「大切なのは、自分がどうしたいか」40歳ロリータモデル・青木美沙子さんが語る、老いとの向き合い方

 青木美沙子さん
青木美沙子さんよりご提供

「○歳までにこうあるべき」「●歳なのに恥ずかしい」など、年齢のしがらみに悩んだことはありませんか?『まっすぐロリータ道』(光文社)を上梓した、ロリータモデルで正看護師の青木美沙子さんは、現在40歳。かわいらしい姿だけでなく「自分の好き」を軸にした生き方がロリータファッションを好む人以外もエンパワーしています。ですが実は自信がなかったり、40歳になって「老い」について悩むこともあるそうです。詳しくお話を伺いました。

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ロリータと看護師。二つのお仕事の相乗効果

——現在はロリータ関連のお仕事だけでも生活できるとのことですが、訪問看護師のお仕事も月1回程度続けていらっしゃるのですよね。書籍ではコロナ禍でお仕事が減ったときに訪問看護のお仕事があったことのメリットについて書かれていますが、経済的な理由以外にメリットを感じていますか。

日本では“永久就職”のように1つの会社にずっと居続けることを「美」とする風潮も未だに強いですが、私は全く違う仕事を経験することで、自分にとって視野が広がる感覚を得ました。ロリータをしている自分と看護師をしている自分は全然別物です。違う世界に入り込めるので気分転換にもなります。

看護師の場合は技術が伴う仕事でもあるので、ブランクがあると戻りにくいこともあって、技術的な面でも継続しておきたいという思いもあります。

——どのような面で視野が広がったと感じますか。

看護師の場合は患者さんがメインで自分は裏方で支えるようなイメージですが、モデルは自分が前面に出て夢を与えなきゃいけない立場です。共通するのは人に癒しを与えたり、ハッピーな気持ちにさせたりする部分で、ファンの方と接するときに看護師の経験が活きることもありました。

一方、モデルの仕事でチヤホヤされると天狗になってしまう恐れも感じていて、看護師の仕事が謙虚な自分を忘れないでいさせてくれます。場面は違っても裏方の大変さも経験しているので、ロリータのお仕事で出会う、裏方のお仕事の方の気持ちを想像しやすくなったり、自然と感謝の気持ちが湧いてきたりもしました。

青木美沙子さん
青木美沙子さんよりご提供

自信のスイッチはロリータ服

——「自分に自信がない」とお話していたのが意外でした。

あるように見えているかもしれませんが、実はなくて。元々人前に出る仕事がすごく好きというわけでもなく、時代の流れによってロリータのお仕事が続けてこられた部分もあるんですよね。

『セブンルール』(フジテレビ系)に出演した後、35歳頃から「自立した女性」「はみ出す力」といったテーマで取材していただくことも増えたので「強い女性」と見られることも多いのですが、別にそんなこともなくて、悩むこともあります。

アンチから「ロリータババア」と言われることも結構あるのですが、アンチもそんなに私に興味があるわけでなくて、1時間後には別のことをしているだろうと考えて、あまり深く受け止めないようにはしています。

最近はありがたいことにたくさんお仕事をいただき、コラボ商品などたくさん宣伝することもあって目の前のことでいっぱいで、自信があるかという問題ではない部分もあります。

——25歳の頃のようにロリータを続けるか悩んでいた頃は、どのように自信を持つようにしていたのですか?

私は自分に自信はなくても、やはりロリータを着ることで自信を持てるんですよね。偏見を持たれがちなファッションではありますが、自分の戦闘服でもあるので、ロリータ服を着ることで、スイッチが入る感覚があります。

——好きなものを着ているときに、誹謗中傷を向けられ傷つくこともあると思うのですが、気持ちの切り替えはどうされていたのですか?

嫌な気持ちにはなるのですが、どちらかというと人からどう見られるかは気にならなくて。SNS社会でもあるので、人の目は気になるとは思うのですが、やはり自分が何をしたいかの方が大切ですし、もっと自分にわがままでいいと思います。「自分がどうしたいか」を軸に考えると、人からの意見はだんだん気にならなくなるのではないかと。

自信のスイッチを入れるものが、私の場合はロリータ服でしたが、好きなものを身につけたり、持ち歩いたり、好きなものを食べたりでもいいでしょうし、自分なりの緊張を解きほぐせるものがあるといいですよね。

年を取ることは怖くない

——ご自身のYouTubeチャンネルでは、40歳になってからのご自身の変化についてもお話されていますね。

私のことを「年を取らない」など、宇宙人だと思っているようなことを言われることもあるのですが、40歳なので白髪もありますし「老い」について悩むこともあります。自分の老いについて、隠したいことをあえて発信していくことで、年をとるのは怖くないという安心材料になっていただけたらと思います。

40歳で区切られる世の中の風潮を感じつつも、年を取ることを悲しみたくはないと思います。ロリータのお仕事で海外に行くことも多いのですが、こんなに若いことを良しとしているのは日本くらいな気がします。特に女性に対しては若いことが高く評価されますよね。

でもそれは日本特有の考えであって、海外に行くと年齢についてとやかく言われることはほとんどないです。「年を取っているからこそ人生経験が豊富」という側面もあるので、老いることを恐れる必要はないと思います。

ロリータは仕事に関しては求められないと続けられないのでわかりませんが、プライベートで着ることについては、自分が好きであれば「何歳まで」と決めずに、好きなファッションを続けたいです。

——恋愛や結婚に関しては現在はどのようにお考えですか。

35歳頃から「結婚しなければいけない」という焦りがあったのですが、40歳になったら達観して「もう少し自由に生きよう」と思うようになりました。特に女性は5歳刻みくらいで「○歳までにこうしなければ」という謎のルールがあると感じるのですが、そういったしがらみは40歳になって取り払われた感覚があります。

40歳になると早めに結婚した友人では離婚を経験している子もいて。結婚イコール一生一緒にいるわけでも、絶対に幸せになれるというわけでもないことは、色々な人生を歩んできた友人たちを見て思うことです。

結婚していなかったり、子どもを産んでいなかったりする女性に対して世の中の風当たりが強く、“不完全な女性”という見られ方をすることは抵抗感があります。「結婚も出産も色々な選択肢があっていい」という世の中になってほしいですね。

——好きなことを続ける秘訣について教えていただけますか。

とにかく他人に影響されずに、自分が好きだと思うことを貫くことです。「何歳だったらどう思われるか」「他人からどう見られるか」ということを一旦取り払って「自分が好きなのか、続けたいのか」を一度自分に問うことで、方向性が見えてくると思います。

SNSで色々な人を見て、羨ましく思ったり妬んだりすることもあると思いますが、それは置いておいて、自分に正直に向き合ってみる。自分の人生なのだから、人に迷惑をかけなければ自分勝手に生きていいと思いますし、自分本位に人生を考えていけるようになれば、楽しくなると思います。

『まっすぐロリータ道』(光文社)
『まっすぐロリータ道』(光文社)

 

【プロフィール】

青木美沙子さん
青木美沙子さんよりご提供

青木美沙子(あおき・みさこ)

ロリータモデル、正看護師。
外務省よりカワイイ大使に任命され、ロリータファッション代表として文化外交にて20か国30都市歴訪し、ロリータファッション第一人者として活動中。
しまむら、PINK HOUSEなど様々なブランドコラボ、書籍発売などプロデュース業も行う。

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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