ひざの痛みを引き起こす変形性膝関節症の原因、症状とひざをいたわる生活の送り方|薬剤師が解説
中高年のひざの痛みの多くは「変形性膝関節症」によるもの。痛みを改善するには、ひざをいたわる生活を送るとともにコンドロイチンやグルコサミンの利用も効果的です。また、市販の湿布薬(ハップ剤)を利用するのもよいでしょう。この記事では、変形性膝関節症について解説します。
変形性膝関節症とは?
ひざの関節は大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の接する部分。それぞれの骨の先端は関節軟骨という軟らかい組織で覆われ、骨が受ける衝撃を吸収したり、ひざの動きを滑らかにする役割をしています。また、2つの骨のすき間にある半月板も衝撃を和らげるクッションの役割をしています。
変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)は、半月板に亀裂が生じたり、関節軟骨がすり減って炎症を起こす病気です。年齢を重ね、長年のひざへの負担が大きくなることで発症しやすくなります。
変形性膝関節症の症状
通常、変形性膝関節症は、関節軟骨や半月板への小さな傷から始まり、何年もかけて徐々に進行します。進行度合いは前期、初期、進行期、末期の4段階に分類され、次のような症状が起こります。
痛み
軟骨がすり減っても、軟骨自体には神経がないため、痛みは生じないが、軟骨がなくなり、骨が露出すると骨の神経を刺激し痛くなる。
曲がらない・伸びない
関節軟骨や半月板がすり減ると、ひざがこわばり、スムーズに動かなくなる。症状の進行に伴い、ひざの可動域が狭くなる。
水がたまる
関節内は滑膜(関節を包む膜)から分泌される関節液で満たされ、ひざの動きをスムーズにしたり関節軟骨に栄養を与えたりする。滑膜に炎症が起こると関節液が過剰に分泌され水がたまる。
早めに気づくためのポイント
ひざの痛みを「年のせいだから」とあきらめている人もいますが、一度すり減った関節軟骨は元に戻りにくいため、放っておくと徐々に悪化します。快適な毎日を送るためにはなるべく早い時期に治療をはじめることが大切です。次の項目にあてはまる場合は、変形性膝関節症が疑われます。
<チェックリスト>
□ つまずきやすい
□ 正座ができない
□ 動き始めにひざが痛み、しばらく歩くと痛みがなくなる
□ ひざを曲げ伸ばしするとき、きしむ音がする
□ ひざを曲げたときに違和感やひっかかる感じがする
□ 座って足を伸ばそうとするとひざの裏側が床につかない(真っすぐ伸びない)
□ 座って足を伸ばすと伸び方に左右の差がある
□ ひざのお皿の横のくぼみがなくなる
コンドロイチン・グルコサミンって何?
ひざの関節軟骨は3~5mmの厚さで、網目状のコラーゲン組織にプロテオグリカンという物質や軟骨細胞が絡みついてできています。プロテオグリカンの合成の際、その材料となるのがコンドロイチンです。コンドロイチンは体内で生成されますが、加齢に伴って減少していきます。
コンドロイチンは、すり減った軟骨に水分を引き寄せて保水性、弾力性を与え、傷ついた軟骨を修復し再生させる効果があります。
また、グルコサミンは、関節部分の細胞の新陳代謝を活発にし、軟骨のクッションに当たる部分を修復する働きがあり、軟骨の摩擦を抑制し、傷ついた軟骨を修復し再生を促す効果があります。歩行の際の膝の痛みやだるさも緩和し、スムーズに歩けるよう関節の動きをサポートします。
ひざをいたわる生活を送る
変形性膝関節症は生活習慣を見直すことによって悪化を防ぎ、痛みを和らげることができる病気です。まず、ひざに大きな負担となる肥満を解消しましょう。無理な食事制限をするのではなく、暴飲暴食や偏食を避け、栄養バランスのよい食事を心がけます。筋肉や骨をつくるタンパク質やカルシウムは不足しないよう注意してください。
また、ひざを大きく曲げると負担がかかりますから、正座や和式トイレなどはなるべく避けましょう。ひざが冷えると症状が悪化するので、クーラーの風などで冷やさないように。ひざを温めて血行を促進するためには入浴や温シップなどが有効です。また、ひざの痛みを和らげるポイントは次の通り。
アイシング
ビニール袋に氷と水を入れ、タオルなどでくるんで当て、ひざの内側まで冷やして炎症を抑えます。1回10~15分冷やし、5~10分休んでから数回繰り返しましょう。
市販の湿布薬を利用
湿布薬には温感タイプと冷感タイプがあります。急性の痛みや炎症が起きている場合は、冷感タイプを使い患部を冷やします。症状が落ち着いてきたら、温感タイプを使用し患部の血行を促進するとよいでしょう。
杖を使う
ひざの負担を軽減します。痛みが和らいだ後は自然に杖を使わずに済むようになります。
サポーターの着用
太ももの筋肉が弱くなってひざが安定しないときに有効です。軽い圧迫でひざにかかる負担を減らします。
まとめ
変形性質関節症は、加齢などによってひざの関節軟骨がすり減ることによって起こります。ひざをいたわる生活を送るとともに、コンドロイチンやグルコサミンなどを利用することで発症を予防したり、症状の悪化を防いだりすることができます。
また、炎症が起きている場合は、冷感タイプの湿布薬を利用し患部を冷やし、症状が落ち着いたら温感タイプの湿布を利用し血行を促進するとよいでしょう。ひざの痛みを年のせいだからとあきらめず、早い時期から治療を始めることが大切です。
AUTHOR
小笠原まさひろ
東京薬科大学大学院 博士課程修了(薬剤師・薬学博士) 理化学研究所、城西大学薬学部、大手製薬会社、朝日カルチャーセンターなどで勤務した後、医療分野専門の「医療ライター」として活動。ライター歴9年。病気や疾患の解説、予防・治療法、健康の維持増進、医薬品(医療用・OTC、栄養、漢方(中医学)、薬機法関連、先端医療など幅広く記事を執筆。専門的な内容でも一般の人に分かりやすく、役に立つ医療情報を生活者目線で提供することをモットーにしており、“いつもあなたの健康のそばにいる” そんな薬剤師でありたいと考えている。
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