漫画『メンタル強め美女白川さん』に学ぶ、「私は私、可愛く強く！」生きるためのヒント

メンタル強め美女白川さん誕生秘話

-『メンタル強め美女白川さん』は、Twitterからはじまったコミックだと伺っています。現在第6巻まで刊行し、全冊重版しているという驚異的な人気ですが、そのことについて、どう受け止められていますか？

獅子さん(以下 敬称略): 本当にありがたいことだなと、ひたすら感謝するばかりです。この漫画は元々、私が趣味として描きはじめたものなんです。そのため、読者の皆様からの応援や「書籍化希望」というお声をいただけなければ、1巻を出版することも不可能だった作品です。

- 読者の方から「書籍化希望」で、出版に至ったんですね。

獅子: はい。ですから、読者の皆様お一人お一人に支えられていることで、この漫画を描き続けていられるのだと強く実感しています。

- そもそも『メンタル強め美女白川さん』は、どのようにして誕生したのでしょうか？

獅子: 白川さんという主人公が誕生した理由としては、「私が持っていないものを持っている、メンタルの強い主人公を描いてみたい」という思いが一番大きかったと思います。私は昔から漫画家を目指していたのですが、女性が楽しんでいる姿を描くことが特に好きでした。そのため、女性たちの生活や、「あるある」などを詰め込んだ、女子会のような楽しい漫画を描きたい！と思ったことが、この漫画を描きはじめたきっかけだと思います。

- 確かに、女子会のような楽しい雰囲気に惹かれている読者の方は、多いかもしれませんね！前々から気になっていたのですが、白川さんにはモデルはいるのでしょうか？

獅子:特定のモデルはいません。けれど、個人的に松田聖子さんの「強くて可愛い」多幸感オーラにとても憧れがあるので、その思いが白川さんに反映されている部分もあるかもしれません。

- 松田聖子さん！そう聞くと、白川さんが松田聖子さんに見えてきます。

獅子: また、白川さんの「イメージ」ということであれば、私は画家の中原淳一さんや、イラストレーターの内藤ルネさんに強い影響を受けているんです。「ステキなパワーを持ったイキイキとした女性を、私も漫画で描いてみたい！」という思いも原動力になっていたと思います。

- 中原先生も、内藤先生も、ステキなパワーが画から感じられるイキイキとした女性をたくさん描かれていますよね。もちろん獅子さんの画からも、それを強く感じます！実際、白川さんのようにどんなことに対しても前向きで、イキイキとした姿にはとても憧れがあります。一方で、白川さんのようになるには、相当な努力や苦労が要るような気もします...獅子さんが白川さんを描く上で、努力されていること、苦労することはありますか？

獅子: 「より多くの方々に面白く読んでいただける漫画を描くには、どうしたらいいだろうか」ということを日々、深く考えるようになりました。ただこれは、個人的には苦労や努力という感覚よりも、「読者の皆様に楽しんでもらいたい、『これは私のための物語だ』と感じてもらいたい」という感覚のほうが強いかもしれません。また、新キャラを登場させる際には、担当編集者さんたちと非常に綿密な作戦会議をしています！長い時間をかけて、設定や構想を練る分、大変ではありますが、その後の達成感や喜びも大きいです。

- 白川さん以外の登場人物にはモデルはいるのでしょうか？

獅子: 白川さんと同じく、特定のモデルはいません。それぞれの登場人物の長所を魅力的に描けるように、歴代の担当編集者さんたちに相談に乗っていただき、大変助けられました。

- 登場人物の多くが、とてもリアルに描かれていると思っていました。「こういう人いる！」というように。てっきりモデルがいるのかと思っていました。

獅子: 私自身も、それぞれの登場人物の生活や悩みをリアルに描きたいという気持ちが強くあります。今を生きている皆さんの生活の変化や考え方、価値観についてアンテナを張ったり、様々なインタビュー記事やドキュメンタリーなどをチェックすることも多いです。

