野菜不足は野菜ジュースや果物で補えるのか?管理栄養士が教える「野菜嫌い」を克服するための工夫
現代人に不足しがちな野菜。野菜嫌いの人や、外食や出張が続くケースでは、野菜不足はさらに深刻になってしまいます。野菜には、からだの調子を整えるビタミンやミネラル、そして腸を整える食物繊維が豊富です。では、野菜を食べないと栄養バランスを整えることはできないのでしょうか?
野菜不足は「野菜ジュース」で補えるのか?
野菜ジュースで、野菜不足を「完全に」補うことはできません。
作ったばかりのスムージーであれば、野菜同様、食物繊維やビタミン、ミネラル、ポリフェノール、酵素などの摂取が期待できるかもしれません。ただし野菜不足になりやすい人にとって、そもそもスムージーを作るハードルは高いでしょう。ここで検討すべきは、市販の野菜ジュースについてです。
手軽に野菜を摂取できる便利な飲み物ですが、野菜をそのまま食べる場合と比べて、いくつかの栄養素が損失してしまうことがあります。何よりも顕著なのが、食物繊維です。食物繊維には糖質の吸収を遅らせ、血糖値の急上昇を防ぐ働きがあります。食物繊維がほとんど含まれない野菜ジュースは、意外と糖質量が多いものもあります。飲み過ぎることで、肥満や生活習慣病のリスクを高める可能性があるでしょう。
ただし、商品によってはビタミン類やカリウム、リコピンなどが摂取できたり、糖質量を抑えたものもあります。商品によって様々ですので、食品表示を確認して必要な栄養素が補えるかどうかチェックしましょう。
野菜不足は「果物」で補えるのか?
果物で、野菜不足を「完全」に補うことはできません。
野菜不足によるビタミンC、カリウム、食物繊維は、果物でも補うことができます。柑橘やベリー類に豊富なビタミンC、メロンやスイカ、キウイ、バナナなどに豊富なカリウム、バナナやキウイには食物繊維も豊富です。
ただし、果物だけではビタミンB群・E、カルシウム、鉄などは補いづらいでしょう。
では、どうすればいいのでしょうか?
ビタミンB群・E
いずれもブロッコリーやほうれん草などの葉野菜に豊富なビタミンです。
食べものをエネルギーに変えるために欠かせないビタミンB群は、8種類のビタミンから構成されます。相互作用しあいながら働いており、まとめて摂取することで効率的に機能します。一方、ビタミンEには強い抗酸化作用があり、細胞膜の損傷を防ぎ、老化防止に効果があります。
野菜が苦手な方や、野菜が食べれない環境下では、納豆や豆腐のような大豆製品からビタミンB群・Eを補いましょう。またサプリメントなら、手軽にチャージできます。
カルシウム、鉄
骨の材料であるカルシウムと、血液の材料である鉄。いずれも現代人が不足しやすいミネラルです。
水分が除去されて同じ重量の果物と比べ、栄養素が凝縮されているドライフルーツ。実はカルシウムや鉄の供給源です。ただしドライフルーツで、必要量のカルシウムと鉄を摂るためには、糖質の過剰摂取になりかねません。果物には野菜よりも糖質が多く、とくに果糖の過剰摂取は、肥満や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高める可能性があります。
カルシウムは乳製品や小魚に、鉄は肉や魚、卵などに豊富です。
海藻やきのこ、豆類なども組み合わせて、ビタミンやミネラルを補いましょう。
「野菜嫌い」を克服するための工夫
このように、野菜の栄養素は他の食品で補うことも可能です。ただし、野菜を食べた方が栄養バランスは簡単に整います。野菜が苦手な人は、以下のような工夫で野菜嫌いを克服してみませんか?
旬の野菜を食べる
昔、畑でとれたての野菜を食べました。自身のサラダ嫌いは、おいしい野菜を食べていなかっただけなのだと気づかされた瞬間でした。最近では、スーパーでも農家直送野菜が購入しやすくなりました。栄養もおいしさも満点の旬野菜を選ぶことは、野菜嫌い克服の近道かもしれません。
好きな野菜を見つける
いろいろな種類の野菜を試してみて、自分が好きな野菜を見つけましょう。例えば、甘くて食べやすいかぼちゃ。野菜不足で、欠乏するビタミンEが補えます。(分類は果物ですが)アボカドのサラダもおすすめです。きのこや海藻類には、ビタミンB群が豊富に含まれています。
調理方法を変える:
生野菜が苦手な人は、茹でたり、炒めたり、煮たりして、食べやすいよう調理方法を見つけてみましょう。調理によっては食べやすくなるだけではなく、栄養価もアップします。ビタミンB群やCは水に溶けやすいので、流れ出た水溶性ビタミンごと食べられるスープ料理などがおすすめです。ビタミンA・D・Eは脂溶性なので、油で炒めると吸収率がアップします。どちらも効率的に摂りたい人は、夏野菜たっぷりのミネストローネスープを。仕上げにオリーブオイルを垂らすことで、水溶性のビタミンも脂溶性のビタミンも、効率的に摂取できます。
いかがでしたか? 野菜の栄養を果物で完全に代用することはできません。果物でも補えない栄養素は、肉や魚のほか、海藻や豆、ナッツなどを組み合わせることで補うことができます。ただし野菜を食べれば、もっと簡単に栄養バランスは整います。自分に合った方法で、おいしく、無理なく続けられるダイエットを!
AUTHOR
石松佑梨
サッカー日本代表選手をはじめ、世界で活躍するトップアスリートたちの専属管理栄養士として従事。のべ2万人以上に提供してきた「頑張らない食トレ」を武器に、近年は企業の健康経営や地域創生も展開する。幼い頃から「おいしい」への執着心が人一倍強く、おいしく健康に食べるための「ずるい栄養学」で、誰もがおいしく食べて健康になれる社会を目指している。著書に『過去最高のコンディションが続く 最強のパーソナルカレー』(かんき出版)がある。
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