女性の性欲は恥ずかしい?セルフプレジャーに罪悪感を感じる人に臨床心理士が伝えたいこと

 女性の性欲は恥ずかしい?セルフプレジャーに罪悪感を感じる人に臨床心理士が伝えたいこと
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性の悩みは、こころと身体が影響しあう問題であるにも関わらず、悩んでいても「誰にも言えない」そんな人が多いようです。SNSを中心に性の悩みに関する情報を発信する臨床心理士の西田めぐみさんが、心と性にまつわる大切なお話を連載形式で綴ります。

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「女性が1人エッチするって変ですか?」これは女性から寄せられる相談内容の1つです。結論から言うと、まったく変ではありません。この記事では、女性が自分で行う性的行為についての心理学的メリットや注意点についてご紹介します。

セルフプレジャーという考え方

1人エッチ、マスターベーション、オナニー、自慰行為。これらはすべて自分で行う性的な行為のことを指します。いろんな言い方がされますが、最近では「セルフプレジャー」とも言われます。直訳すると「自分自身による楽しみ・喜び・快楽」という意味。

マスターベーションは専門的にも使われる言葉ではありますが、「手を汚す」という意味から由来するなど少しネガティブな意味も含んでいるため、個人的にはセルフプレジャーの方が気持ちよく使える言葉だなぁと感じています。ここでも「セルフプレジャー」という表現でお話していきますね。

セルフプレジャーに対する罪悪感

・「女性なのにセルフプレジャーをしている自分は変」

・「してはいけないことをしている」

・「なにかの病気なのではないか」

・「こんなことしているのは自分だけかもしれない」

相談を寄せられるなかでよく目にするのは、このような意見です。どれも1人で性的な行為をすることについて、相談者の方たちがネガティブな印象や罪悪感をもっていることがわかります。

そもそもなぜネガティブな印象や罪悪感を持ってしまうのか。それは、性についていろんな視点から知る機会が限られているという社会的な要因と、女性はこうであるべきだというジェンダーとしての文化的要因があるのではないかと思います。ただ最近では“女性でも性を楽しんでいい”と発信する人も増えてきていますし、女性の性生活に対してもいろんな視点や価値観があっていいということが広まってきているのも感じています。

セルフプレジャーのメリット

実際に女性もセルフプレジャーをすることのメリットはたくさんあります。

①自律神経やホルモンバランスを整えてくれる

自律神経は交感神経と副交感神経からなっているのですが、ストレスフルな環境ではどうしても交感神経が優位になりがち。セックスやセルフプレジャーで気持ちよくなっている時間は副交感神経が優位になりやすいので、自律神経のバランスを取るためにも効果的といえます。また自律神経が整うとホルモンバランスも整いやすくなります。

②睡眠効果

セルフプレジャーでもオーガズムに達すると、幸せホルモンと呼ばれる「オキシトシン」と「エンドルフィン」といったホルモンの分泌や自律神経系が活発になります。それによて心身がリラックスした状態になり、寝つきをよくしたり深い睡眠を促してくれる効果が期待できます。

③自分の身体を大事にする感覚がこころの安定につながる

女性にとって、性器ってなんだか不思議で特別なパーツですよね。視覚的に確認できる部分が少ないですし、積極的にさわる機会も少ないし、自分の一部ではあるんだけど実はあまり知らない部分というか。中には、自分で自分の性器をさわることはダメなことだと教わってきた方もいるかもしれません。

でも自分の身体を知ることは自分自身を知るための一歩。自分の気持ちいい場所はどこか、どんなふうにさわると気持ちいいのか。自分にとって気持ちいい感覚とはどんなものか。セルフプレジャーを続けているとそれがだんだんわかるようになります。だれかの手を借りずとも、自分自身で身体やこころを気持ちよくリラックスさせてあげられるのは、こころの安定にとても大事なこと。こころの健康を保つうえで大切なポイントのセルフケアにもつながります。

セルフプレジャーはマインドフルネスにもつながる

マインドフルネスとは、“今ここに注意を向ける・集中する”こと。私たちは現代社会のなかで、常になにかすることや考えることに追われています。1つのことに集中するよりもマルチタスクが当たり前になっているという人も多いのではないでしょうか。実はこれ、脳が疲れやすくなる原因の1つ。マインドフルネスはそんな現代人の脳を休めて心身をリラックスさせてくれる効果があります。

マインドフルネスにはヨガや瞑想、ウォーキングや食事などいろんな面で取り入れることができるのですが、個人的にはセルフプレジャーもマインドフルネスの1つになると考えています。むしろ人によっては、瞑想やヨガやよりも取り入れやすいかもしれません。

セルフプレジャーをしたことがある方はわかりやすいと思うのですが、身体を触って気持ちよくなっているときは、その感覚に自然と集中していませんか?「今日のごはん何にしようかな」「明日の仕事いやだな」と思いながら興奮に達する方はきっと少ないはず。セルフプレジャーを通して、マインドフルネスな感覚を体感してくださいね。

女性向けのセルフプレジャーグッズは増えている

最近では女性向けのかわいくてオシャレなセルフプレジャーグッズがたくさんあります。インテリアとして飾ってもおかしくないものも多くて、個人的にはコスメを選ぶようなワクワクした感覚になることも。百貨店の女性服フロアに展開されている店舗もあって、社会的に“女性も性を楽しんでいい”という環境が少しずつ広まっていることはうれしいですね。興味がある方はぜひチェックしてみて下さいね。

セルフプレジャーを行ううえでの注意点

基本的にはご自身が心地よくしていただけたらと思うのですが、指やグッズは清潔な状態にしておくことと、あまりにも強い刺激を与えすぎないようにすること。この2点は注意してもらえたらと思います。

また頻度は個人差があるので、月に1回でも毎日でも問題はありません。ただ日常生活に支障がでるほど頻繁に欲求が高まる場合は、心理的なストレスなど他の要因が隠れている可能性も。その場合は臨床心理士や公認心理師などこころの専門家や医療機関に相談してみてくださいね。

さいごに

セルフプレジャーはしないといけないものではないし、したくない人はもちろんしなくてもOK。でもセルフプレジャーをする女性は少なくないし、することで得られるメリットもたくさんあります。自分の性や身体と上手につきあって、それぞれが自分の方法で性生活を楽しんでいけるといいですね。

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AUTHOR

西田めぐみ

西田めぐみ

臨床心理士 / マインドフルネス認定講師。性のお悩みについて臨床心理士の視点から発信、カウンセリングを行う。オンライン心理カウンセリング「amariカウンセリングルーム」主宰。



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