お風呂習慣が“要介護リスク”をも左右する?入浴が叶えるウェルビーイング|ツムラ×湯道イベントレポ
「お風呂は、キャンセルするもの」――そんな言葉に、違和感を覚えなくなっていませんか。 忙しさや疲れ、タイパを優先する暮らしのなかで、入浴は後回しにされがちです。シャワーで済ませ、少しでも早く休みたい――その感覚は、いまや多くの人にとって“当たり前”になりつつあります。 しかし近年、湯船に浸かる習慣が、睡眠や自律神経だけでなく、将来の要介護リスクにも関わる可能性が報告されています。 「たかがお風呂」と「されどお風呂」。 その差は、思っている以上に大きいのかもしれません。
湯船に浸かる人ほど“要介護リスクが低い”というデータ|入浴の科学(早坂信哉先生)

25年間で約7万人の入浴習慣を調査してきた入浴研究の第一人者、早坂信哉先生。
近年では、日本の疫学研究が進み、湯船に浸かる習慣のある人は、脳卒中リスクが約26%、心筋梗塞リスクが約35%低いといった報告や、糖尿病コントロールとの関連も示されています。
さらに、早坂先生の研究では、日常的に入浴する人ほど要介護リスクが低い傾向が示されています。
要介護認定を受けていない高齢者約1万3,786人を3年間追跡した研究では、毎日湯船につかる人は、週0〜2回の人と比べて要介護認定リスクが約3割低いと報告されています。
ここで重要なのは、これらの効果は「シャワーではなく、浴槽に浸かること」による点です。
湯船に浸かることで得られるのは、温熱による体のあたたまりに加え、水圧や浮力といった全身への物理的作用です。これらが組み合わさることで全身の緊張がゆるみ、自律神経にも働きかけます。
つまり、入浴は「体を洗う」だけでなく、「体をゆるめる」時間でもあります。
さらに見逃せないのが、睡眠との関係です。40℃前後の湯に10分程度浸かると、深部体温は約0.5℃上昇。その後90分ほどかけて体温が低下し、この落差が自然な入眠を促します。就寝90分前の入浴は、質のよい睡眠へと導く“生理的なスイッチ”になるのです。
“ざぶん”で切り替わる気分と体|小山 薫堂さんが語る入浴の本質

湯道家元の小山薫堂さんが語るのが、「ざぶんの幸せ」という言葉です。
湯船に身を沈める瞬間の、言葉にしきれない解放感。それは単なる気持ちよさではなく、1日の緊張や役割から離れる“切り替えのスイッチ”のような感覚でもあります。小山さんは、この「ざぶん」という一瞬にこそ、日本人が大切にしてきた入浴の本質があると語ります。湯に身を預けることで重力から解放され、誰にも邪魔されない時間が生まれる。そのわずかな余白が、気持ちを整えるきっかけになります。
また、作家の林真理子さんは、海外でも入浴剤を持参すると語っています。湯に香りを加えた瞬間、その場が「自分の場所」になる――入浴は、体だけでなく空間や気分まで切り替える力を持っています。
実際、湯船に浸かる習慣は世界的に見ても珍しいものです。
ヨーロッパに住む小学生の甥も、日本で当たり前だった入浴ができない環境に身を置いたことで、その価値を実感したひとりです。日本に帰ると、湯船を見つけた途端、観光そっちのけで夢中になります。それは入浴が特別だからではなく、日本ではそれが“日常の中の贅沢”として存在しているからです。
小山さんはこう語ります。
「明日への活力を取り戻す場所が家の中にあるのはすごいこと。毎日お風呂に入れるという当たり前が、実は幸せなんです」
日常に取り入れる“養生としての入浴”|無理なく続くセルフケア

私自身、国際中医薬膳管理師として食と養生の関係を見てきた立場からも、入浴は非常に理にかなったセルフケアだと感じています。東洋医学では、香りや温熱、巡りといった感覚的な要素を通じて心身のバランスを整えます。入浴はまさにその実践であり、現代の生活にも無理なく取り入れられる養生のひとつです。
台湾では、薬膳が日常に根づいており、生薬を取り入れながら体調を整える文化があります。当帰や陳皮を使った“くすり湯”も身近な存在です。
そうした文化に触れるなかで、私自身が自然と手に取ったのが生薬入浴剤でした。
お湯に入れた瞬間に広がる香りに、思わず呼吸が深くなる感覚があります。この「呼吸がゆるむような感覚」は、私自身が養生を考えるうえで大切にしているポイントのひとつです。こちらは素材を活かすという点でも、非常に興味深い背景を持っています。
日々の入浴を、単なる習慣として終わらせるのではなく、自分を整える時間として捉える。その視点だけで、入浴の価値は大きく変わります。
お風呂は“体を洗う時間”ではなく、“自分を整える時間”
まずは、シャワーで済ませていた日を、週に数回だけでも湯船に変えてみる。そこに香りを加えることで、その時間はさらに質の高いものになります。
忙しい毎日の中で、「ざぶん」と湯に浸かる時間を持つこと。
今日シャワーで済ませるか、それとも湯船に浸かるか。その選択が、明日のコンディション、そして未来の自分を少しずつ変えていくのかもしれません。
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