泌尿器科・婦人科が解説!更年期女性の2人に1人?腟トラブル「GSM」という病気って?対処法は?

 泌尿器科・婦人科が解説!更年期女性の2人に1人?腟トラブル「GSM」という病気って?対処法は?
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50歳前後になると女性は、更年期などによるホルモンバランスの乱れで、デリケートゾーンにもさまざまなトラブルを抱えるようになってきます。かゆみ、におい、尿もれ・頻尿など…こういった症状は、GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)とされ、海外の文献では、50歳以上の女性の50%前後が該当するといわれています。『女医が教える 潤うからだづくり』(主婦の友社)より、泌尿器科・婦人科の女医がGSMによるトラブル解消&腟の正しいケア方法を一部抜粋紹介します。

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更年期女性の2人に1人?GSMという病気

更年期になると突然ほてりを感じて、汗が出てとまらなくなる、といった症状に悩まされることがあります。これをホットフラッシュと呼びます。それ以外にも、肩こりや不眠などの症状が出てくることがあります。こうした症状は更年期障害と呼ばれています。

更年期障害
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また、これらの症状以外にも更年期になると、腟まわりにトラブルが起きやすくなってくることはご存じでしょうか? これをGSM(ジーエスエム)と呼びます。GSMは、Genitourinary Syndrome of Menopauseの頭文字をとった名称。日本語では、閉経関連泌尿生殖器症候群や、閉経関連尿路性器症候群と呼ばれます。この本では短く、GSMと呼びます。

GSMの症状は、①腟に関する症状、②オシッコに関する症状、③セックスに関する症状の3つです。

まだまだ日本では聞きなれない単語で、医療従事者でも知らない人がいますが、決して新しい病気というわけではありません。昔は、「萎縮性腟炎」という病名で、腟ばかりがクローズアップされていました。しかし、変化が起きているのは腟だけじゃなくて、腟まわり全部だったんだよ、というのが現在のとらえ方になっています。更年期の女性がGSMになってしまう一番の理由は、この時期、女性ホルモンが急に少なくなってしまうから。更年期の症状と同様、女性ホルモンが急に少なくなることで、腟まわりの細胞がびっくりして働きをやめてしまい、陰部にさまざまな困った症状が出てきてしまうのです。GSMかな、と思ったら、専門の医療機関の受診をおすすめしますが、その前に、GSMのそれぞれの症状を知っておきましょう。

セックスだけじゃない!更年期女性の腟まわり事情

潤っていることで十分な働きができていた腟まわりは、更年期になって潤いにくくなることで、さまざまな症状を起こします。それがつまり、GSMの腟やセックスに関する症状なのです。更年期の腟まわりには、どんな変化が起きているのでしょうか。更年期になって、いち早く潤いがなくなる場所は、小しょう陰い ん唇し んとその内側の粘膜です。小陰唇とは、左右にピラピラついている花びらのような薄いでっぱり部分のこと。

乾燥が続くと、小陰唇はすぐに小さく硬くなり、不快感をもたらします。人によってはどんどん小さくなっていって、まわりの皮膚や粘膜に吸収されてなくなってしまうことだってあるんですよ。

小陰唇の乾燥が続くと、陰部全体がわけもなくかゆく感じたり、お風呂上がりにピリピリと痛んだりします。

また、ストッキングなどのピッタリしたものを身に着けると、陰部の違和感が強くなることもあります。さらにセックスのとき、小陰唇やその内側が乾いていると、ペニスの挿入がとても難しくなります。

組織も弱くなっているため、ピストン運動がうまくできなかったり、こすれたあとにひりついたりします。潤滑剤で一時的にしのいでも、乾きやすさは改善せず、セックスの途中やあとで出血することもあります。もう1つ、乾燥が続くことで腟の中にいた、よい菌の数も少なくなります。逆にいやなにおいのする菌が増加し、オリモノが増えたり、陰部全体がくさくなることも。こうなると、必死に洗っても解決しません。このように腟まわりの潤いはとても大切なものなのです。

あれもこれも尿道まわりのしわざ

更年期に起きるのは、腟まわりの変化だけではありません。尿道、つまりオシッコの出口の周辺にも同じような変化が起きています。オシッコが出る場所の医学的な名前は、外が い尿にょう道どう口こうですが、GSMになると、外尿道口だけではなく、そのまわりの粘膜も影響を受けるので、この本ではわかりやすく、「尿道まわり」と呼ぶことにします。

GSMになると、尿道まわりの粘膜もすべて乾いて、弱ってきます。通常、20代の女性の場合、尿道やそのまわりの粘膜が潤っていて、ふっくらと十分な厚みがあるため、オシッコの穴(=尿道口)がよく見えないことがあります。しかし、GSMになると、尿道まわりの粘膜が乾いて、非常に薄くなってしまうため、尿道の穴のくっきりとした丸い形状や、時に穴の中さえ見えてしまうのです。こんなふうに尿道まわりの粘膜が変化すると、見た目だけではなく、いやな症状も現れてきます。

例えば、尿意が刺激されやすくなり、何度もトイレに行きたくなったり、いつも尿がたまっているような感覚があって、すぐにトイレに行きたくなるといった症状も出てきます。ちなみに、GSMによる頻回な尿意は、オシッコが十分にたまっているわけではありません。必死にトイレでオシッコを出そうと頑張ってしまう人もいますが、それはGSM尿道まわりのしわざなのです。騙されないようにしてくださいね。また、尿道まわりの乾燥や弱さは、免疫の力を低下させることもあります。更年期に膀胱炎を何度も繰り返すという人は、GSMが関係している可能性があるといえるでしょう。

頻尿
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『女医が教える 潤うからだづくり』 (主婦の友社 )

この本の著者/二宮典子(にのみや のりこ)医師
二宮レディースクリニック院長。泌尿器科専門医・指導医、性機能専門医、漢方専門医。大阪府出身。日本ではまだ珍しい女性泌尿器科医。ていねいな診療とわかりやすいアドバイスで患者さんからの信頼も厚く、ファンが多い。産婦人科医へ向けた講義にも定評がある。診察モットーは、Be sincere(=真摯に向き合う)。YouTube チャンネル「ココシカ診療所」の登録者は2022 年末現在3万人超。

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ヨガジャーナルオンライン編集部

ヨガジャーナルオンライン編集部

ストレスフルな現代人に「ヨガ的な解決」を提案するライフスタイル&ニュースメディア。"心地よい"自己や他者、社会とつながることをヨガの本質と捉え、自分らしさを見つけるための心身メンテナンスなどウェルビーイングを実現するための情報を発信。



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