「コンドーム=恥ずかしい」というイメージ。パートナー、性教育…話し合いや捉え方を変えるコツとは?

 「コンドーム=恥ずかしい」というイメージ。パートナー、性教育…話し合いや捉え方を変えるコツとは?
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コンドームは避妊や性感染症予防のために必要なものなのに、「セックスのときに使うもの=エロ」のイメージがあり、コンドームという単語すら恥ずかしい人もいるのではないでしょうか。ネットで「コンドーム」と検索するとアダルトコンテンツが出てくることも。SNSでコンドームを中心に性に関する情報発信を行っているコンドームソムリエAiさんは「10代の子がSNSで『コンドーム』と検索した際に、正しい情報に辿り着けるようにという思いで発信を始めました」と話します。後編ではAiさんに性に関して話し合いをする際のコツなどをお伺いしました。

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コンドームへのフィードバックから試してみて

——依然として社会的に「性に積極的な女性は恥ずかしい」というイメージがあり、話を切り出せない女性も少なくないと思うのですが、話し合いのコツはどんなことがありますか。

私はセックス後のフィードバックをおすすめしています。フィードバック=ダメ出しのイメージを持たれる方も少なくないと思いますが、セックスはパートナーと作りあげていくもの。恥ずかしがりすぎて思いを伝えられず、パートナーと上手くいかなければ、セックスが楽しくない時間になってしまいます。その場しのぎの嘘をついたり演技をして、我慢を続けていても、無理なセックスはそのうちレスの原因にもなってしまいます。それは本来お互い望んでいないことのはず。

伝えにくいことをどう伝えるかのコミュニケーションスキルも身につけていけるといいですよね。「今日はこれがすごく良かったから、次はこういうことをしてみたい」など伝え方のレパートリーをいくつか持っておくといいと思います。

ただ、はじめのうちは、セックスそのもののフィードバックに対して、ハードルが高く感じるかもしれません。なので、まずはコンドームのフィードバックから始めることをお勧めしています。もしその日のセックスが良くなかったとしても、パートナーへの直接のダメ出しではなく、コンドームへのダメ出しをはさみながら伝えると、とても伝えやすくなります。「今日のコンドームだと、あまり奥まで突かれるとちょっと痛いときがあったから、今度は少し浅めで試してみたい」なんて提案につなげれば、相手を傷つけずによりよいセックスへ誘導することが出来ます。コンドームベースでセックスの話フィードバックができるようになると、そのうちセックスそのもののフィードバックも上手にできるようになります。

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——そもそもコンドーム自体も恥ずかしい単語のような空気がありますよね……。

中高生と接すると「コンドーム」という単語に過敏なくらい反応して、エログッズのような扱いをされることにびっくりします。コンドーム自体は教科書に載っているもので、ジャンルとしては管理医療機器。エログッズだったら教科書に載るわけがないですよね(笑)。

高校生に授業をする際には、「コンドーム=エロ」のイメージを取り除くため、ラテックスアレルギーの話をします。「もしかぶれや痛みが出たら、ラテックスアレルギーの可能性があるから違う素材のコンドームを使わないといけない」という注意喚起を必ず入れるようにしています。素材に気を付ける必要があるもので、決して適当に選ぶようなものではないと思ってもらえるよう意識してます。

でもなぜそんな恥ずかしいもののような扱いになってしまうのだろうかというと、大人たちがそういう扱いをしているからだと思います。コンドームを持ってたり、買ったりしたら叱られたといった経験があると、堂々と持ち歩けないものという印象を子どもたちは持ってしまいます。でもそれによってコンドームを使わないセックスが横行してしまったら、そっちのほうがよほどリスクが高いんです。

世界の性教育の基準が書かれている「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」(ユネスコ)では、指標として12歳までにコンドームの装着練習を終えるとされているのに、日本は高校生でもコンドームの装着練習までを授業で学べる保障がありません。

中学校の場合には教科書に写真もイラストも載っていないことが多いうえ、妊娠の過程を取り扱わないとされているため、避妊具としての説明はありません。中学校の教科書では、コンドームは性感染症予防のアイテムとして登場します。つまり、義務教育では避妊具としての知識を与えられないのです。教科書で出てきたコンドームについて、子どもたちが興味を持って調べたときには、アダルトコンテンツにたどり着いてしまうことも少なくありません。アダルトコンテンツでコンドームに関する誤った知識を得てしまい、正確な情報に辿り着けるとも限らないのが現状です。

その後、コンドームは高校の教科書の中でやっと避妊具として紹介されるのですが、ここでも「正しいつけ方」などは載っていないことが多いです。もちろん、学習指導要領を上手に解釈して授業をされている先生方も実際にはいるのですが、どこまで教えるかは先生の裁量や学校の意向によるところが大きいので、コンドームの正しい使い方が学べるかは学校や先生の運次第という現状です。

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——Aiさんは最初からコンドームについて発信することに抵抗はなかったのでしょうか。

私は10歳のときに妹が生まれているのですが、単純にどうやって子どもが産まれるんだろうと興味を持っていたものの、なんとなく聞けずにいて。そんなとき母から翻訳された北欧の性教育本を渡されて、「そこに全部書いてあるから」って言われたんです。日本の絵本では考えられないと思いますが、セックス時の挿入のイラストもあって、セックスすることによって妊娠することとか、妊婦さんの大変さとか、出産の様子、などが時系列で描かれていました。他にもさらっと、お父さんが二人いる家があることなど網羅的に情報が載っていました。

