【意外と知られていないセックスレスの側面】実は、両親との関係性に要因が?臨床心理士が解説
性の悩みは、こころと身体が影響しあう問題であるにも関わらず、悩んでいても「誰にも言えない」そんな人が多いようです。SNSを中心に性の悩みに関する情報を発信する臨床心理士の西田めぐみさんが、心と性にまつわる大切なお話を連載形式で綴ります。
はじめに
意外と知られていないセックスレスの要因。実はその要因の中には、両親との関係が密接に関わっていることがあります。今回はセックスレスにお悩みの方の参考になるよう、その仕組みと対策についてお伝えします。
結婚相手に求めるものは何?
結婚されている方は。パートナーを選ぶときにどんなことを重視しましたか?またお付き合いをしていてどんな時に「あ、この人と結婚したいな」と思いましたか?一方、現在独身でいつか結婚したいと思っている方は、どんな人と結婚したいと思いますか?
結婚というステージとなると、おそらく刺激よりも安心感を重視される方が多いのではないかと思います。ではその安心感とはなにか。安心感というものを細分化すると、その中には職業や収入などの金銭的要因、住む場所や周囲の人(相手の実家など)との関係などの環境的要因、そして何よりも結婚相手との関係性という関係的要因などに分けられると思います。そしてその中でセックスレスと密接に関わってくるのが、相手との関係性です。
パートナー関係の根底にある親子関係
パートナーとしての関係を築いていくとき、人はどんなことを基準または理想にしていると思いますか?相談者の方にお聞きすると、優しさや思いやり、自分らしくいられることなどの答えが返ってきます。それらは実は、過去に得ているもの、もしくは過去に得られなかったもののどちらかなんですね。
そこに密接に関わってくるのが親子関係です。ほとんどの人は、親子間で初めての人間関係の構築を経験します。だからこそ、親子関係はそれぞれの人の人間関係の基礎になると言われています。つまり、これまでの人生のなかで得られた居心地のいい関係性、もしくは得られなかったからこそ得たい関係性を人はパートナーに求めると思われます。
「お父さん(お母さん)みたいな人と結婚したい」「お父さん(お母さん)みたいな人とは絶対結婚したくない」という考えは一見正反対のように見えますが、どちらも理想の親子関係をパートナーに求めているという意味では共通しているとも言えます。
親離れができていない人の特徴
最近は友達のように仲のいい親子関係のかたも多いですが、親離れできていないとは少しちがうように思います。わたしが個人的に思う“親離れできていない人”とは、パートナーと一緒に過ごす中で「こんなふうにしてくれたらいいのにしてくれない」と不満を感じたときに、両親に過去にしてもらったこと・してほしかったことのフィルターが強すぎる人。そしてそれを自覚できていない人は特に注意です。「両親に甘えられなかったからパートナーには甘えたい」「母は家事をなんでもやってくれる人だったから、奥さんにもそうしてほしい」そう思うのは自然なことでもありますが、自分はどんなフィルターを通して相手と向き合っているかということを自覚しているとしていないとでは、相手との関わり方や相手の受け取り方も大きく変わってきますよ。
過去の親子関係や理想の親子関係をパートナー間で再現するとセックスレスになる
動物は近親相関を避けようとする本能があります。それは人間も同じです。
たとえば、母親が甲斐甲斐しく身の回りのことをしてくれる人だとして、同じようなタイプの人を求めて結婚した場合。パートナーも希望に添って甲斐甲斐しくお世話をしてくれるでしょう。そこには安心感ややすらぎがあります。でもそのベースに“理想の母親像・父親像”が強すぎると、無意識のうちに本能で“セックスの対象”としては見られなくなるというケースは少なくありません。
“夫に対して妻は母親になってはいけない”という文言は昔から聞きますが、実はときめきがなくなるというレベルの話ではないんですね。ちなみにこれは男女逆の場合も然り。「パートナーのことは嫌いじゃない(むしろ好きな場合も多い)。でもセックスとなるとなんだか嫌悪感や違和感を感じてしまう」これはセックスレスの男性にも女性にも見られる現象です。理想の親フィルターで相手を見ていると、近親相関を防ごうとする本能がはたらきます。相手に自分でも意識しないうちに本能がパートナーを拒否してしまうなんて、なんだかやるせないですね(涙)。
関係性のパターンを少しだけ変えてみる
ここまで読んでいただいて、自分はセックスを拒否されている側の方は相手が親離れできていない人なのかもしれない、と思っているかもしれません、だからと言って、それを直接相手に伝えたりするのはいったんやめておきましょうね。
もしパートナーが自分の両親とあなたを重ねてきたのであれば、パートナーが両親としてこなかったパターンを一緒にしてみるのもいいかもしれません。たとえば、先述したような母が専業主婦だったから妻にもそうしてほしいという夫であれば、週末だけ一緒に家事をすることを楽しむ。これは“楽しむ”がポイントです。小さなことでいいんです。「洗濯物たたむからタオルだけお願いしていい?」「一緒にやると楽しいね」「すごく助かる」とにっこり笑顔で言ってみるなど、工夫してみて。
逆に自分の親フィルターが強くてセックスを拒否している場合は、あなたが過去に親子関係で得たもの、得られなかったものを改めて考えてみて。そのうえで、今あなたが求めているものはパートナーに対してのものなのか、両親に対してのものなのか、見つめてみましょう。それだけで見えてくるものがあるかもしれません。
1人でがんばるのは苦しい。そんな時はカウンセリングを利用するのもあり
自分自身や相手との関係性を見つめ直すのは、精神的にも体力的にもパワーが必要な作業です。どうしても1人でするのは苦しいし、うまくできない・・・そんな時は臨床心理士や公認心理師の心理カウンセリングを利用することも選択肢にいれてみて。きっとあなたの味方になってくれる心理士がいます。1人で悩まないで、上手に自分と、そしてパートナーと付き合っていきましょうね。AUTHOR
西田めぐみ
臨床心理士 / マインドフルネス認定講師。性のお悩みについて臨床心理士の視点から発信、カウンセリングを行う。オンライン心理カウンセリング「amariカウンセリングルーム」主宰。
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