- 獅子先生を投影させた、あるいは参考にした登場人物はいらっしゃいますか？

獅子: 私に一番近い登場人物は、町田さんだと思います。内向的な部分が、私の「素」の状態に近いような気がします（笑）ただ、昔からの友人に対しては、梅本さんのように本音で豪快に話すことが多いですし、心配事がある時には、林檎ちゃんのように「どうしよう…！」と慌てることも多いです（笑）

獅子先生&白川さん流 自己肯定感のあげ方

- 特にヨガをしている人の中には、他人と比較せず自分と向き合うことを大切にされている方、あるいはそうなりたい方が多くいらっしゃいます。そのため、白川さんの「私は私」という、我が道をいく姿に共感されるのではないかと思っています。一方でSNSがこれだけ勢いのある現代では、無意識に自分と他人を比べてしまうことも決して珍しくありません。そのため、「私は私」のマインドを保ち続けるのは簡単ではないかと…白川さんのようなメンタル強めのマインドを持ちつづけるヒントを教えて下さい！

獅子: 逆説的なことになってしまうのですが、「メンタルが弱くてもいい、『私は私』と思えずに落ち込んでしまう日があってもいい」と、自分自身にOKを出してあげることも、自己肯定に繋がるのではないかと思います。

- 確かに、ありのままの自分を認めて受け入れることも自己肯定感ですよね。

獅子: また、漫画の中で、ついつい人と自分を比べてしまう倉橋くんに対して、白川さんが伝えた言葉があります。「私はね 本当の強さって"誰にも負けない"ってことじゃなくて 誰かに負けたとしても"自分のことが好き"って言えることだと思う」（5巻P90）

- この言葉、すごくグッと胸に刺さりました！

獅子: 倉橋くんと同じく、私自身も白川さんのように強いメンタルの持ち主ではないので、この漫画を描くことを通じて、そんな自分を少しずつ肯定していければいいなと感じています。

- 物語の中にはセルフケアやご自愛テクニックをテーマにされているものも多くありますが、獅子先生ご自身のセルフケアやご自愛テクニックを教えて下さい。

獅子: 疲れた時や、落ち込むことがあった時には、とにかくたくさん寝て、回復を待つことが多いです（笑）家でのんびりすることが好きなので、YouTubeで動物の可愛い動画を観て癒やされたり、漫画や本を読む時間もとても大切です。

- 睡眠は大事ですよね。自分の好きなことに時間を費やすのは、自分のことを後回しににしやすい現代人の多くの方にとって、盲点なような気がします。

獅子: また、私はアナログの手帳を使っているのですが、忙しい1日を乗り切った時には自分を褒めるために、日記風に「頑張った…！」と一言だけ書き残したりしています（笑）原稿の〆切前には、「無事に終わったらパフェを食べに行こう！」など、自分へのご褒美を想像して頑張ることもよくあります！

獅子先生お気に入りのエピソードは…？

- 毎回テーマはどこからインスピレーションを得ているのでしょうか？

獅子: 私自身が実際に体験したことをそのままエピソードとして使うことはありません。「こういうことがあって嬉しかったな、悲しかったな」というような、過去に抱いた「感情」を活かして、お話を膨らませていくことが多いです。また、普段からよく、「こういうことが起きたら、私はどう思うかな？他の人たちだったら、どう思うかな？」というような空想をしています。

- 空想からくることもあるんですね！毎回、本当にリアルにありそうなお話ばかりなので、てっきり実話をベースにされているのかと思っていました。

獅子: 読者の皆様に「このキャラの気持ち、わかる」と言っていただけた時は、本当に嬉しく感じます。今後もより一層、共感していただけるようなテーマを見つけていきたいです。

- 獅子先生のお好きなエピソードを教えてください。

獅子: 本当にたくさんあるのですが…中でも特別な思いがあるのは、「クリスマスケーキと白川さん」（1巻P75）でしょうか。昔の風潮ではありますが、女性の結婚年齢をクリスマスケーキの売れ行きに例える時代があったことを、現代の私なりの視点で描いたお話です。「結婚しようがしまいが お母さんになろうがなるまいが 私の幸せは私が決めるの」というモノローグに思い入れがあります。

