢性的な炎症が続きやすくなったりすることが研究で示されています。
血管でも、細胞老化が血管内皮細胞や血管の壁を構成する細胞の働きに影響し、血管の機能低下に関わると考えられています。
つまり、血管の老化は、単純に血管が古くなって硬くなるだけではありません。血管をつくる細胞の働きが変わり、炎症などの反応が重なることで、少しずつ進んでいくのです。
こうした細胞老化の仕組みを標的にして、血管や臓器の老化を抑えようとする研究も進んでいます。ただし、老化した細胞を取り除くような治療は、まだ研究段階のものも多く、一般の人がサプリメントなどで簡単に実現できるわけではありません。
「細胞の老化を防ぐ」とうたう商品には、科学的な根拠が十分でないものもあるため、少し慎重に考えたいところです。
血管の老化を早める生活習慣とは?
血管の老化には年齢が関係しますが、日々の生活も大きく影響します。
特に気をつけたいのは、次のような習慣です。
- 血圧が高い状態を放置する
- 喫煙を続ける
- 血糖値やコレステロール値が高いままにする
- 運動不足が続く
- 塩分や脂肪分に偏った食事が多い
- 睡眠不足や慢性的なストレスが続く
もちろん、ひとつ当てはまったからといって、すぐに血管が悪くなるわけではありません。大切なのは、こうした負担が長い期間積み重ならないようにすることです。
例えば、血圧が高い人は、まず自宅で血圧を測る習慣をつけてみましょう。
健康診断で血糖値や脂質の異常を指摘された場合は、そのままにせず、必要に応じて医療機関で相談してください。
運動もおすすめです。いきなり激しい運動を始める必要はありません。まずは少し速めに歩く時間をつくったり、エレベーターではなく階段を使ったり、日常生活の中で体を動かす機会を増やすだけでも、よい一歩になります。
食事では、野菜や魚、大豆製品などを取り入れ、塩分をとりすぎないように意識してみてください。
どれも特別なことではありませんが、続けることに意味があります。
血管年齢が若ければ安心? それだけでは判断できない
血管年齢を測定する検査や、血管の硬さを調べる検査は、血管の状態を知るための参考になります。
ただし、血管年齢が若いという結果が出たからといって、動脈硬化がまったくないとは限りません。反対に、血管年齢が高めだったとしても、その数値だけで将来の病気が決まるわけではありません。
検査の種類によって評価している内容も異なります。
血管の健康を確認するうえでは、血管年齢の数字だけに注目するよりも、血圧、血糖値、LDLコレステロール、喫煙歴などを総合的に見ることが大切です。
そして、必要な場合は、医師と相談しながら生活習慣の改善や治療に取り組んでいきましょう。
血管は、毎日の積み重ねで守っていける
血管の老化は、ある日突然始まるものではありません。年齢とともに少しずつ進み、そこに炎症や細胞の変化、生活習慣などが影響してきます。
だからこそ、何歳になったかを気にするだけでなく、今からできることを続けていくのが大切です。
- 血圧を確認する。
- たばこを吸っている人は禁煙を考える。
- 少しでも体を動かす。
- 健康診断で異常を指摘されたら放置しない。
どれも地味に感じるかもしれませんが、こうした積み重ねが、将来の心筋梗塞や脳卒中などのリスクを減らすことにつながります。
血管は、普段は目に見えませんし、多少状態が悪くなっていても、すぐに症状が出るとは限りません。
だからこそ、元気なうちから少し気にかけてあげたいですね。
血管の老化を完全に止めることはできなくても、その進み方を緩やかにするために、今日からできることはあります。無理なく続けられることから、ひとつずつ始めてみましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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