私は性に関する芽生えがある前に正しい情報に触れることができたので、セックス=エロという認識にはならなかったんですよね。たとえば同級生の男子がペニスって言葉を知って騒ぎ始めた頃には、私は既に絵本で知っていて、「肘」や「顎」と同じように単純に体の一部の正式名称くらいの感覚で。よく「寝た子を起こすな」と、性教育をすると性が乱れるといったことを言われる方もいるのですが、私自身はエロではなく知識として知ったことで、恥ずかしさや茶化しみたいな感覚はなかったですし、知っていたことで性行動を助長するなんてこともありませんでした。

子どもにコンドームについていつ教えるべき!?

——事前にAiさんへの質問を募集しました。まず、コンドームのみの避妊効果についての質問がありました。

コンドームの避妊効果でいえば、低用量ピルよりは低いです。コンドームをつけていても破損や脱落によって避妊に失敗してしまうことがあるので、必ず説明書を読んで正しく装着できているかを確認してください。ほとんどの人が、コンドームのつけ方を学校で学ばないので、大人でも間違ったつけ方や、危険な使い方をしている人が意外といます。

コンドームの破損は小さい穴だとわからないこともあります。つけるときには何もなかったけれども、摩擦の段階で引っかかって穴が開いてしまうことも。コンドームは財布など窮屈なところに入れず、ハードケースなどに入れておくといいですね。また、コンドームは油分で劣化しやすく、ハンドクリームやリップクリームをきっかけに破けてしまうこともあるので注意してくださいね。

——避妊以外のコンドームの使用目的を教えていただけますか。

コンドームは性感染症予防のために効果的ですが「性感染症予防のためにしなくちゃダメ」と伝えると、ちょっと堅苦しいですよね。コンドームをもっと前向きにつけてもらうためにメリットも伝えたいので、私はセックスのエフェクターとして勧めています。

日本はセックスレス大国。セックスの情報源がアダルトコンテンツで、セックス=挿入・射精で一辺倒になりやすいです。ゆえに付き合いが長くなるとセックスがマンネリ化しやすいのですが、コンドームを変えることによって感触が変わり、セックスの感覚にも変化が。「コンドームがない方が気持ちいい」と言われたら「むしろこのコンドームをつけた方が気持ちいい!」と、推しコンを差し出しながら言い返せるくらい、コンドームを女性の味方にしてほしいです。また、マンネリ打破アイテムとしていきなりラブグッズを使うのはハードル高いですが、推しコンや潤滑ゼリーのレパートリーを増やすだけでも、手軽に飽きないセックスができますよ。

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——保護者として、子どもにコンドームについてどのタイミングで伝えるべきでしょうか。親としてパートナーがいる場合は、性別問わず持ち歩かせたほうがよいでしょうか?

国際セクシュアリティガイダンスを基準に考えると、小4~6までに伝えておくといいと推奨されています。日本だと、中3で学校の授業でコンドームが出てくるので、そのタイミングで話す方法もあるとは思うのですが、中3まで家庭で性の話をしなかったのに、いきなりコンドームの話をするのはハードルが高いですよね。なので、コンドームについて話すなら小学校高学年までが一つのタイミングです。もちろん、小学校高学年であっても、いきなりコンドームの話をするのではなく、プライベートゾーンの話や、体の成り立ちや妊娠の仕組みなど、子どもの発達年齢や理解力を考えながら、段階を踏んで伝えていくといいですよ。

ただ、今は性の芽生えが早い子もいるので、小学校高学年でも既にエロに敏感になってたり、既に思春期に突入していて話しにくかったりする場合もあります。高校生の親御さんからは私のTwitterを「大事なことが書いてあるからフォローして読んでおいて」とお子さんに伝えたという方もいました。保護者会などでは、直接親から子どもに伝えにくいなら、信頼できるサイトやマンガなどのコンテンツに頼るのも方法のひとつ、と伝えています。「性教育に即したマンガや書籍などを本人に渡す」「トイレに置いておく」「自分が読みかけというテイでリビングに置いておく」など、取り入れやすい形で始めるのもいいかと思います。

普段から性の話ができる関係性ができているなら、練習しておくといいよと親からコンドームを渡す方法もあります。ただ、持ち歩くかは子ども自身が選べばいいと思います。親からコンドームを渡すのであれば、避妊を含めて、セックスにはどういったリスクがあるのかを伝え、もし何かあったら相談してねということも伝えることも大事です。

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※前編ではコンドームの選び方を中心に伺っています。

【プロフィール】

コンドームソムリエAi
現役養護教諭。公認心理師/思春期保健相談士/国内約130種以上のコンドームを識るコンドームソムリエ®︎「コンドーム選びを前戯に!」実物を触って嗅いで引っ張れる「コンドーム試触会®︎」主催。保健室漫画「先生で〇〇しちゃいけません!」監修。
■Twitter:@Ai_con_j
■Instagram:@ai_con_j

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雪代すみれ

雪代すみれ

フリーライター。企画・取材・執筆をしています。関心のあるジャンルは、ジェンダー/フェミニズム/女性のキャリアなど。趣味はヘルシオホットクックでの自炊。



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