- 読者の方から反響の多かったエピソードはありますか？

獅子: 一番多く反響をいただいたのは、「町田さんの学生時代」（1巻P64）だと思います。自分の容姿についてジャッジされ、傷付いてきた過去を持つ町田さんのお話です。そんな町田さんに対して、「だって そんな失礼な人間の美意識とか信用するに値しなくないですか？」と伝えた白川さんのセリフが好きだと言ってくださる方も多く、とてもありがたく思っています。

- 私も、このエピソードは大好きです！

獅子: 容姿はもちろん、パーソナリティや能力を否定する言葉というのは、人の心を深く傷付けてしまいますよね。だからこそ、様々な種類の心ない言葉に傷付いてきた方たちにとって、癒やしのお守りになるような漫画が描きたい、という気持ちから生まれたお話です。

白川さん達を通して世の女性に伝えたいメッセージ

- 本作を描いていて「良かったな」と思う時はどんな時でしょうか？

獅子: 読者の皆様からご感想をいただいた時です。SNSでのご感想はもちろん、直筆のお手紙をいただけることも本当に嬉しくて、今までにいただいたお手紙は全て可愛い箱に入れて、大切に保管しています。また、新刊の単行本作業を終えた時にも、「描いてきてよかった…！」と心から思います。それから発売日までの間、「早く読者の皆様に新刊をお届けしたいなぁ…楽しんでいただけるといいなぁ」というドキドキワクワクの日々を毎回過ごしています。

- 逆に、「辛い…」「描けない…」と思う時はありますか？

獅子: ネーム（お話作り）で煮詰まってしまった時には、「どうしよう…」と不安に思うことはあります（笑）そういう時には、担当編集者さんに「AかBで迷ってます」「こういう懸念点があるのですが、どう思いますか？」と相談して、客観的なご意見をいただくことも多いです。そんなふうに試行錯誤しながらの毎日ですが、やっぱり基本的には漫画を描くことが好きなのだと思います。

- 獅子先生が、物語を描く上で大切にしていることを教えて下さい。

獅子: 「人間の価値観や趣味嗜好は千差万別なんだ」ということを、日頃から意識するようにしています。誰だって、自分の価値観や好きなものを否定されたら悲しいですよね。なので、否定よりも肯定のパワーを込めた優しい漫画にしたいな、という思いを初期からずっと抱き続けています。

- 白川さん達を通して世の女性に伝えたいメッセージとは、どんなことでしょうか？

獅子: 昔に比べて女性の社会進出が増えたことで、人生の選択肢が広がった分、悩みや迷いを抱える現代女性も多いのではないかと思います。6巻の描き下ろし長編漫画では、育休中の先輩社員・水沢さんと、結婚や出産に興味を持てない谷口さん、異なる二人の思いと、小さな交流を描きました。「様々な女性たちの価値観や人生の選択」を肯定したいという思いが私にあったからです。私たちがそれぞれ、悩みや迷いを抱えながらでも生きていることは素晴らしいことだと思うし、これからも、女性たちがお互いを褒め合いたくなるような漫画を目指して、描き続けていきたいです。

- 最後に、読者の方にメッセージをお願いします！

『メンタル強め美女白川さん』に出会ってくださり、本当にありがとうございます。この漫画が、あなたの日常にとって「ちょっとした楽しみ」になったとしたら、漫画家としてこんなに嬉しいことはありません。これからもどうぞよろしくお願いいたします！

【プロフィール】獅子

獅子座生まれの漫画家。X(旧Twitter)で連載中の「メンタル強め美女白川さん」が大反響を呼び、2022年にはテレビ東京系でテレビドラマ化された。単行本は累計100万部を突破。X(旧Twitter)フォロワー15万人を突破。青りんご味とヨーグルト味のお菓子が好き。
X(旧Twitter): @sisi0ccc
Instagram @sisi0ccc