「年相応のファッションなんてない」ロリータモデル・青木美沙子さんの「好き」を貫く生き方

 青木美沙子さん
青木美沙子さんよりご提供

「●歳でこういうファッションは恥ずかしい」など、なんとなく存在する年齢の呪縛を感じたことはありませんか?『まっすぐロリータ道』(光文社)を上梓した、ロリータモデルで正看護師の青木美沙子さんは、17歳の頃からモデル活動を始め、40歳の今でも活躍中です。年齢にとらわれずに「好き」を貫く姿や自分軸を大切にした生き方は、ロリータファッションを好む人だけでなく、年齢や「らしさ」の呪縛にかかっている人に勇気を与えています。青木さんの“生き方”についてお話を伺いました。

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年齢にとらわれずに自由にファッションを楽しんでいい

——現在、青木さんは「年相応のファッションなんてない」と発信されていますが、以前は悩んだご経験があったのですよね。

そうですね。ロリータというファッションは、リボンやフリル、ピンクなど少女性を感じるものが多く「若い子が着る」というパブリックイメージがあります。

ある程度の年齢になると「ツインテールをしちゃダメ/ピンクを着ちゃダメ」などという空気が世の中にある中で、特にロリータファッションについては「20歳過ぎたらおばさん、25歳過ぎたら曲がり角」という雰囲気を感じてきました。

25歳を過ぎた頃から「いつまで続けるの?」などと言われることもあって「ロリータを着ていていいのかな」と悩み、年齢を隠したいと思い始めました。

——その後、34歳のときにドキュメンタリー番組『セブンルール』(フジテレビ系)にご出演されたことが転機になったのですよね。

出演にあたって年齢を公表することをお願いされて。それまで年齢非公表にしていたので迷ったのですが、ロリータをもっと知ってもらいたいという思いから公表を決めました。

結果として、ロリータファッションを好む方からもそうでない方からも好意的な反響をいただき、年齢の呪縛に苦しんでいる方がたくさんいらっしゃることにも気づきました。その後は様々なメディアから「女性の生き方」をテーマに取材依頼をいただくことも増えました。

——ずっとロリータモデルをされてきた中で社会の変化を感じますか?

ロリータ自体が年齢がどうかだけでなく、ファッションそのものに偏見を持たれやすいもので、昔から「少し変わった子」「変な人」というレッテルを貼られることは多かったです。

万人に理解されるファッションでないことをわかったうえでロリータを着ていた部分はあったものの、色々とカテゴライズされてきて、ずっと闘ってきました。でも最近は「多様性を尊重しよう」という世の中の流れになっているので「年齢にとらわれずに自由にファッションを楽しんでいい」ということを主張しやすくなったとは思います。

青木美沙子さん
青木美沙子さんよりご提供

他人の目より、自分がどうしたいか

——ロリータファッションは「男ウケが悪い」と言われることもありますが、好きなファッションを楽しむことと「モテ」についてはどのようにお考えでしょうか。

私はロリータファッションを「モテるため」に着ているのではなく、自分が着たいから着ていますし、多くのロリータの人たちは「モテメイク」「モテファッション」などを考えていないと思います。

恋愛に関しても、特に少し前までは「彼氏が好む格好をすることが美学」という価値観が世間では強かったですよね。もちろん「好かれるために可愛くなりたい」「彼の好む髪型にしたい」という思いを否定するわけではありません。

ただ、私はそういう恋愛の仕方じゃなくてもいいんじゃないかなと思っていて、特にロリータファッションは「デートに着てきてほしくないファッション」でランクインするくらいなのでなかなか男性ウケはしにくいのですが、それでもいいと思っています。

ロリータの人は、他人にどう見られるかよりも、「自分がどうかわいいか」「自分がどうロリータ服を着たいか」、もっと大きく言うと「どう生きたいか」というところに主軸を置いて生きている人が多いような気がします。

——年下のロリータさんから「好きな装いをやめたくないけれども、恋愛も諦めたくない」といった相談を受けることはありますか?

そういった相談を受けることはありますが、最終的に決めるのは自分だと思いますので、どちらがいいかということを私は言えないですし、どちらでもいいと思います。

パートナーの好みに合わせることは悪いことではないと思いますし「一緒にいるときは嫌」と言われたら、彼といないときにロリータを楽しむという方法もあります。

私は婚活を経て、自分を否定してまで結婚を目標にしたくないと思い、婚活を卒業しましたが「こうすべき」と意見を押しつけることはしたくないので、人それぞれ臨機応変に考えていただければいいと思います。

——青木さんは書籍で「自分で稼ぐことの大切さ」についてもお話されています。お母様という働く女性のロールモデルがいらっしゃったとのことですが、「男性より稼いだらモテなくなる」などの“女性らしさ”の呪いにかかったことはありませんか。

看護師自体が世間全体で見ると比較的高収入なので、私は女性が経済的に自立することに対しての負のイメージはなかったです。だからといって、働く気のない男性を支えることはしたくないのですが……。

看護師の世界では女性が自立するのは当たり前で、男性に媚びている人は私の周りでは少なかったです。子どもの頃から看護師という仕事への憧れがありつつも、何かしら特技や資格が欲しいと思ったこともあって、私は看護師資格を取得しました。手に職があると安心ですし、特技がなければ勉強して資格を取るのもいいと思います。

何歳からでも好きなファッションを楽しんでほしい

——ロリータファッションは若い方が着ているイメージがありますが、実際はどのような年齢層の方が楽しまれているのでしょうか。

ロリータはお金がかかるので、ある程度経済的に余裕のある25歳から40歳くらいの層が一番多いと感じます。下は10代からでお母様の影響で好きになって一緒に楽しんでいる方や、上は70代の方もいらっしゃいます。

——プチプラブランドでの展開のように、ロリータファッションの第一歩は踏み出しやすくなっているので「着てみたい」という方もいらっしゃると思います。とはいえ、やはり「若い人が着るもの」というイメージもあって、中年以降ですと興味があってもハードルが高いと感じるのですが、挑戦してみたい方に何かメッセージをいただけますか。

最近はファッションセンターしまむらさんでも販売されているように、気軽に手に取ることができますし、多様性が尊重される世の中なので、ぜひ気負うことなく、年齢を気にせず好きなファッションを貫いてほしいですし、楽しんでほしいと思います。

もし外に出る勇気がないのであれば、自宅の中だけで楽しむという方もいますし、今はSNSでお友達も作れて、お友達となら一緒に出かけられるという方もいらっしゃると思うので、お友達とお茶会をして楽しむという方法もあります。

※後編に続きます。

『まっすぐロリータ道』(光文社)
『まっすぐロリータ道』(光文社)

【プロフィール】

青木美沙子さん
青木美沙子さんよりご提供

青木美沙子(あおき・みさこ)

ロリータモデル、正看護師。
外務省よりカワイイ大使に任命され、ロリータファッション代表として文化外交にて20か国30都市歴訪し、ロリータファッション第一人者として活動中。
しまむら、PINK HOUSEなど様々なブランドコラボ、書籍発売などプロデュース業も行う。
 

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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