なぜ地方から女性がいなくなるのか。130人の声から見えた「女性はサポート役」という前提の呪縛

なぜ地方から女性がいなくなるのか。130人の声から見えた「女性はサポート役」という前提の呪縛
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「そろそろ結婚しないの?」「子どもは?」地方で暮らす女性たちが日常的に投げかけられる言葉の裏には、個人の自己決定権を阻む構造があります。地方女子プロジェクト代表の山本蓮さんは、これまで130人の地方出身・在住の女性たちに耳を傾けてきました。見えてきたのは、職場だけでなく家庭や地域にも根を張る「女性は誰かのサポート役」という前提です。インタビュー後編では、地方から女性がいなくなる本当の理由、声を上げることの難しさ、そしてこれからの展望についてお話を伺いました。

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結婚・出産が前提とされる息苦しさ

——地方女子プロジェクトでは、これまでにどれくらいの方にお話を聞いてきたのですか。

インタビュー自体は130人にさせていただいています。地方出身・在住で、主に20代・30代の方に話を聞いてSNSで発信しています。最近はお話から見えてきた傾向を、地方の自治体や企業向けの講演でも共有するようになりました。

——インタビューを続けて、見えてきた課題はどんなことでしょうか。

活動を始めた当初、私は「職場の問題」だと捉えていました。ただ、話を伺っていくうちに職場だけでなく家庭や地域のコミュニティでも「女性は将来結婚して家庭に入るのが幸せ」という前提で回っていることが多すぎると気づいたんです。そこに窮屈さや選択肢の少なさを感じている方が本当に多い。

たとえば、お盆やお正月に親戚が集まる場面。いまだに料理の準備は女性が担っていて、同世代の男兄弟が手伝ってくれるかというと、そうでもない。「手伝うよ」と若い世代の男性に変化の兆しはあっても、祖母世代が「女性の仕事だから」と制止してしまうこともあります。同世代の中でも、地元の友人が結婚して子どもを持つのが早いので、集まれる時間や共有できる話題が変わってしまう。そこに孤立感を覚えている方も多いです。

なかでもよく耳にするのは、日常のコミュニケーションで「そろそろ結婚しないの?」「子どもは?」と繰り返し聞かれるという話です。印象的だったのは、不妊治療を続けている中でその質問がつらくて「その時期は、周りの人がみんな敵だと思って過ごしていた」と語ってくださった方。地元に貢献したくて地元で就職した女性が、30歳を過ぎてからどの取引先に行っても「結婚は?子どもは?」と言われ続けていることを泣きながら打ち明けてくださる場面もありました。私自身も前の仕事を退職するときに、取引先の年配の男性から「寿退社?」と聞かれたことがあります。相手に悪気があったとは思わないのですが、驚きと寂しさを感じました。

こういう言葉は「古いからやめよう」で片付けられるものではないと思っています。いつ結婚するのか、子どもを持つか持たないか、その選択は本来一人ひとりが自分で決められることのはず。SRHRという基本的人権です。個人の自己決定権を阻害している問題として捉えて、変えていきたいと発信しています。

地方に女性が残らない本当の理由

——地方から女性がいなくなる背景は、「都会に憧れているだけ」「地元が嫌い」と単純化されて語られがちです。実際にはどう感じていますか。

もちろん都会への憧れを持っている人、地元で嫌な思いをして出ていく人もいますが、実際にはもっと複雑だと思っています。私自身、活動を始めた当初は「地元の価値観に馴染める人が残って、そうでない人が出ていくのだろう」と考えていました。ただインタビューを重ねるうちに、そんな単純な話ではないと気づいたんです。今は首都圏で暮らしていても、地元が嫌いなわけではない人、いずれは地元のためになりたいと思っている人が意外と多かったんです。ただ、その願いを地元で叶えるのが難しい現状がある。

根っこにあるのは、「女性が1人で生きていくこと」が地元では想定されていないという構造だと思います。自立して生活できるだけの給料やキャリアを築ける環境がなくて、それが当たり前になっているから、家庭でも地域でも「女性はサポート役」であることが期待される。ここが解消されない限り、状況は変わりにくいと思います。

私自身、ここ2年は数カ月都内で働く生活を送ってきたのですが、やはり都会は便利で自由だとは思いました。都内に住んでいる友人が多いので気軽に会えるし、地元では使えないような配送やシェアリングのサービスもある。お金をかければ最先端の生活が手に入るんだと、驚くこともありました。女性が一人で飲んでいても変な目で見られないことの解放感もあります。

