「いつのまにか顔老け」に注意!【骨粗鬆症学会認定医】が教える「骨密度低下」を防ぐ食べ方と生活習慣


日本人の食事摂取基準 2025年版では、「骨粗鬆症」が生活習慣病の項目に新たに加わりました。これにより栄養素の摂取が生活習慣病の改善だけでなく、骨の健康維持や加齢による身体機能の衰えにも対応。特にフレイル予防にはタンパク質が重要とされ、高齢者の健康寿命延伸に向けた包括的な栄養管理の指針となることが期待されています。
これからの季節、暑さにより外出が減少することで、思わぬ栄養問題が発生する恐れがあります。
「特に骨粗鬆症予防に重要なビタミンDは、日光を浴びることで体内でも合成されるため、外出減少は深刻な不足につながりかねません。また、運動不足により筋肉量が低下すれば、タンパク質代謝にも悪影響を及ぼし、フレイルのリスクを高める恐れも。室内でも適度な運動と、魚類や乳製品などビタミンD・カルシウム・タンパク質を意識的に摂取する食生活の工夫が、暑い季節こそ一層重要となります」
と話すのは、骨粗鬆症学会認定医でもある、そしがや大蔵クリニック院長の中山久德(なかやまひさのり)先生。
暑さで外出機会減少 骨を作るうえで大切なビタミンD不足に
「骨を作るうえで大切な栄養素はカルシウムだけではありません。カルシウムの吸収を促すビタミンDは日光を浴びることによって体内で生成される栄養素。食事でも摂取できますが、皮膚からのほうがより効率的に摂取できると言われています」
ビタミンDの不足は骨折のリスクを高める恐れもあると中山先生。
「近年の研究で、ビタミンDは脳と筋肉の協調を高める働きを持ち、転倒のリスクを減らすことがわかっています。日本人は血中のビタミンDが少なく、欠乏しやすいこともわかっています。家の中のちょっとした段差にもつまずくようになったという人は、ビタミンD不足が疑われる可能性も。暑さで外出しない日が続いた後、いつもより筋肉や関節のしなやかさが失われていることで、転びやすい身体になっていることも予想されます」
栄養素は手軽なサプリメントより食事から摂るのが基本!
骨の健康維持には栄養素の摂取が欠かせませんが、サプリメントに頼るだけでは十分ではありません。厚生労働省の報告によると、カルシウムサプリメントの効果は有効でも「わずか」であり、食事からのカルシウム摂取と比べても大きな差はないとされています。さらに 1,000mg/日以上のカルシウムサプリメント摂取は心筋梗塞リスクの上昇につながる可能性も報告されています。
※引用:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書
食事で対策する場合はカルシウムが吸収されやすくなる工夫を
運動に加えて、食事ももちろん大切。骨を丈夫にするのに大切な栄養素といえばカルシウムが真っ先に思い浮かびますが、そこには意外な盲点があると中山先生は言います。
「カルシウムは吸収率が悪い栄養素。一番いいと言われている乳製品でも含まれているカルシウム量の50%くらいしか吸収されず、小魚は30%程度とさらに少なくなります。野菜の中では小松菜に多く含まれますが、食物繊維が含まれていることでカルシウムの吸収を邪魔してしまうため、20%くらいしか吸収されないと言われています」

今すぐ取り入れたい! 鯖缶×レモンの骨活レシピ

骨活には鯖缶とレモン果汁の組み合わせが最適!
鯖缶は、骨まで柔らかく食べられるように加工されているため、通常の鯖と比べてカルシウム含有量が多くなっています。さらに、鯖に含まれるビタミンDは、このカルシウムの吸収を促進する重要な栄養素として知られています。鯖缶にレモン果汁を加えることで、さらなる相乗効果が期待できます。
「レモン果汁に含まれるクエン酸はカルシウムのイオン化を促進して吸収しやすくする『キレート作用』を持っています。レモンは果物の中でもクエン酸含有量がトップクラス。ですから、カルシウムを多く含む食品などと一緒にレモンを取りいれるといったひと工夫をすることで、より効果的に摂取できます」
また、鯖缶の魅力はカルシウムだけではありません。DHAやEPAといった、身体に良い脂肪酸も含まれており、一石二鳥の効果があります。
レモンにはこんな効果も!
レモンにはお魚独特の臭み成分をやわらげる働きがあります。これは、市販のレモン果汁でも十分効果が期待できます。特に鯖缶の水煮や味噌煮にレモン汁をかけると、臭みが消えるだけでなく、味もさっぱりと引き立ちます。
レモンには抗酸化作用のあるビタミンCも豊富に含まれており、身体にとって重要な働きを持っています。
「ビタミンCはコラーゲンの生成を促すという働きを持っています。コラーゲンはたんぱく質なので、腸から吸収される時にはアミノ酸にまで細かく分解されてとりこまれますが、その時にビタミンCを摂っておくと、体内でアミノ酸からコラーゲンが作られるように誘導してくれるのです。肌の健康を底上げするためにも、レモンのビタミンCを積極的に摂るといいでしょう。骨の半分はコラーゲンでできているので、骨の健康にも役立ちます。ビタミンCは加熱に弱い特性を持つので、最後にかけるといった使い方がおすすめです」
丈夫な骨を作るポイントは、骨形成のオステオカルシン
骨がもろくなることを防ぐためには、「適度な運動」「適度に日光を浴びて皮膚に紫外線照射」「十分なカルシウムの摂取」が不可欠だと、中山先生。
「ただし、暑さで外に出るのが億劫な方も多いのではないでしょうか。そこで家庭内でできる運動をしましょう。骨は重力の負荷がかかることと振動を与えてあげることで丈夫になっていくという性質を持っているので、骨の健康にいいのはジャンプすることです。お子さんや若い人だったら、手軽に自宅の前でできる『なわとび』がおすすめです。そして、体力に自信のない人や高齢者でも家の中で簡単にできるのが、つま先立ちでかかとを上げた後に床にドスンと落とす『かかと落とし』と呼ばれる運動。ドスンと振動を与えることで、骨の形成に関わるオステオカルシンというホルモン物質が効果的に分泌されます」
教えてくれたのは…中山 久德 (なかやま ひさのり)先生
骨粗鬆症学会認定医 そしがや大蔵クリニック 院長
国立山形大学医学部卒業後、東京大学医学部アレルギーリウマチ内科に入局。2012年4月、世田谷区砧にて『そしがや大蔵クリニック』を開院。リウマチ内科医として、関節リウマチ・膠原病・骨粗鬆症の診療に従事。全身疾患の臨床経験を生かし身体の全般についても診察。テレビ、雑誌などでも活躍。
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