「ステロイド=怖い薬」って本当?正しく知れば味方になる理由|医師が解説
「ステロイド」という薬の名前を聞くと、「副作用が強くて怖い薬」「できるだけ使いたくない」という印象かもしれません。「ステロイド=怖い」というイメージがなぜ広まったのか、そして実際のところどのように付き合えばいいのかを、医師の視点から解説します。
「ステロイド=怖い薬」って本当?正しく知れば味方になる理由
病院でステロイドを処方されると、「えっ、ステロイドですか!? 本当に大丈夫なんですか?」と不安そうな表情をされる患者さんも少なくありません。
中には「飲んだら一生やめられなくなるんでしょ?」と心配して、処方された薬を自己判断でやめてしまう方もいます。
確かに、ステロイドには注意すべき副作用があるのは事実です。
でも、だからといって「怖い薬」だと決めつけるのは早計です。
実はステロイドは、正しく使えば命を救うほど頼もしい薬なのです。
ステロイドはもともと体の中にもある
そもそも「ステロイド」というのは、体がもともと作り出しているホルモンの一種です。
たとえば「副腎皮質ホルモン」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
これは体がストレスに対応したり、炎症を抑えたりするために分泌しているホルモンです。
薬として使われるステロイドは、このホルモンを人工的に作ったもの。
つまり、体にとってまったく未知の物質というわけではなく、もともと体が使っている仕組みを助ける薬なのです。
どうして「怖い薬」というイメージが広まったのか
それでも、なぜここまでネガティブなイメージが広まってしまったのでしょうか。
一番の理由は、副作用の強さです。
ステロイドには炎症を強力に抑える作用がありますが、それだけパワーがある分、長期間や大量に使うと副作用が出やすくなります。
代表的な副作用には、下記があります。
- 体重増加(むくみや食欲増進)
- 骨粗しょう症
- 感染症にかかりやすくなる
- 血糖値が上がる
- 皮膚が薄くなる
これらの副作用がニュースで大きく取り上げられると、「ステロイドは怖い」というイメージだけが独り歩きしてしまうわけです。
ただし、ここで大事なのは「副作用=必ず起こるわけではない」という点です。
量や期間、使い方を工夫することで、リスクをぐっと下げることができます。
命を救うこともあるステロイド
一方で、ステロイドがなければ治療が難しい病気もたくさんあります。
たとえば、ぜんそくの重症発作や膠原病(こうげんびょう)、重度のアレルギー反応などは、ステロイドなしでは命に関わることもあります。
医療現場では、「副作用が心配だから…」と躊躇してステロイドを使わなかった結果、病状が悪化してしまうケースもあります。
つまり、正しく使えば命を救う薬でもあるということです。
怖がって遠ざけるのではなく、「味方につける」という意識が大切です。
ステロイドのリスクとメリット
ここでは、ステロイドの「良い面」と「注意すべき面」をもう少し具体的に見ていきましょう。
ステロイドのメリット
・炎症を素早く抑えられる
急な発作や重症の症状にも効果が期待できるため、命を救う場面でも使われます。
・幅広い病気に対応できる
ぜんそく、リウマチ、膠原病、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎など、多くの疾患で使われています。
・飲み薬、吸入薬、塗り薬など使い分けが可能
症状や部位に合わせて使えます。例えば、ぜんそくでは吸入薬、湿疹では塗り薬といった具合です。
ステロイドのリスク
・副作用が出る可能性がある
これはよく知られていますが、量と期間に大きく左右されます。特に内服(飲み薬)の場合は注意が必要です。
・急にやめると体に負担がかかることも
長期間使っていた場合は、いきなり中止すると体がびっくりしてしまいます。必ず医師の指示に従って減らしていきましょう。
・感染症に注意が必要
免疫の働きが抑えられるため、風邪やインフルエンザなどにかかりやすくなることもあります。
上手に付き合うためのポイント
・医師の指示を必ず守る
自己判断で量を増減しないことが鉄則です。
・ 副作用チェックを忘れずに
定期的な血液検査や骨密度測定などで、副作用の有無を確認しましょう。
・生活習慣でリスクを減らす
バランスの良い食事、適度な運動、十分な睡眠が副作用対策になります。
まとめ
ステロイドは「怖い薬」ではなく、正しく使えばとても頼りになる薬です。
副作用があるのは事実ですが、それはどんな薬にも言えること。
問題は使い方と管理の仕方です。
もし医師からステロイドを処方されたら、まずはしっかりと説明を聞きましょう。
不安な点があれば遠慮せずに質問してください。
怖がるあまり治療を避けてしまうことは、かえって病気を悪化させる原因になります。
「怖いから使わない」ではなく、「正しく理解して味方につける」。
それが、ステロイドと上手に付き合うための第一歩です。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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