追悼・ティナ・ターナー、83歳で死去。家庭内暴力に苦しんだ人生と、その功績を振り返る

 追悼・ティナ・ターナー、83歳で死去。家庭内暴力に苦しんだ人生と、その功績を振り返る
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山口華恵
山口華恵
2023-06-04

音楽界のレジェンド、ティナ・ターナーが、2023年5月26日にこの世を去った。ティナはDV(家庭内暴力)サバイバーとしての経験を公に語った最初の著名人のひとりであり、そのオープンな姿勢は画期的だった。彼女の死去後、多くの社会活動家やDV(家庭内暴力)サバイバーたちが彼女に深い敬意を表している。

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死んだように生きた毎日

ティナ・ターナーは1981年、初めて自身の虐待体験を米週刊誌「ピープル」に公表した。その後も自伝やインタビューで、1962年に歌手のアイク・ターナーと結婚後、約16年間にわたる結婚生活で受けた拷問、骨折や屈辱、舞台で彼と共演する前に受けていた暴行について語った。

ティナターナー
(1965年、アイク&ティナ・ターナーのプロモーション用写真)Photo by Michael Ochs Archives/Getty Images

そして2021年に放送された自身のドキュメンタリー番組「Tina(ティナ)」の中で、結婚当時を次のように振り返った。「当時、私は死んだように生きていた。まるでそこに存在しないかのようだった。それでもなんとか生き延び、アイクの元を去り、歩き出した。そして振り返ることはなかった」と述べた。

自らのDV体験を語ることで人々に勇気と希望を与えた

離婚当時、ティナはすでにスターであったが、一層活躍の場を広げ、ロックンロールの女王として称されるようになった。英慈善団体Women's Aid(ウーマンズ・エイド)の最高経営責任者、ファラ・ナジール氏は、「ティナ・ターナーのような成功した女性が、辛い経験を乗り越え、成功と回復を手にした事実を自ら語ったことは、多くの勇気と希望を与えました。有害な関係や束縛からも脱却できることをティナは伝えたかったのです。ティナような偉大なセレブがこのような発言することは、非常に強力なメッセージとなります」と述べた。

ティナターナー
(2019年11月07日、「Tina - The Tina Turner Musical」オープニングナイトの様子)Photo by John Lamparski/Getty Images

人生がうまくいかなくても、進む道を見つけて立ち向かう強さ

ティナ・ターナーが初めて自分の受けた虐待を明らかにしたとき、それは「革命的」なことだったとナジール氏は言う。「当時はまだ社会的に話題にすることが許されなかった。心の内を話せないと感じていた女性たちに声を届けることができたのです。その結果、家庭内暴力は加害者の犯罪であり、サバイバーは罪悪感や恥ずかしさを感じるべきでないということが浸透し始めました」。ティナ・ターナーと友人だった1970年代〜80年代に活躍したグループ、ボニーMの歌手、リズ・ミッチェルは、人生で直面した苦難を克服したスターの勇気を賞賛した。「今日、彼女は多くの女性たちにとって証明のような存在です。人生にはうまくいかないこともあるかもしれませんが、それでもなんとか抜け出し、進む道を見つけることができれば、彼女のように強く立ち向かうことができます。彼女はただ強く立ち続けましたのです」。

ティナの存在が虐待的関係から離れるきっかけに

83歳で亡くなった後、虐待について公の場で勇気ある発言を続けてきたティナ・ターナーの勇気に賞賛の声が高まり、多くのサバイバーたちが、いかにティナが人生にポジティブな影響を与えてくれたかについて語り出した。

ニューヨークに暮らすトリシャ・ジョプソンさんは、Instagramで「胸が張り裂けそうなほど痛みます。ティナは、私が虐待的な関係から離れるきっかけになりました。彼女はエンターテイナー以上の存在でした。彼女は絶対的なインスピレーションを与えてくれたのです」と追悼の言葉を書いている。また、元スパイス・ガールのメンバーとしても知られる歌手のメラニー・ブラウンもまた、家庭内暴力の経験者として体験を語り、ティナを称賛する人々のひとりだ。「ティナは不可能を可能にした。彼女はアイクの元を去り、生き延び、逃げ出し、私のようなサバイバーたち全員に希望を与えた」とメラニーはInstagramに綴った。

ティナ・ターナーが元パートナー、アイクと離婚した1978年以降の成功は誰もが知るところだが、こういった背景を知り、改めて彼女の楽曲を聴くと解放や希望が本当に感じられる。

出典:How Tina Turner inspired domestic violence survivors - but never let abuse define her

 

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山口華恵

山口華恵

翻訳者・ライター。大学卒業後、製薬会社やPR代理店勤務を経て10年間海外(ベルギー・ドイツ・アメリカ)で暮らす。現在は翻訳(仏英日)、ライフスタイルや海外セレブリティに関する記事を執筆するなど、フリーランスとして活動。趣味はヨガとインテリア。



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