おうち追熟で柿がもっとおいしくなる“自分だけのフルーツ体験”|朝フルで始める整い習慣
「本当においしい果物、食べていますか?」 そう語るのは、大正13年創業、福島県の果物店「青木フルーツ」会長、青木信博さん。東京や横浜で行列ができるフルーツタルト&カフェ「フルーツピークス」も手掛けています。青木フルーツでは、産地や品種だけでなく熟度管理まで徹底し、“世界の今この瞬間のピーク”を迎えた果物を届けます。 一般流通の果物も、自宅で少し寝かせる追熟によって、柿やバナナ、桃、キウイを自分好みの“フルーツピーク”に変えられます。今回は、そんな果物のプロに、家で果物の甘さや香りを極めるコツと、旬の「会津 みしらず柿」の魅力を伺いました。
追熟で見つける、自分好みの“フルーツピーク”

青木フルーツが大切にするのは「フルーツのピークを知ること」。
「一般流通の果物は未熟なうちに収穫されるため、追熟の仕方で味が変わります。完熟=最高とは限らず、人それぞれおいしいと感じる熟度は違います」そう語るのは、青木フルーツ株式会社 代表取締役会長・青木 信博さん。
追熟とは、収穫後に果物を置くことで甘みや香り、やわらかさが増して食べごろになること。家庭でも気軽に試せ、柿やバナナ、桃、キウイなどは特に変化がわかりやすい果物です。青木さんは「まずはバナナで毎日1本ずつ食べ比べ、自分好みの熟度を見つけてみてください」とアドバイス。
実際に試してみると、硬めのバナナは甘さの中にほのかな酸味があり、カシュッと歯に心地よく響く食感が楽しめました。ヨーグルトにのせるならスプーンですっと切れるくらいの柔らかめがベストで、口に入れるとふんわり甘く、とろけるような舌触り。バナナブレッドを作るときは、完熟して黒い斑点が出た甘いものを使うと、生地に自然な甘みと香りが広がり、焼き上がった瞬間から部屋中にバナナの香りが漂います。
もちろん、これはあくまで私の好みの感想で、硬めが好きな人もいれば、もっと熟したものを好む人もいるでしょう。果物は熟度によって味わいも食感も変わるので、誰にとっての“ベスト”もそれぞれ。だからこそ、自分の好みを見つける楽しさがあると実感しました。
柿の“食べごろ”は、いつ?

今、旬を迎えているのが柿です。学名でも「カキ」(Diospyros kaki)と呼ばれ、和名がそのまま定着している唯一の果物です。
柿には甘柿と渋柿があり、それぞれの食べごろは異なります。甘柿は熟すとお尻から紅色に色づき、ヘタまで均一に色がのったものがおいしい食べごろです。一方の渋柿は、焼酎などで渋抜きするとタンニンが不溶化して渋みを感じなくなります。渋抜きした柿は、追熟で好みの硬さや甘さに調整できます。やや硬めの状態から数日〜1週間置くと果肉がやわらかくなり、甘みが増してきます。色や香りを見ながら、自分好みのタイミングで食べるのがポイントです。
青木さんは「柿をジュースにする際は、完熟より少し手前の柿を使うと酸味がほどよく残り、最後までおいしく味わえます。本当は企業秘密なんだけどね!」と笑います。生食向き、ジュース向き、ケーキ向き……と、用途に応じて熟度を変える楽しみも、果物のおもしろさの一つです。
今が旬!福島県会津の「みしらず柿」

