「子どもを殺さないために私が生き続ける」夫の520人不倫後、難病児母が下した覚悟の選択|体験談
「世界に30人もいない難病の子どものワンオペ中に、夫が520人と不倫」そんな衝撃的な経験をした、くさのねむさん。『それでも家族を続けますか? 難病児のワンオペ中に、夫が 520 人と不倫してました』(漫画:あらいぴろよ KADOKAWA)では、くさのさんの体験と、その後の選択が描かれています。後編では、くさのさんが自分の心を守るためにしていた対策や、似た状況で自分を責めてしまう方へメッセージをいただきました。※本ページにはプロモーションが含まれています。
自分の心を守るために
——夫さんの予想外な言葉や主治医の「家族なんだから」という方針に対して、しんどいときに流されないようにするのは大変だったと思います。くさのさんは適切に言い返したり、違和感を無視しないようにされていましたが、どんな対策をしていましたか?
夫の言っていることが、本人が考えて出た言葉なのか、何かから得た知識として言っているだけか、誰かの受け売りなのかを区別して聞くことを意識していました。その区別がつくよう、自分自身が知識を得ることも大切だと思います。夫の言葉をそのまま受け取ってしまうと、自分が受けるダメージが大きいので。
治療に関しても、自分に知識がないと夫が言っていることが本当に正しいのか、都合のいいところだけ拾っているのか判断できないので、勉強するようにしていました。
言葉そのものよりも発言の意図を考えるようにして、直接的なダメージを避けるようにもしていました。受け取った言葉を自分の中で反芻していると、どんどん混乱して、受け入れようとしてしまいがちなので、言われたまま言葉をメモして頭の中から出し、自分の思い込みや感情から切り離すことをしていました。
あと、夫の不倫が発覚する以前から漫画を描いてSNSで発表していたので、今回のことも「ネタにしてやろう」と思ってメモにしていたことも、自分のメンタルにとってはプラスになりましたね。
——勉強するにあたって、どんな本を読まれましたか?
『依存症の人が「変わる」接し方 彼らが見ている世界がわかる』(主婦と生活社)を読みました。帯に「依存症の人と幸せになる方法がわかる一冊」と書かれている本ですが、私は「夫と一緒に幸せになりたい」と思って手にとったわけではありません。
難病の子どものケアが必要な中で、夫とコミュニケーションをとらないわけにもいかず、その中で夫の言葉をストレートに受け止めると自分が傷ついてしまうので、思考回路や会話の特徴を掴むために読みました。あくまで自分を守るためです。
——具体的にどういう場面で活用しましたか?
私がすごく怒ったときに、「そう言わせてしまってごめん」と言うようになったのですが、これは夫自身から出てきた言葉ではないと判断しました。おそらく友人や医師に「妻が怒っているときはどうしたらいいですか」と相談して、教えてもらった言葉なのだろうと。
子どもの調子が悪いときなど、大変な状況のときに夫は「そばにいれなくてごめん」と真剣に言ってくるんです。私からしたら、いてほしいわけがないのですが、この人にはそれが理解できないとわかったので、線を引いて、考えないようにしています。
折り合いの付け方も色々とある
——「家族」というものについて、今と昔とで考え方に変化はありましたか?
もともと自分が育った家族があまり愛情を感じる環境ではなかったので、自分の家庭は愛情にあふれて信頼し合えて安心できるような場にしたいと思っていました。その願いが成立しない家だとわかったので、愛情ではなく損得でつながる関係という、自分がずっと感じていた現実的な家族観に戻った感覚です。
夢は崩れましたが、子どものケアもあって、自分の傷つきを優先する生活でもなかったですし、ないものねだりにもなるので、そういう納得をしています。嫌ではあったのですが、もともと幸せな家庭で育った人よりは、スムーズに納得できた部分はあると思います。
夫との関係も、感情より合理的な選択を優先しました。どうしても子どものケアが必要ですし、子どもを預けて働くことが難しい状況なので、「使えるものは使っておこう」という感覚です。
——難病のお子さんを育てる中で、このようなことが起きて、心の支えとなったものはどんなことでしょうか。
「子どもが可愛いから頑張れた」といった、そういう生易しいものではなかったです。漫画にも描いたように、心中も考えたくらいでしたが、その後に落ち着いたときに、自分の子どもを殺してはいけないから、そのためには日々ケアを続ける必要があって、私が生き続けなきゃいけないと思いました。
夫が520人も不倫しているという状況は最悪でしたが、それ以上に最悪なことは、自分のせいで子どもが死んでしまうことだというところに立ち返りました。子どもが生きていること自体が自分の頑張りの証明にもなりましたし、ある意味、心の支えだったと思います。
元々話すことで気持ちを整理する性質があって、今回も友人に話していました。相手が面白がってもらえるように話して、一緒に「ヤバいね」と聞いてくれた友人がいたことで、自分が受けた衝撃と距離を取りやすくなったので、友人に感謝しています。
一番大きかったことは、SNSで漫画を上げ始めたとき、読者さんから「似た経験をしました」「夫が性依存症で離婚しました」など、たくさんのお話を聞かせていただき、様々な乗り越え方や折り合いの付け方があるとわかったことや、「自分だけじゃない」と思えたことです。私と子どもの健康と幸せを願ってくださる方もいて、励みになりました。
夫の性依存は妻には責任がない
——「妻のケア(支え)」が当たり前とされている社会風潮がある中で、くさのさんと共通した状況にあって、罪悪感や責任を感じてしまう女性もいると思います。今も悩んでいる方にメッセージをいただけますか?
夫は、私にも責任があるような趣旨のことを言ってきましたし、最初は「私にも責任があるのかな」と思ってしまった瞬間もありました。でも、カウンセラーにも言われたのですが、夫の性依存は私には責任がありません。学生時代から性依存が始まっているので、時期から見ても関係ないですよね。
「本人の問題は本人で解決させるしかない」「これ以上あなたが何かを考えたりしてあげたりする必要は全くない」とカウンセラーからは言われています。事故の被害者なのに、加害者を気遣っていられない、という思いです。今は私は全く悪くないですし、私のせいではないとはっきりと思っています。
【プロフィール】
くさの ねむ
世界に30人もいない希少遺伝子疾患の子をワンオペで子育て中。自身のSNSで連載した「子供の介護中夫のセックス依存症が発覚しました」が話題に。
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