ストレスフルな社会を生きる私たちはストレスに正しく対処できている?専門家が教える、正しい対処法
日常生活で遭遇するストレス。、あなたはきちんと対処できていますか?
コーピングとは?
コーピングとは、ストレスに対処するための方法のことです。日常生活で遭遇するさまざまなストレスに対して、どのように対処するか人によって異なりますが、効果的なコーピング方法を複数持つことはメンタルヘルスを維持する上で重要になります。
コーピングの方法は大きく分けて2つあります。
1. 問題焦点型コーピング
ストレスとなっている問題そのものを解決しようとするアプローチです。具体的な行動を起こして問題を解消しようとします。
2. 感情焦点型コーピング
ストレスによって引き起こされる感情を対処しようとするアプローチです。例えば、リラクゼーション、趣味に没頭する、友人に愚痴を言うなどの方法があります。
適切なコーピングとは?
コーピングには様々な方法があります。その中でも、「適切なコーピング」とはどのようなものでしょうか。認知行動療法やスキーマ療法に関する書籍を多く執筆されている心理師の伊藤絵美先生は、著書の中で「コーピングというのは、わかっていてやる自分助け」「良し悪しはまずおいて、わかっていてやる自分助けは全部コーピングとして認定する」とどのような内容でもコーピングになると述べています。そして、良いコーピングか判断するポイントは、以下とのことです。
1. 効果があるか
自分にとって効果があることが重要です。さらに、短期的な効果と長期的な効果の両方を確認するのが大切だと言います。その場で気持ちがスッキリしたり、落ち着いたりしても、長期的にはマイナスのものもあります。例えば、甘いものをドカ食いし、その場は満足しても、後から強い後悔をしたり、気持ち悪くて寝込んだり、ドカ食いする自分が嫌になるのでは長期的に効果的ではないと言えます。
2. コストがかかるか
効果があってもコストがかかるものは良いコーピングとは言えません。例えば、お金や時間がとてもかかる、仕事や信頼を失う、人間関係に影響がある。そういったものはストレスが解消されても、失うものが大きすぎて、新たなストレスを生んでしまいます。
自分を傷つける行為はコーピングなのか?
自分を傷つける行為を、自分を助けるためにやっている場合はコーピングの一種になり得ます。例えば、伊藤先生は、著書によると、「つらい自分を救いたいから死ぬことが頭に浮かんでいるんだよね」と自殺をコーピングの一種として認めた上で、クライエントに対して「自殺は効果があるか分からないし、命をかけるのでコスト的にも見合わない。だから、他の検証できるコーピングをたくさん探そう」といった内容を伝えているそうです。自分を傷つける行為は、身体や心を傷つけるため(やっていると自己肯定感等が下がる場合もある)、多大なコストがかかると言えます。さらに後から傷を消そうとする場合、お金や時間のコストがかかります。そのため、適切なコーピングとは言えないでしょう。
コーピングをするということは、「自分を助けたい」という思い、「つらさから抜け出したい」という思いがあるということです。私たちは、極度のストレス状況では視野が狭くなり、コーピングに対しても、「この方法しかない」と考えやすくなります。頭の中に他のコーピングが浮かばなくても、よくよく探してみると見つかるものです。複数人で考えれば、コーピングのアイディアは何倍にもなります。
自分を傷つけることが頭をよぎる場合は、一人で抱えずに、相談できる人を探してみましょう。特に心の問題については、担当者との相性がありますので、1度の相談で諦めずに何度か相談してみることも大切です。もし自分に合うカウンセラーが見つかれば、それは今後の人生において大きなコーピングになるかもしれません。
相談先
厚生労働省のホームページには、様々な悩み相談窓口がまとまっています。ご参考にしてください。
参考資料:伊藤絵美の認知行動療法入門講義 上巻(伊藤絵美・著 矯正協会・刊)
AUTHOR
石上友梨
大学・大学院と心理学を学び、心理職公務員として経験を積む中で、身体にもアプローチする方法を取り入れたいと思い、ヨガや瞑想を学ぶため留学。帰国後は、医療機関、教育機関等で発達障害や愛着障害の方を中心に認知行動療法やスキーマ療法等のカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの主催、ライターとして活動している。著書に『仕事・人間関係がラクになる「生きづらさの根っこ」の癒し方: セルフ・コンパッション42のワーク』(大和出版)がある。
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