日本各地には数えきれないほどの柿の品種があります。甘柿では、奈良県や岐阜県で多く栽培される「富有柿」、福岡県の「太秋柿」、静岡県の「次郎柿」などが有名です。
渋柿には、愛媛県の「富士柿」、山梨県の「甲州百目柿」、福島県の「蜂屋柿」、島根県の「西条柿」、山形県の「庄内柿」、新潟県の「おけさ柿」などがあります。これらは渋を抜くことで、甘柿にはない濃厚な甘さとなめらかさが楽しめます。
青木さんは「旅先でもさまざまな柿を手軽に楽しんでほしい。各地の柿を食べ比べることで、柿の奥深さを感じることができるでしょう。そして、福島でぜひ食べてほしいのが、みしらず柿です」と話します。
「みしらず柿」は福島県でも、会津地方で栽培される渋柿。名前の由来は諸説ありますが、江戸時代、会津の農家が収穫した柿を江戸に献上した際、将軍がその甘さに感動し、「これは誰のものか?」と尋ねたところ、農家が「誰にも知られていない柿」と答えたことから「みしらず柿」と呼ばれるようになったと言われています。
大玉で旬は10月下旬〜11月。鮮やかな橙色で、渋抜きすると糖度18度以上になることもあり、とろけるような甘さを持ちます。ほとんど改良されていない土着品種で、おいしく育てるのは難しく、品質にばらつきが出やすいそうです。丁寧に手間をかける農家の努力が、そのおいしさを支えています。
プロが教える!もっとおいしい柿レシピ

「柿が赤くなると医者が青くなる」と言われるほど、昔から健康を支えてきた柿。青木さんおすすめの「柿と春菊のサラダ」は、甘さと香りを楽しみながら、からだの内側から健やかに暮らすための食習慣にもぴったりです。
柿と春菊のサラダ(2人分)
- 柿 1個
- 春菊 1/2わ
- アーモンド 大さじ2(粗く刻む)
- オリーブオイル 大さじ1
- バルサミコ酢 大さじ1
- 塩 ひとつまみ
作り方
- 柿は皮を剥き、食べやすくカット
- 春菊は硬い茎を除き、水気を切って4〜5cmに切る
- ボウルに春菊、オリーブオイル、バルサミコ酢、塩、柿を順に加えて和える
- 器に盛り、アーモンドを散らす
整いポイント
柿は、美肌づくりや風邪予防にうれしいビタミンCがたっぷり。1個で約120mg摂れるので、手軽に1日の目安量をカバーできます。ナッツやオリーブオイルのビタミンEと組み合わせれば、抗酸化パワーもさらにアップ。
管理栄養士 石松佑梨の【取材メモ】

昨年の秋、東京から福島県郡山市へ移り住んですぐの季節しごとが「干し柿」でした。寒風にさらして渋柿を甘くするその作業は、自然と暮らしのリズムを実感できる時間。先人たちの知恵は、今を生きる私たちの「おいしい健康」へのヒントが多くあるように感じます。
干し柿は昔から大切なおやつであり保存食。現代においても、むくみを和らげるカリウムや腸内環境を整える食物繊維を含み、甘さと栄養を同時にとれる魅力的な食材です。
私はこれまでトップアスリートの栄養サポートをしてきましたが、体調管理の要は「リズム」です。真冬にスイカが食べられるような便利な時代だからこそ、自然のリズムを感じにくくなり、体内時計や自律神経の乱れが疲労や不眠につながりやすいのも現実です。
青木さんが教えてくれた「自分好みの果物のピークを探すこと」は、自然と向き合う小さな行動。見た目・香り・触感・味など、五感で季節を感じることで、自然界の「今」と自分のからだのリズムを近づけることができます。
特に朝食は体内時計をリセットする大切な時間。そこに旬の果物を加えれば、手軽に心と体を整える習慣になります。
不眠や生活リズムの乱れを感じるときは、まず“朝のフルーツ習慣”から。旬を味わうことが、自分自身を整える第一歩になるはずです。
取材協力
青木フルーツ株式会社
1924年創業。福島・郡山から全国に「果物のある豊かな時間」を届けるフルーツ文化創造企業。フルーツ専門店[フルーツショップ青木]をはじめ、フルーツジュース専門店[果汁工房果琳][フルーツバーAOKI][V2&M][Wonder Fruits]、フルーツタルト&カフェ[フルーツピークス]などを展開。
近年は“果物でウェルビーイングを支える”ことをテーマに、スムージーやプラントベースメニューを提案する[FRUITS IN LIFE]、1本で1日に必要なフルーツ200gを摂れる“ダブルプレスジュース”ブランド[Vicca]など、新しいライフスタイルブランドにも挑戦している。旬を見極め、ていねいに果物を届けるその姿勢は、100年近く変わらない。
公式HP:https://aokifruit.jp
※参考:文部科学省『日本食品標準成分表2020年版(八訂)』より
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