一方で、ちょっと休憩するにもお金がかかるし、無料で使える公園も少ない。便利なサービスの裏側で働いている人たちの姿も意識するようになりました。同時に、地元の良さにあらためて気づかされた経験もあります。免許を取ってから見つけた自然やカフェ、都内のガヤガヤしたお店ではなかなかできない友人とゆっくり話せる時間。都会と地方と、どちらにも良さはあると思っています。

——「地方には仕事がない」とも語られますが、いかがでしょうか。

インタビューを受けてくださった方々に「地元にはどんな仕事がありますか」と聞くと、「公務員、介護、看護、保育士」といった回答に集中します。いわゆるブルーカラーの職種については、「男性が多いから自分が働くイメージが湧かない」と答える方も多かったです。

地元の高校で授業をしたとき、女子たちが「私たちは看護師か保育士になるけど、男の子は大学や地元企業に行くのがテンプレだよね」とドライな口調で話してくれたんです。自分で選んだ結果ならいいのですが、「テンプレ」と思わされてしまう世界は、もっと自由になっていいはず。

女性が担うことの多いケアワーカーは低賃金なことが多いですが、地域に欠かせない仕事ですし、待遇はもっと上がってほしいです。もとをたどれば「家庭で女性がやってきた役割だから低く見積もられている」部分もあると思っています。

企業誘致もよく議論されますが、私はそれ以上に、今ある地元の企業がどう改善していけるかも大事なポイントだと考えているんです。女性を「結婚して子どもを産む存在」という前提にしないとか、職場や地域の空気を変えることは、それぞれの企業でもやっていけるんじゃないかと思っています。

活動の様子(地方女子プロジェクトよりご提供)
活動の様子(地方女子プロジェクトよりご提供)

声を上げる難しさと、続けていく理由

——地方の女性が声をあげることの難しさを感じることはありますか?

インタビューを受けてくださる方で「顔や名前が知られたら、地元や職場で何を思われるかわからない、だから怖い」とおっしゃる方が本当に多いんです。気持ちはわかる一方で、こんなにも恐怖心が付きまとう窮屈さは、変えていけたらと思います。

私自身は、たまたま声をかけていただいたテレビ取材で顔と名前を出して活動を始めました。地域にも「こういうスタンスで活動しています」と伝わっているので、逆に動きやすい面もあります。ただ、伝えたい内容がちゃんと届いているかというと、そうでもなくて。近所では「テレビに出ていてすごい」「新聞に載っていた」ということの方が印象に残っているようです。

お祭りのときに地域の年配の女性から「テレビで綺麗に映ってたじゃん。これで嫁のもらい手に困らないね」と声をかけられたことがありました。褒めるつもりで言ってくださっていて、悪気は全くない。ただ私が伝えたかったのは、まさにそういう言葉をやめていきませんかという話でもあったので「届いていなかったんだな」とがっくり来た瞬間でもありました。

——地元の自治体で、男女共同参画の委員も務めていらっしゃるとのことですが。

地方女子プロジェクトを始めるのと同時期に、自分で公募に申し込みました。実際に参加してみると、専門性の高い人ばかりが集まる場ではなくて、市役所の方に頼まれて来ているという方も少なくないんです。それでも地元でジェンダー課題に興味のある方と繋がることができて、一緒に活動をしています。

同じ関心を持った人だけで集まって話していても社会は変わっていかないと感じることがありました。だからこそ、興味関心の違う人が集まる場に働きかける意味がある。心理的に負担を感じることもありますが、地元で活動していく上でとても大事な時間になっています。

——今後の展望を聞かせてください。

活動を始めた当初は、「怒り」に近いエネルギーが原動力になっている部分もありました。今はもう少し穏やかで、ポジティブなエネルギーで動けています。130人にお話を聞かせていただく中で、「私は一人じゃない」と実感できたのが大きな変化です。

これまで蓄積してきたインタビューのデータを分析して、自治体や企業の運営に活かせるレポートとして公開したいと考えています。インタビューに答えてくださる方も、3年後には1万人まで増やしたい。「声を上げても変わらない」と感じてしまう社会だからこそ、逆に「言ってみたら変わった」という成功体験を作りたいんです。そんな変化に一緒に立ち会ってくれる方々にこれから出会えたらと思っています。

山本蓮さん(ご本人よりご提供)
山本蓮さん(ご本人よりご提供)

【プロフィール】
山本蓮(やまもと・れん)

1999年、山梨県生まれ。地方女子プロジェクト代表。
韮崎市男女共同参画推進委員、内閣官房『地域・職場働き方改革等推進会議』、そして内閣府『男女共同参画推進連携会議』の有識者。Forbes WOMEN AWARD 2025受賞。

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