【眼科医が指摘】「自由診療」での超高額な多焦点眼内レンズと手術後のリスク

【眼科医が指摘】「自由診療」での超高額な多焦点眼内レンズと手術後のリスク
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順天堂大学客員教授の眼科医が、1万3000件以上の白内障手術の経験から解説する、白内障手術で後悔しないための「眼内レンズの正しい選び方」。村上 茂樹(むらかみ・しげき)さんの著書『白内障手術で後悔しないために知っておきたい本当のこと』(アスコム)より、内容を一部抜粋して紹介します。

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「自由診療」で使用される多焦点眼内レンズの重大なリスク

すべての費用が自己負担となる「自由診療」で使用されるレンズは、厚労省の認可を受けていない薬事未承認の多焦点眼内レンズです。もちろん健康保険も適用されず、厚労省が承認する「選定療養」の認定もないため、眼内レンズの費用だけではなく、術前の検査から手術及び薬剤費などまで全額を自分で支払わなければなりません。そのため、手術にかかる費用は非常に高額となり、片眼で総額50~100万円以上、両眼では200万円以上にもなるケースが多くなっています。このように高額な自由診療での多焦点眼内レンズの手術を行なう眼科施設の中には、インターネット広告やSNSなどで盛んに喧伝(けんでん)しては来院を促し、非常に高額な多焦点眼内レンズを巧妙に勧めたり、眼内レンズの長所しか言わず「あなたにぴったりのドイツ製やイタリア製の舶来レンズがありますよ」などと巧みに誘導して売り付けるケースも報告されています。このため、二本松眼科病院副院長の平松類博士も、ご自身の著書『その白内障手術、待った!』(時事通信社)の中で、高額な自費負担のレンズを喧伝し、言葉巧みにしつこく勧めてくるような医師や眼科はやめた方が賢明であると、はっきりと指摘されています。

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「自由診療」で使用されている多焦点眼内レンズでの手術のリスク

自由診療での眼内レンズには、非常に高額な金額の問題以外にもうひとつ注意しなければならない重大なリスクがあります。それは、これらの多焦点眼内レンズは厚労省の薬事未承認なので、手術後の合併症や不快な副症状、副作用などによる患者さんへの不利益が生じた場合にも、厚労省では関知されずに、「自己責任」などとして手術を受けた医療施設のみとの交渉となる点です。特に、自由診療で使用される厚労省の薬事未承認の多焦点眼内レンズでは、多くの材質が非常にやわらかい「親水性アクリル素材」であるため、「アクリバトリノバPro」と同様、手術経年後の眼内レンズへのカルシウム沈着などでのレンズの混濁化(白濁化)によるボヤケ(霧視)などのコントラスト視力(見え方の鮮明度)低下のリスクをはらんでいます。また、自由診療で使用される多焦点眼内レンズの大半を占める「回折型多焦点眼内レンズ」の手術後の大きな問題点は、手術経年後に水晶体嚢(のう)の収縮化に伴って眼内でのレンズの位置が変動してしまうことが挙げられています。これにより「屈折ズレ」を起こして、遠方から近方までの全距離での視力低下を生じることが分かっています。眼科の学会でもその対策が議論されていますが、根本的な解決法は未だ得られていません。

自由診療での多焦点眼内レンズの手術に係る大きな問題点は、この先にもあるのです。手術後に多焦点眼内レンズ特有のさまざまな不快光視現象やコントラスト視力(見え方の鮮明度)の低下などの副症状に耐えられなくなり、眼内レンズを摘出し、通常の健康保険内の単焦点眼内レンズに入れ替える手術を行なう方も数多くいらっしゃいます。実際、このようなレンズの入れ替え手術を行なうケースが、米国では10%以上、日本でも少なくとも5%以上にのぼることが明らかにされています。しかしこの場合、特殊な例外を除き、健康保険を使用しての眼内レンズの入れ替え手術を行なうことは、健康保険法の違反となり禁じられています。すなわち、多焦点眼内レンズの摘出の費用も新たな眼内レンズの再挿入手術の費用もすべて非常に高額な全額自費負担となります。

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これは、日本眼科学会のガイドライン(運用指針)の規約でも、はっきりと示されています。当然ながら、「自由診療」で支払った高額な多焦点眼内レンズの費用や手術料、その他諸費用も一切戻ってきません。日本眼科学会の『多焦点眼内レンズのガイドライン(運用指針)』で決められた規約によれば、レンズの入れ替え手術は非常に高額な完全自費となることを患者さんに事前に説明しなければなりません。しかし、このことを説明しない眼科施設もあり、ただ「多焦点眼内レンズが不調の場合には、単焦点眼内レンズへの入れ替えも可能です」などとしか説明せず、後で非常に高額な自費負担での費用をめぐってトラブルになることも少なくないので、事前に注意が必要です。また、眼内レンズの入れ替え手術は、特に術後の期間が長くなるほど再手術は想定外の合併症を生じやすい難しい手術となります。これは、手術後3カ月以降になると、眼内レンズと水晶体嚢などの周囲の組織との癒着が強くなるためです。このため、眼内レンズを入れ替える手術の際に眼内レンズを支持する水晶体嚢が破損する「後嚢(こうのう)破損」や「チン小帯断裂」という患者側には想定外の重篤な合併症を生じやすくなり、かえって再手術前よりも視力が低下してしまうケースも少なからず報告されています。

『白内障手術で後悔しないために知っておきたい本当のこと』(アスコム)
『白内障手術で後悔しないために知っておきたい本当のこと』(アスコム)
 

この本の著者…村上 茂樹(むらかみ・しげき)

医学博士/順天堂大学客員教授/日本眼科学会認定眼科専門医/国際水素医学学会研究会理事

山口県萩市生まれ。私立 愛光学園中学・高等学校卒業。順天堂大学医学部卒業。同大学院医学研究科博士課程修了(高齢者の失明予防医学を研究)。眼科学会専門医とともに東洋医学会漢方専門医と抗加齢医学会専門医の3冠を有する、史上初の眼科医として、栄養・漢方治療も併せた眼科の統合医療を実施。世界最小でわずか2ミリからの「極小切開法(MICS(ミクス)法)」と最高品質の眼内レンズなどにより、これまで1万3,000例を超える白内障手術を行う。また、県内でも希少な緑内障治療の「選択的レーザー繊維柱帯形成術(SLT)」および、網膜治療の「マルチカラーレーザースキャン法」などによる眼に優しい無痛のレーザー光療法でも2万件以上もの実績を積み重ねている。わかりやすい解説と、堅実な医療、眼科手術が身上。日本眼科学会、日本臨床眼科学会、日本白内障屈折矯正手術学会、日本眼科手術学会など多数の学会で学術講演を行う。海外医学雑誌や日本眼科学会英文機関誌(JJO)などへの英語学術論文の掲載実績ならびに著書も多数。

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