「最近、物がゆがんで見える…」放置厳禁!見逃されやすい加齢黄斑変性の初期サインとは?医師が解説

「最近、物がゆがんで見える…」放置厳禁!見逃されやすい加齢黄斑変性の初期サインとは?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2025-12-03

ある日、まっすぐなはずの道路の白線が波打って見えたり、雑誌の文字が歪んで読みにくくなったりするとゾッとしますよね。これが加齢黄斑変性(AMD:age-related macular degeneration)の初期サインであることがあります。医師が解説します。

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「物がゆがんで見える」ってどんなサイン?まずは落ち着いてチェック

黄斑は網膜の中心部にある“ものを見るための重要な場所”で、ここが障害されると視力低下だけでなく、物が歪んで見える(変視症)や中心暗点(視界の真ん中が暗い)といった症状が出ます。

初期は片目だけに起こることが多く、「片方で見れば大丈夫」と放置されがちですが、進行すると両目に影響することもあるので要注意。

まずは片目ずつ遮蔽して自分で簡単にチェックしたり、アムスラー格子(格子状の図)で歪みがないか確かめてみましょう。

見逃されやすいパターンと具体例 

身近な事例を挙げます。

Aさん(68歳・主婦)
テレビの字幕が読みにくくなり、字が歪んで見えたが「老眼かな」と放置していた。半年後、視力が急に落ち眼科受診で加齢黄斑変性(滲出型)と診断。早期の抗VEGF療法で進行を抑えられたものの、もっと早く来ていれば…と悔やんでいた。

Bさん(72歳・元銀行員)
片目で見ると建物の縦線が歪む。近視や白内障だと思っていたが、精密検査で黄斑に異常が見つかり、医師の指導で定期観察と必要時の治療を行っている。

Cさん(59歳・自営業)
中心がぼやけて新聞の活字が読みづらくなった。本人は若く見えて油断していたが、加齢黄斑変性の早期サインとして指摘され、ライフスタイルの見直し(喫煙中止、サングラスの使用、食事)と経過観察を始めた。

これらに共通するのは「最初の歪みやぼやけを年のせいにしがち」な点。特に喫煙歴、高齢、家族歴、心血管リスク(高血圧・高脂血症)を持つ人はリスクが高く、早めの検査が重要です。

どう対応する?検査・治療・日常ケアの現実的ガイド

まず眼科での検査

視力検査、眼底検査、光干渉断層撮影(OCT)などで黄斑の状態を精密に評価します。

滲出型(血管が増えて漏れるタイプ)では、中心視力が急激に悪化することがあり、早期に治療を開始することで視力維持が期待できます。

内服や点眼だけで済まない場合、眼科での抗VEGF薬の硝子体注射が標準的な治療です。

一方で萎縮型(ドライ型)は進行がゆっくりで、現時点で治療の選択肢は限られますが、定期観察とリスク管理が大切です。

日常でできること

喫煙は最大のリスク因子なので禁煙の強力な推奨。紫外線や強い光は網膜に負担をかけるため、外出時は遮光性のあるサングラスを使うと安心です。

抗酸化作用のある栄養素(葉酸、ビタミンC・E、亜鉛、ルテインなど)を含むバランスの良い食事はリスク低減に寄与する可能性があるため、毎日の食生活で意識するのが現実的。

さらに、自己チェック(アムスラー格子)を習慣にして、歪みや暗点を早期にキャッチしましょう。

アムスラー格子
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受診の目安

「急に物が歪んだ」「中心がぼんやりして読めない」「片目の視力が急に落ちた」場合は速やかに眼科へ。急性の視力低下は治療のタイミングが命に(じゃなくて視力に)関わります。

まとめ

「物がゆがんで見える」は決して単なる老化の一部分ではありません。

加齢黄斑変性は早期発見・早期治療で視力を守れることがあり、特に歪みや中心視力の変化は見逃さないでほしいサインです。

日ごろから片目ずつチェックしたり、アムスラー格子を使った自己観察、喫煙中止や栄養・紫外線対策、そして気になる変化があれば速やかに眼科受診を。

目は日常生活の道具そのもの。ちょっとした違和感を大事にして、見える未来を自分で守っていきましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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