膀胱炎と腎盂炎、何が違う?かかるとどうなる?医師が解説

膀胱炎と腎盂炎、何が違う?かかるとどうなる?医師が解説
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甲斐沼 孟
甲斐沼 孟
2025-08-03

膀胱炎と腎盂炎(じんうえん)では、感染が起こる場所と重症度が大きく異なります。医師が解説します。

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膀胱炎と腎盂炎、何が違う?

膀胱炎も腎盂炎(じんうえん)も、いずれも尿路感染症です。

膀胱炎と腎盂炎を比較すると、感染部位については、前者は膀胱(下部尿路)である一方で、後者は、腎臓~腎盂(上部尿路)となります。

主な症状

膀胱炎は、頻尿・排尿痛・残尿感・血尿が典型的です。
腎盂炎の場合には、発熱・腰背部痛・寒気・吐き気・全身倦怠感などが認められます。

発熱症状

膀胱炎では、基本なしか、あっても微熱レベルです。
腎盂炎では、高熱(38~40℃)が多いです。

排尿時の特徴

膀胱炎では、下腹部痛・不快感です。
腎盂炎では、腰背部(わき腹・背中)の強い痛みを呈します。

尿の変化

膀胱炎では、にごり・血尿・悪臭が認められます。
腎盂炎でも同様の所見を認めますが、炎症反応が強くでる場合もあります。

重症度

膀胱炎では、軽症が多く、女性に多いです。
腎盂炎の場合には、症状を放置すると、敗血症など重篤化するリスクがあります。

治療期間

膀胱炎は、比較的短期(3~7日)で改善することが多いです。
腎盂炎になると、長期(1~2週間)を要して、点滴治療が必要なケースも見受けられます。

特に、腎盂炎とは、腎盂や腎杯さらに腎実質が細菌性によって炎症を起こしている状態であり、主な原因として細菌が膀胱から尿の流れとは逆行性に侵入することによって生じる感染症です。

いわゆる腎盂と呼ばれる部位は、腎臓と尿管の接続部分のことを指します。

腎臓
イラスト/Adobe Stock

一般的には腎臓で作られた尿は腎杯を経由して腎盂に集まり、さらに尿管から膀胱へと流れていき、通常は無菌状態ですが、腎盂腎炎では膀胱炎の後に起こることが多く、多くは左右対称にある腎臓のうち、片方に細菌が繁殖して起こります。

膀胱炎と腎盂炎を発症するとどうなる?

膀胱炎を発症すると、排尿のたびにツンとした痛みを感じて、トイレが近くなって、すぐ行きたくなりますし、下腹部が重い感じを呈します。

一方で、腎盂炎の場合には、急な発熱(38℃以上)を認め、腰や背中がズキズキ痛む、悪寒・吐き気・全身のだるさなどの全身症状を呈する可能性があります。

どちらの病気も、主に大腸菌など腸内細菌が尿道から侵入して感染しますが、膀胱炎は膀胱どまりである一方で、腎盂炎は尿管を逆流し腎臓にまで到達したケースとなります。

治療法

膀胱炎は、抗菌薬(内服薬)、水分摂取が推奨されます。
腎盂炎の際には、抗菌薬(内服・点滴)を投与して、場合によって入院するケースもあります。

症状を放置した場合

膀胱炎は、再発しやすくなり、腎盂炎へ進行する可能性を秘めています。
腎盂炎の場合には、腎不全・敗血症などの合併症を引き起こして、最悪命にかかわることも考えられます。

受診の目安

頻尿・排尿痛・軽い血尿など膀胱炎を疑う際には、最寄りの内科などを受診しましょう。
発熱・腰痛・吐き気・倦怠感などを認めて、腎盂炎を疑う場合には、すぐに泌尿器科や総合病院を受診するように意識しましょう。

まとめ

膀胱炎や腎盂炎は、ともに尿路で引き起こされる感染症です。

尿路感染症は、膀胱炎の段階で適切に治療すれば比較的軽症で済みますが、放置すると腎盂炎や敗血症に進行することがあります。

排尿時にツンとした痛みがある、トイレが近い(頻尿)、残尿感が強い(出しきれない感じ)、尿のにごり・血尿がある、尿の臭いが強いなど、膀胱炎を疑う場合には、軽症のうちに適切に受診することが大切です。

38℃以上の発熱、腰・背中(脇腹)のズキズキした痛み、悪寒・震え・吐き気、体がだるい・食欲不振などの症状があり、腎盂炎が疑われる場合には、できるだけ急いで専門医療機関を受診すべきであると考えます。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

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