たくさん飲めばいいわけじゃない!水を飲みすぎてはいけない人の特徴は?管理栄養士が解説
「水は体にいいから、1日〇リットルは飲んだほうがいい」と聞いたことはありませんか?水は生命活動に欠かせませんが、「たくさん飲めば飲むほどよい」というわけでもありません。とりすぎることにより、血液中のナトリウム濃度が低下し、低ナトリウム血症(水中毒)を引き起こすおそれがあります。これにより、頭痛・吐き気・けいれんなどの症状が現れ、重症化すると意識障害に至ることもあります。 今回は、水の飲みすぎに注意が必要な人について、管理栄養士の視点からお伝えします。
体での水の役割
新生児は約80%、小児は約70%、成人は約60%、高齢の方は約50%が水分です。水は体温調節、浸透圧の維持、栄養素や老廃物の運搬など、生命維持に不可欠な役割を果たします。
水の飲みすぎに注意が必要な人
腎臓や心臓に持病がある人
腎臓に持病がある場合、体内の水分やナトリウム(塩分)、カリウムなどのバランスが乱れて、体に水分が溜まり、むくみや血圧の上昇に繋がることがあります。この場合、水分の摂取量を制限する必要がある人もいれば、逆に脱水を防ぐために適度な水分補給が必要な人もいます。
心臓に病気がある方も、病気の状態によっては水分の制限が必要な場合があります。主治医の指示に従いましょう。
満腹になりやすい人
体質や胃の手術の後などで満腹感を感じやすい方は、食事中に水分を摂りすぎることで、必要な栄養素を摂る前に満腹になってしまうことがあります。
特に食が細い方や、摂取エネルギー・たんぱく質の確保が必要な方にとっては注意が必要です。
食事の際は栄養の確保を優先し、水分は食間(食事と食事の間)のこまめな摂取がおすすめです。
水分は、固形物に比べて胃を通過する速度が速く、短時間で小腸へと移動します。満腹感による食事量の低下を防ぎつつ、消化吸収にも配慮することができます。
「水は1日○リットル飲むべき」と決めている人
健康情報やSNSなどの発信から、「毎日〇L飲まなければいけない」と無理に水分をとる方がいます。しかし、必要な水分量は体格・活動量・気候・食事内容などで変わります。飲みすぎは体の不調を引き起こすこともあります。
体重が日毎に1~2kg増減する人は要注意
水分の摂取量や体重の変動は、飲み物だけでなく日々の食事内容も関係します。特に以下のような食習慣がある方は注意しましょう。
塩分の多い食事(ラーメン、漬物、加工食品など)をよく食べる
塩分をとると血中のナトリウム濃度が上がり、体はそれを薄めようと水分をため込みます。その結果、体重の増加や、むくみやすくなる場合があります。
甘いものを多く食べる
糖質は体内でグリコーゲンとして蓄えられ、その際に1gのグリコーゲンにつき約3gの水分を保持します。甘いものを多く食べた翌日に体重が増えるのは、脂肪の増加ではなく、糖+水分による変動も関係します。ホルモンの影響で水分排出が抑えられる場合もあります。
辛いもの・香辛料が多い食事をよく食べる
唐辛子などに含まれるカプサイシンは、発汗や体温上昇を促すため、結果的に喉が渇きやすくなります。一時的に水分を多く摂る原因になりやすいです。
アルコールの摂取が多い
アルコールには利尿作用があり、体内の水分が失われやすくなります。アルコールの影響で喉が渇きやすくなり、水分を多く摂ることで一時的に体重が増えることもあります。
高たんぱくの食事を食べる
たんぱく質を代謝する際に老廃物(尿素など)の排出が必要です。水分が多く必要になり、自然と飲水量が増える傾向があります。
水分補給は「こまめに・自分に合った量で」
「喉が渇いた」と感じたときには、すでに水分補給が必要な状況です。
適量の飲水量について、計算方法はいくつかありますが、「体重(kg)×30mL」は活用しやすいでしょう。例えば体重60kgの場合、60kg×30mL=1800mLが飲水の目安です。しかし年齢や気候、活動量、食事中に含まれる水分、既往歴などにより変動します。『体重(kg)×30mL』は目安として活用しやすい計算式ですが、疾患のある方や高齢者では個別に調整が必要となることがあります。医療者の指示に従ってください。
喉の渇きを感じる前にこまめに飲むこと、体調や尿の色、日々の食事バランスを意識しながら、自分に合った水分量を見つけていきましょう。
【参考】
・ 日本人の食事摂取基準2025
・ 新・食品栄養科学シリーズ ガイドライン準拠 基礎栄養学(化学同人)
・ Bankir L, et al. (2017). Relationship between Sodium Intake and Water Intake. Ann Nutr Metab.
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