セックスをアップデートするためにできること|女性も男性も、不安や不自由から自由になるために

 セックスをアップデートするためにできること|女性も男性も、不安や不自由から自由になるために
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性の悩みは、こころと身体が影響しあう問題であるにも関わらず、悩んでいても「誰にも言えない」そんな人が多いようです。SNSを中心に性の悩みに関する情報を発信する臨床心理士の西田めぐみさんが、心と性にまつわる大切なお話を連載形式で綴ります。

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セックスの自由とは

セックスについてご相談を受けるなかで日々感じることがあります。それは“現代には、セックスの自由があまりにもない”ということ。

ここでいうセックスの自由とは、むやみに性に奔放になることではありません。もっと基礎的なもの。言い換えれば、“安心安全に、そして本当にセックスを楽しむための選択肢をもっている”ということ。また男女ともに、そもそも自分たちのセックスが不自由なことに気づいていない人もとても多いように思います。

その不自由さに気づいて殻をやぶることができたら、セックスはもっと安全で、より充実したものになりますよ。今回は、セックスライフがより自由になるためのマインドアップデート方法をお伝えします。

現状にある不自由さ

セックスライフを送る中で、きっと誰もが経験してきたのではないでしょうか。

「避妊は成功しただろうか」

「パートナーが避妊をしてくれない」

「セックスが痛い」

「今日はセックスをしたくないな。でも言えない」

そんなセックスをする中での不安や恐怖や痛み。

このような場面に直面し、相談をしてきてくれる方たちはみんな不安でいっぱいです。こんなときどうすればいいのか、誰に相談すればいいのかわからない。選択肢はたくさんあります。でも私たちがそれを知る機会はほとんどありません。学校の性教育やアダルトビデオから得られる知識もないわけではないけれど、きちんとした知識として知っておくことはむずかしいのが現状。セックスで困ったときにどうすればいいかわからないなんて、すごく不自由ですよね。

不自由を生むマインド

また方法やツールの選択肢がないだけでなく、セックスに対する価値観や姿勢も不自由を生む原因のひとつです。例えば、

「セックスは挿入することがゴール(挿入ありき)」

「女性は強い刺激を与えれば与えるほど強い快感が得られる」

「セックスは男性が攻めるもので、女性は恥ずかしそうにするのがいい」

「セックスはコンドームをつけずにする方が気持ちいい」

など、日本ではアダルトビデオや都市伝説の影響もあり、実際に行う前から《セックスはこういうものだ!》とセックスの価値観は固定化されがちです。※これらは全部まちがいですよ(念のため)。

このセックスの価値観の固定化ってすごく厄介。怪我や望まぬ妊娠の恐れがあることはもちろん、セックスがマンネリ化する、もしくはどんどん過激になる、という危険性もはらんでいます。そうなると見えるのは目の前の快感だけで、もはや相手のことは見えなくなってしまうかもしれません。本来お互いが心地よくなるはずのセックスが、誰かに操られたかのように危険でおもしろくないものになってしまうのは、とても不自由で悲しいことですね。

選択肢を増やしてアップデートしよう!

今からでも間に合う!セックスをアップデートするためにできることはたくさんあります。選択肢は1つでも多い方がいい。ぜひあなたのリストにストックしてもらえるとうれしいです。

①痛みをカバーしてくれるツール

痛み予防のためにいちばん身近に使えるのがコンドーム。そして潤滑ゼリー。以前のコラムでもお伝えしていますが、日本のコンドームの種類は本当に豊富!形や素材、ゼリーの量など、それぞれにセールスポイントがあります。自分たちのスタイルに合わせて選ぶことで、改善できる痛みもあります。

潤滑ゼリーも同じ。外側から足せるものや、中に注入できるピストンタイプのものなど、その場に応じて使い分けることで痛みをカバーしてくれます。コンドーム・潤滑ゼリーともに、最近はオシャレで一見ラブツールとわからないものも多いので、購入もしやすいと思います。

②失敗できない避妊ツール

まずはコンドーム。「コンドームはつけない方が気持ちいい?」それはもう古い!最近ではむしろつけた方が気持ちいい、とまで言われるものもあるくらいコンドームは進化しています。わざわざリスクの高いセックスをするよりも、コンドームをつけて安心安全に気持ちいいセックスの方が自由で楽しいですよ。これはぜひコンドームをつけたがらないパートナーへの売り文句として使っていただきたいところです。

また、コンドームと一緒に低用量ピルやIUD(子宮内避妊具)を使うことで、より避妊効果は高くなります。そして、避妊に失敗したり膣内射精をしてしまったときは、72時間以内に緊急避妊薬を服薬することで対応ができます。日本では医師の処方せんが必要となりますが、最近はオンラインで診察をして処方せんを出してくれる病院もありますので、必要なときはとにかく早めに医師に相談してくださいね。

③「セックスはこうでなければならない」から卒業しよう!

子どもを作る目的でないのなら挿入にこだわる必要もありません。男性が挿入でオーガズムを得ることにこだわらず、射精をゴールとしないスローセックスという方法もあります。男性としては今までよりも快感が減ってしまうのでは?と思われるかもしれませんが、スローセックスとはお互いに全身で感じることを楽しみ、究極のオーガズムとエクスタシーを感じるものと言われています(子どもが欲しい方も、挿入を含めたスローセックスを楽しむことができます)。

でも自分たちだけのやり方なんてどうしたらいいのかわかりません、という相談もよく頂きます。答えはとてもシンプル。自分の気持ちいいと相手の気持ちいいをちゃんと知ること。触り方や声のかけ方、場所や体位、時にはラブグッズを使ってもいいと思います。

いろんなことを試して、「それ好きだな」「気持ちいいな」と思ったら、相手に伝える。そして、相手の反応にもちゃんと耳を傾ける。見た目の反応だけで判断せずに、ちゃんと気持ちいいところや感じたことを口頭でも教えてもらう。そうやってゆっくりと、でも確かにお互いの反応を知っていくことで、セックスの選択肢は無限大に広がります。

男性からばかりじゃなく女性から攻めるのもいいものじゃないですか。逆に恥じらっている男性を見てキュンとする女性もいると思いますよ(私もそうです)。

最後に

セックスは言葉と身体でできる究極のコミュニケーションです。安心安全を担保したうえで、不自由にマニュアル化された形にこだわらず、どんどん自分たちのセックスをアップデートしていきたいですね。お互い自由になったセックスは唯一無二の2人だけの共通言語となって、2人の関係性をより深めてくれるはずです。
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AUTHOR

西田めぐみ

西田めぐみ

臨床心理士 / マインドフルネス認定講師。性のお悩みについて臨床心理士の視点から発信、カウンセリングを行う。オンライン心理カウンセリング「amariカウンセリングルーム」主宰。



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