「つけなくてはいけない」から「選ぶ楽しみ」を。コンドームソムリエAiさんの「推しコン」方程式

 「つけなくてはいけない」から「選ぶ楽しみ」を。コンドームソムリエAiさんの「推しコン」方程式
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避妊や性感染症予防のために必要なコンドーム。「つけなくてはいけないもの」として、なんとなく選んできた人も少なくないのでは。SNSでコンドームを始めとして性に関する知識を発信しているコンドームソムリエのAiさんによると、国内には130種類以上のコンドームがあるとのこと。Aiさんにコンドームの選び方のコツやコンドームに関するよくある悩みについてお話を伺いました。

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推しのコンドームを見つけよう

——コンドームを選ぶポイントについて教えていただけますか。

2019年からコンドーム試触会というイベントを開催していて、そこで推しのコンドームを見つける方程式(推しコン方程式)をお伝えしています。

その項目は「素材」「厚さ」「形状」「サイズ」「ゼリー」の5つです。日本には私が調べただけでも130種類以上のコンドームがあるのですが、そんなにたくさんある中からいきなり選ぶのは難しいですよね。なので、まず5項目を手掛かりにして好みを絞り込んでいき、推しコンを見つけることを勧めています。なかでも、女性は素材とゼリーを、男性は素材とサイズを重視して選んでいただくことがポイントです。

コンドーム
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——コンドーム試触会ではどんなことをされているのでしょうか。

今はオンラインのみで開催していて、事前に10種類ほどのサンプルのコンドームをお送りし、素材や厚み、ゼリーなどの違いを手元で確かめていただいて、使い分けができる体験を提供しています。

日本ではアソートパックのように複数の種類がセットになった売り方があまりないので、一度に10種類試そうとすると1万円以上かかってしまいます。まずは色々なコンドームを試してもらうきっかけづくりをしたくて試触会を行っています。

参加者は今までで一番若い方だと中学生、上は伺った中では60代の方もいらっしゃいました。パートナーシップなどの悩みを抱えた方などにもご参加いただいたこともあります。

参加者は女性の方が多く、7~8割です。単純に興味があって参加されている方もいますし、教育現場の方や親として知っておきたいという方など、様々です。保護者が参加されて別の回に息子さんが参加されることもありました。

——コンドームは男性が装着するものですが、女性の参加者の方が多いのですね。

女性がコンドームを買うことに対して「ビッチ」のようなイメージってまだ残っているようなのですが私の発信で「女性がコンドームを選んでもいいという発想がなかった」と感想をいただいたこともあります。

男性が装着するものなので、今までコンドームに関する女性の悩みは「相手がつけてくれないからどうしよう」止まりでした。

サイズに関しては、つける側の人を基準にした方がピッタリ合うものに出会えますが、コンドームは女性の粘膜にも接触するものです。デリケートな部分に接触するので、女性にもこだわって選んでほしいと思います。ゼリーや粒などがついているコンドームは、むしろ女性側に対するメリットで作られているもの。女性が選ばないともったいないですよ!

性交痛を解消する方法

——性交痛がある場合、どのように解消する方法がありますか。

前提として前戯が短い可能性があります。なので濡れにくくて痛みが出る場合には、前戯不足を疑ったほうがいいです。そもそも、腟はとてもデリケートなので、疲労や、濡れなかったら・避妊に失敗したらなどのストレスや緊張、不安で交感神経が優位になると、腟分泌液が出にくくなります。
濡れているけれども痛い場合には、性感染症や婦人科疾患が隠れている可能性もあるので、一度、婦人科を受診していただきたいです。また、元々腟が器質的に狭い方もいます。挿入が出来ない、挿入が痛いなどの場合も、産婦人科に相談してみてください。

それでも性交痛が解消されない場合、水溶性の潤滑剤を使う方法があります。ここで注意していただきたいのはローションと潤滑ゼリーの区別をつけていただくこと。よく性交痛解消のためにローションを使う方がいるのですが、ローションは男性の自慰行為用に使われているもので、粘膜ではなく皮膚に使うこと・洗い流すことが前提で作られています。

腟に入れてしまうと完全に洗い流すのは難しいですし、ローションにはオムツや生理用ナプキンにも使われている吸水ポリマーが使われていて、ポリアクリル酸ナトリウムという吸水効果のある成分が多く含まれています。腟内の水分を吸って、カンジタ腟炎になってしまう場合もあるので、注意してくださいね。

また、「潤滑ゼリーはある程度、年をとってから使うものでは」とイメージを持っている方も多いと思うのですが、潤滑ゼリーは年齢に関係なく、痛み予防のためにも使ってほしいです。若くても潤い不足で悩んでいる人は、結構いらっしゃいます。痛いばかりのセックスだと、だんだんレスになりがちですよね。

また、若いうちはさほど必要なくても、この先、いつか必要になるときが来るかもしれませんよね。でも実際は、若い頃に使用したことがないのに、ある一定の年齢で突然使うという方が、潤滑ゼリーを使うハードルって高く感じてしまうんですよ。いまはまだ、潤いとしては必要なくても、付けると暖かく感じるゼリーや、フルーツフレーバーのゼリーなど、エフェクターとして使えるアイテムも多いです。潤滑ゼリーもコンドームと同じくらい、の距離感を作っておく方が、いざ必要になったときにも身近なアイテムとして導入できると思います。

