「散らかすのは5人、片付けるのは私1人」6人家族の母を苦しめた「魔窟部屋」を変えた発想の転換
夫と4人の子ども、犬と猫と暮らすおぐらあんこさんは、6人家族のなかでただひとりの片付け担当でした。散らかすのは5人なのに、片付けるのはいつも自分ひとり——そんな日々からの脱出を描いたコミックエッセイが『私だけが頑張る片付けはもうごめんだ 家族6人魔窟部屋からの脱出コミックエッセイ』(はちみつコミックエッセイ)です。家族を片付けに巻き込む工夫や、母の遺品整理を通して変わった価値観について、じっくりお話を伺いました。
片付けるのは6人家族で1人だけ
——片付けをつらいと感じていたそうですが、どんなことが負担になっていたのでしょうか。
一番は散らかすのが5人に対して、片付けるのは自分1人しかいないという状況でした。毎日散らかった部屋を見て、「これ全部私が片付けるのか」と思うと気が重くなる。しかも自分は散らかしていないんです。それでも誰もやってくれないので、自分が片付けるしかなかったのがつらかったですね。
——本作では、片付ける前のご自宅を「魔窟」と表現されています。
子どもたちが家に帰ってきて「ちょっと待っててね」と言って、着替えを持って戻ってきたら、物が床一面に広がっていて、何かを避けないと歩けない状態になることもありました。それでも子どもたちは上手く遊ぶスペースを見つけたり、踏んでも痛くないものは気にならないみたいで、気にせず物の上を歩いていました。ただ、ブロックのおもちゃだけは本当に勘弁してほしいと思っていました。私も何度も踏んで、痛い思いをしましたから。
洋服もよく床や廊下に落ちていて。うちはリビングが2階、洗濯機が1階にあるのですが、みんな2階で着替えて脱いだものを「あとでまとめて持っていこう」と置きっぱなしにしてしまうんです。でも家族が多いので、みんなで一時的に置くと散らかりますし、忘れてしまうこともある。おもちゃを片付けていたら靴下が出てくることもあって、廊下にまとめてくれるだけマシだと思っていた時期もあります。今は脱いだ服を入れるカゴを用意して、だいぶ落ち着きました。
——タイトルのように「私だけが頑張る片付けはもうごめんだ」と感じた決定的な出来事はありますか?
特定の事件があったというよりは、日々の積み重ねです。疲れが溜まっていると何のやる気も起きず、散らかった部屋を見て脱力感に襲われる。でも片付けなければ、困るのは私なんです。物が見つからないと、探す時間がかかるじゃないですか。子ども4人の保育園や学校、習い事、放課後の学童保育の送迎と、日々やることが多いので、忙しくて探し物をする余裕はありません。ご飯を作ってるときに「あれがない」と中断しなきゃいけなくなると、さらに時間がかかるんです。とにかく探す時間を減らしたかったですね。
家族が多いと物の取り合いも増える
——家族構成は、夫婦とお子さんが4人、犬と猫。人数が多ければ物も増えますが、それ以外に片付けで大変だったことはありますか。
子どものことで言えば、「これは自分のだ」という主張が始まることですね。3歳くらいから、下の子が「これは僕の」と言い始めます。そのころはまだ上の子が下の子を言いくるめられるのですが、それができなくなってから、「いや、これは俺のだから」というやり合いが始まって、しょっちゅう喧嘩になりました。でも片付いていないから本人たちもどれが自分のものなのか、実はわかっていないんです。
喧嘩にならないように同じものを2つ買ってあげるのですが、名前が書いていないので、結局揉めてしまう。それで面倒になって、全部に名前を書いたり、目印になるシールを貼ったりするようになりました。
——お子さんの年齢差がある中で、どんな工夫をされていますか。
高さですね。身長が違うので、片付けやすい高さも違うんです。今は基本的に一番小さい子に合わせて設定しているので、お兄ちゃんたちはやりづらそうだな、と思うことも最近は出てきましたが。
あとはラベリングです。自分のものはわかるようになってきていても、文字が読めないので、文字でラベリングしてもわからないんですよね。そこで有効だったのが色分けでした。「赤いシールが貼ってあるのはお兄ちゃんの」といったふうに色で見分けがつくようにしていました。
——片付けられる仕組みを整えた中でも、難しさを感じることはありますか?
片付けを習慣にすることは難しいですね。習慣にするには、毎日言い続けなければならないですし、できたら褒めて、できなくても怒らずに伝えて、何度も言う必要がある。自分の忍耐力を試されているみたいです。それでも小学5年生と3年生の上の2人は割とできるようになってきましたが、ここまでできるようになるまでが大変でした。
意外にスムーズだったのが、下の子は、お兄ちゃんたちがやっているのを見ているので、片付けができるようになるのが早かったことです。寝る前に「おもちゃを全部片付けて」と言うと、4人で片付けられるようになってきました。
——本作では、夫さんやお子さんが片付けられない理由を探って、理由にあった解決策を取り入れています。合う片付け方法が見つかるまで苛立ちを感じる瞬間はありませんでしたか。
ありました。お菓子やアイスは勝手に探して食べるのに、消しゴムは見つけられない。夫も子どもも見つからなければ私に聞けばいいと思っているところがどこかあって、片付けが自分ごとじゃなかったんです。なんとなく「片付けはお母さんがやってくれるもの」だと思っている雰囲気が出てきたときは、すごくイライラしました。
でも夫や子どもたちが自分で片付けられる状態にしておかないと、一生私が片付ける生活が続くと思って。それが嫌だったので、片付けの仕組み自体は私が考えるようにしました。それに子どもたちが片付けられないまま大人になると、将来的に困るだろうなと思って。ある程度は片付けられるように教えなきゃという使命感もありました。
母の遺品整理で変わった価値観
——おぐらさんは昔から片付けが得意だったのでしょうか?
捨てるのが苦手で、捨てられないのに物は増えるので、部屋中に物が溢れている状態でした。なんとか頑張って詰めようとしても入らないし、どこかに入れたけれど、どこに入れたか思い出せなくて探している。そんな子どもでしたね。
考え方が変わったのが母親の遺品整理でした。母は溜め込むタイプで、私が小学生の頃にハマっていたパッチワークのために取ってあった布が、いくつも出てきて。「こんなにスペースを取っていたけれど、本当に必要だったのかな」と考えました。ほかにも何年も使っていなかったものが色々あって処分したんです。価値観が大きく変わるきっかけになりました。
東日本大震災があった時期とも重なって、防災も気になり始めた頃でもあって。一番上の子が生まれた頃でもあって「こんなに荷物がある中で地震が起きたら子どもを守れない。物を減らさなきゃ」とも思っていましたね。
——ご家族の「片付けが苦手」という気持ちにも、共感できる部分があったのでしょうか。
かなりありました。特に捨てられないという気持ちはよくわかるので。子どもはブロックで作ったものを崩せないんですよ。その気持ちは共感できるのですが、「では、それをどこに置くんだい?」という話にもなる。
ちょうど長男が捨てられない時期でもあって、小学生向けの漫画雑誌を小学1年生のときから買い始めて、5年分ほど溜まっています。スペースに限りもあるから、どうにかしてほしい気持ちはあるんですけど、捨てられない気持ちもわかるから強く出られない。個人のものを勝手に捨てるわけにもいかないので葛藤しています。物との折り合いのつけ方を子どもにどう気づいてもらうか、それは今の課題ですね。
※後編に続きます。
【プロフィール】
おぐらあんこ
関東出身、九州在住。昭和の末裔、4児の母。
育児系コミックエッセイなどを描いてます。
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