専門医に聞く|「沈黙の臓器」が悲鳴を上げる前に。脂肪肝が招く深刻なリスクと予防法
沈黙の臓器であり、日常生活における症状などで見分ける方法がないとされている肝臓。消化器内科の医師である今城健人先生に、脂肪肝のセルフチェック法と意識したい生活習慣についてお聞きしました。
脂肪肝のセルフチェック法
脂肪肝は自覚症状がほとんどない「沈黙の臓器の病気」といわれています。そのため、日常生活の中で気づくことは難しく、健康診断の結果から早めに気づくことが大切です。
「脂肪肝の早期発見には、健康診断でのALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)という肝機能の数値に注目してください。ALTが30以上のときは、かかりつけ医で相談することをおすすめします。また、肥満やメタボの傾向がある方は、脂肪肝を合併しやすい傾向があります」(今城先生)
脂肪肝の可能性と行動の目安
<30
現在のところ脂肪肝の可能性は低いです。食事や運動に注意して、肥満に気をつけましょう。多量の飲酒は避けてください。
31~50・・・要注意
脂肪肝を含む何らかの肝疾患の可能性があります。できれば、かかりつけの先生のところで腹部超音波(腹部エコー)検査を受けましょう。食事や運動に注意し、肥満や多量飲酒を避けましょう。
≧51
脂肪肝を含む何らかの肝疾患の可能性が高いです。かかりつけの先生のところで腹部超音波(腹部エコー)検査を強く推奨いたします。食事や運動に注意して、肥満や多量飲酒を避けましょう。
健康診断の「腹囲」「中性脂肪」「肝機能(ALT)」などの項目が基準より高めの場合は、脂肪肝予備群の可能性も。生活習慣の見直しを始めましょう。
脂肪肝にならないために!生活習慣でできる対策は?
脂肪肝は、食事と運動で改善が期待できる生活習慣病のひとつです。特別な治療よりも、まずは日々の暮らしを整えることが何より大切です。
運動のポイント
「脂肪肝の予防・改善には、有酸素運動と筋トレ(レジスタンス運動)の両方が有効です。男性は有酸素運動、女性は筋トレの効果が出やすい傾向がありますが、どちらもバランスよく行うのが理想です」(今城先生)
目安は、息が少し弾む程度の運動を週150分以上。ウォーキングや軽いジョギング、エレベーターの代わりに階段を使うなど、日常の中で無理なく続けましょう。筋トレは週2~3回、脚・背中・お腹など大きな筋肉を使う運動を取り入れるのがおすすめです。
食生活のポイント
「脂肪肝を防ぐには、高カロリーな食事や夜遅い食事を控えることが基本です。特に、夜の遅い時間に食べると脂肪が肝臓に蓄積しやすくなります。就寝の2~3時間前までに夕食を済ませましょう」(今城先生)
また、甘い清涼飲料水や揚げ物、バターなど脂質の多い食事も控えめに。野菜・豆類・青魚・オリーブオイルを中心にした「地中海食スタイル」が理想です。さらに、無糖のコーヒーを1日2杯ほど飲むと、肝臓を守る働きがある(線維化を抑制する)と報告されています。食べるときは「よく噛んで、ゆっくりと」。水分補給はお茶や水を中心にし、間食や夜食を控えることで、脂肪の蓄積を防ぎやすくなります。
放置しないで!気をつけたいサイン
「脂肪肝は沈黙の臓器と言われており初期には症状が出にくいのですが、進行すると肝硬変や肝がんにつながることもあります。疲れやすい、だるさが続く、肌や白目が黄色くなる(黄疸)、お腹が張る、足がむくむなどの症状が出た場合は、早めに医療機関を受診してください」(今城先生)
【まとめ】今日からできる!肝臓を守る生活習慣ベスト3
体重を毎日チェック
5〜7%の減量で脂肪肝が大きく改善するといわれています。体重を測る習慣は、意識づけにもつながります。
こまめに体を動かす
週150分の運動が理想ですが、まずは「一駅歩く」「階段を使う」など、できる範囲から始めましょう。
バランスのよい食事を意識
甘い飲み物や脂っこい料理を控え、野菜・魚・豆類を中心に。お酒も飲みすぎには注意を。
教えてくれたのは…
新百合ヶ丘総合病院 消化器内科 部長 今城健人(いまじょう けんと)先生
新百合ヶ丘総合病院 消化器内科 部長/福島県立医科大学 低侵襲腫瘍制御学講座 特任教授。2005 年、金沢大学医学部医学科卒業。平塚市民病院、横浜市立大学附属病院肝胆膵消化器病学教室勤務などを経て現職。日本肝臓学会専門医。日本消化器病学会専門医。日本超音波学会専門医・指導医・代議員など。肝臓疾患全般、非アルコール性脂肪肝疾患診療、肝細胞癌治療(ラジオ波焼灼療法・カテーテル治療)を得意とする。
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