男性向けアダルトコンテンツだけでなく、ティーン向けの漫画でも「痛いけれども、そのうちよくなる」といった描写がありますが、性交痛には何かしら理由があるんですよね。「セックスが痛いのは仕方ない」と思わないでほしいですし、我慢している時間がもったいないと思います。

——コンドーム選びによって、性交痛を解消することもできるのでしょうか。

コンドームが合わなくて性交痛を感じる場合もありますよ。コンドームの素材は天然ゴムラテックス・ポリウレタン・イソプレンラバーの3種類あります。

天然ゴムラテックスはタイヤなどのゴム製品と同じように摩擦が強いので、引っかかりが生じ、痛みが出やすい可能性があります。摩擦で痛みを感じるタイプの方には、ポリウレタンの方が引っかかりがなくて痛みが出にくいですね。ただし、ポリウレタンの方が痛みを感じる場合には、素材の硬さで痛みが出ている可能性も。その場合は、柔らかい天然ゴムラテックスか、イソプレンラバー素材を使うことで痛みが和らぐことがあります。

他にも、潤滑ゼリーが多めについてるコンドームを選ぶのもいいですよ。いきなり潤滑ゼリーを導入するのにハードルを感じる場合にも、潤滑ゼリーつきコンドームがおすすめです。その場合は、セックス後のトークで、潤滑ゼリーが多めのコンドームへのフィードバックをしましょう。「ゼリーが多めのコンドームの方が気持ちいい」「今日のコンドーム、すごくよかった」などのフィードバックをすることで、「潤滑ゼリーを使ってみようか」という話にももっていきやすくなります。

コンドーム
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「コンドームをつけると射精できない」なら泌尿器科へ

——パートナーが「コンドームをつけると勃起しなくなる」など、何かと理由をつけてコンドームをつけるのを拒否するといった悩みも少なくないです。

まずコンドームを使わないのであれば、どういう方法で妊娠と性感染症を防ぐかを相手と話し合ってほしいです。避妊については、女性が低用量ピルを服用するとか、ミレーナ(子宮内避妊器具)を挿れるとか、既婚者の場合などは男性側がパイプカットするなどの方法もあります。

ただ、コンドームを使いたくない理由が、勃起しなかったり射精できなくなったりということでしたら、泌尿器科に行くことを勧めます。強すぎるグリップでのセルフプレジャー等により、女性の腟の中では射精できない(射精困難)という男性も少なくありません。実際に不妊治療では射精障害で悩んでいる男性も珍しくないんですよね。なので、コンドームを付けない理由が、「付けるといけなくなる」のであれば、「それなら泌尿器科に行ったほうがいいよ」と心配してあげることも必要かもしれません。

コンドームを付けないセックスに対して、どちらかが同意をしていないのであれば、それは性暴力に当たります。女性側も避妊に協力してくれない相手に対して、むやみにご自身をリスクにさらす必要はありません。

性感染症については、コンドームがすべて防げるわけはありませんが、多くの性感染症の予防には効果的です。性感染症の多くは自覚症状が出ないものも多いため、定期的に検診を受けておくと良いですね。

例えば、コンドーム以外の方法(低用量ピルやミレーナなど)で避妊ができていて、付き合い始める際にリセット検査を受けて、お互いが陰性であることがわかっていて、他の誰とも性的関係を持たないことが確実といえるのであれば、必ずしもコンドームは必須ではないと私は考えています。

挿入直前にコンドームをつけるかつけないかの話し合いをすると、その場の雰囲気に押し流されてしまったり、断って不穏な空気になるのを恐れて言えなかったりする人も多いようです。セックスの最中だとミスコミュニケーションが生まれやすいので、至る前に落ち着いて話し合いをすることを勧めています。

そもそも「コンドームをつけて」と言ってるだけで、別に相手の人格や存在を拒否してるわけではないんですけどね。なので、付き合い始めた際や、初めてのセックスの前にあらかじめこのような話ができると理想ですよね。

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——コンドームをつけるのを拒否はしていないものの、つけると中折れしてしまう場合にはどう対処すればよろしいでしょうか。

コンドーム装着がスムーズでないと、ムードが途切れて、中折れの原因になってしまうことがあるようです。せっかく二人で盛り上がっているところに突然コンドームをつけなきゃいけない時間がやってくると、コンドームが「二人の時間を邪魔するもの」になってしまい、萎えやすくなってしまうんです。

なので、どのコンドームを使うかを前もって楽しむことが大切です。セックスが始まる前に「今日はこのコンドームを使います!」といった感じで、二人で満を持してお迎えするコンドームを事前に選んでおきましょう。満を持して登場させることによって、コンドームをつける時間もわくわくしたり、新しいコンドームへの期待も高まったりして、装着時にもセックスの中断感はなくなるのではないでしょうか。そのためにも、それぞれが自分好みの推しコン(推しのコンドーム)を選んでほしいです。それでも中折れしてしまう場合は泌尿器科受診をおすすめします。

 

 

【プロフィール】

コンドームソムリエAi
現役養護教諭。公認心理師/思春期保健相談士/国内約130種以上のコンドームを識るコンドームソムリエ®︎「コンドーム選びを前戯に!」実物を触って嗅いで引っ張れる「コンドーム試触会®︎」主催。保健室漫画「先生で〇〇しちゃいけません!」監修。
■Twitter:@Ai_con_j
■Instagram:@ai_con_j

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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