〝無意識の偏見〟に気づいてしなやかなマインドに【カウンセラーが指摘する】アンコンシャスバイアス
「感じがいい」は性格ではなく、誰でも身につけられる技術。これまで2万人以上の相談を受け、のべ6万人以上に企業研修や講演を行ってきた大野萌子さんが、人間関係をよくするために大事な「話し方」を教えます。著書『いつも感じがいい人はこんなふうに話している』(アスコム)より内容を一部抜粋して紹介します。
男性がお弁当を作ることは「おかしい」のか?
アンコンシャスバイアスについて、詳しく説明しましょう。〝無意識の偏見〟と呼ばれることもある、自分でも自覚していない思い込みや偏見のことです。これは、育ってきた環境や経験の中で作られてくるものです。ありがちな例として、
「お母さんなんだから早く帰ったほうがいいよ」(子どものいる女性社員に対して)
「男性なのにお弁当作ってるなんて、えらいね」(手作りした弁当を持参する男性社員に対して)
このふたつは、「お母さんなんだから」「男性なのに」という部分が、感じが悪く聞こえる原因ですね。「母親は子どものために早く帰るべきだ」「男は料理をしないし、ましてや弁当なんて作らないものだ」というステレオタイプな決めつけが、気持ちの根底にあるからこそ、出てきてしまうフレーズです。これを言われた側は、少し引っかかりを覚えるかもしれません。
「子育てはお母さんが主に担うものなの?」
「男が弁当を作るのがそんなに変かな?」
そう思うかもしれません。言った人に対して、悪気がないと知りつつも、ちょっとだけネガティブな印象を持つ恐れがあります。
アンコンシャスバイアス自体は誰でも持っています。持っていることが悪いわけではなく、これに気づいているか気づいていないか、という視点が必要なのです。まず「アンコンシャスバイアスと呼ばれるようなものがあるんだ」ということ。さらに、「自分はどんなバイアスを持っているのか?」ということ。感じのいい人はそれを理解しているのです。「自分はこういう偏見を持っている」という前提で考え、発言するように気をつけることができているということです。そんなこと今まであまり意識したことなかった、という人もいるでしょう。ですが、心配しないでください。まずは自分の中にそういうものの見方、考えがあるんだ、と、気づくことから始まります。
アンコンシャスバイアスには何種類かありますが、人とのコミュニケーションの際に、〝感じが悪い人認定〟されてしまう代表的な例を簡単に説明しましょう。
ステレオタイプ……国籍、学歴、世代などに対するイメージを、画一的なものだと思い込んでいる
「あの人は〇〇大学だから、そんなに大したことない」
「ゆとり世代は駄目だよね」
「イタリア人はサッカーが好きなはず」
世間一般で言われていることを、疑いなくその通りだと思い込んでいることが多い人です。「普通は」「みんなそう言ってるよね」などの言葉を使いがちです。
ジェンダーバイアス……性別に対する決めつけや固定概念
「男の子だから服は寒色系がいいよね」
「女性は仕事に励むより、子どもを産んで家事に専念するべき」
「男なんだから、正社員じゃないと」
「親戚の集まりでは、女は給仕するべき」
男はこう、女はこう、と決めつける考えのことです。先ほどの「お母さんなんだから早く帰ったほうがいいよ」や、「男性なのにお弁当作っているなんて、えらいね」という発言も、このバイアスを持っていることが原因です。
同調バイアス……周囲の人に合わせたほうがいいと思ってしまう傾向
「大勢が並んでいるから、美味しいに違いない。私も並ぼう」
「皆が質問しないから、私も発言しないで黙っていよう」
「他の人があの人を無視しているから、私も無視するようにしよう」
最近であれば、SNSで「いいね」がたくさん付いている投稿を、内容を詳しく見ずに拡散してしまう、といったような行為もこれに当たります。
確証バイアス……都合のいい情報だけを見る傾向
「このタレントは嫌われている」
「このダイエット法が一番いい」
「私の飲んでいるサプリメントは効果があるはず」
「あそこの会社はブラックらしい」
自分の考えと同じ意見の情報ばかり見聞きし、反対の意見は見ないようにしたり、無視する傾向です。インターネットのSNSの中で多く見られる傾向と思われがちですが、日常生活やビジネスシーンの中でも見られます。
権威バイアス……肩書きに権威があると思う人の意見を、鵜呑みにする傾向
「このコメンテーターの言うことは間違いないはず」
「有名な医者が言ってるのだから、この薬で問題ないはず」
「カリスマトレーダーが言ってるんだから、この投資がいいはず」
権威があると思う人の言っていることを、疑わず受け入れてしまうことです。
他にもいくつかありますが、会話の際に、〝悪気はなく感じが悪くなる〟可能性のあるバイアスだけでも、このくらいあります。ですから、バイアスを持っていることが悪いわけではなく、こういうものがあるということをまずは意識しましょう。そして「私って、どういうバイアスを持っているのかなあ」と、一度考えてみてください。
前述の例にぴったり当てはまるものがないとしても、例えば、
・シングルマザーの子どもは「かわいそう」と思っている
・「ずっと独身でいることは不幸」だと思っている
・「養子を迎えるなんて。やっぱり自分の子どもでないと」と思っている
などの気持ちも、アンコンシャスバイアスの一種です。その当事者は、実際そうは思っていないかもしれません。こちらが勝手に決めつけてジャッジしているのです。その決めつけが会話の中に出てきてしまうと、感じが悪くなるのです。感じのいい人は、仮にそういったアンコンシャスバイアスを持っていたとしても、それを口にしないよう気をつけることができます。また、そもそもそういった決めつけをしないようなマインドを備えているのです。
この本の著者…大野 萌子(おおの・もえこ)
公認心理師、産業カウンセラー、2級キャリアコンサルティング技能士、一般社団法人「日本メンタルアップ支援機構」代表理事。カウンセラーとしての長年の経験を活かし、人間関係をよくするコミュニケーション、ストレスマネージメント、ハラスメント対策を専門とする。カウンセリングは2万人超、講演・研修は内閣官房人事局をはじめ、大手企業、大学などで6万人を対象に行ってきた実績を元に、テレビ、ラジオ、新聞などのメディアでも活躍。『よけいなひと言を好かれるセリフに変える言いかえ図鑑』(サンマーク出版)は51万部のベストセラーとなった。他に『できる上司のZ世代をモンスターにしない言葉』(ビジネス社)、『「かまってちゃん」社員の上手なかまい方』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。メディア出演は『世界一受けたい授業』(日本テレビ)、『ホンマでっか!?TV』(フジテレビ)など多数。
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