「血液検査が正常でも血管の病気になる」のはなぜ?一般的な健康診断ではわからない血管リスク
健康診断の結果が返ってきて、血糖値もコレステロールも正常。血圧も問題なし。「よかった、今年も健康だ!」そう思って、ほっとした経験はありませんか?もちろん、健康診断で異常がないのはよいことです。ただ、ここでひとつ知っておいてほしいことがあります。それは、血液検査の結果が正常でも、血管の病気を完全に否定できるわけではない、ということです。血液検査だけではわかりにくい血管のリスクと、普段から気をつけておきたいポイントについて、医師がお話しします。
血液検査が正常でも、血管の中までは見えない
実際、心筋梗塞や脳梗塞は、それまで特に自覚症状がなく、健康診断でも大きな異常を指摘されていなかった人に起こることがあります。
「検査が正常なのに、どうして?」と不思議に思いますよね。その理由のひとつは、一般的な健康診断の血液検査と、血管そのものの状態は、必ずしも一致しないからです。
まず、健康診断で行う血液検査について考えてみましょう。
一般的な健康診断では、LDLコレステロールや血糖値、中性脂肪、肝機能、腎機能などを調べます。血圧や体重、腹囲なども確認しますね。
これらは、生活習慣病や将来の病気のリスクを知るために、とても大切な検査です。
ただし、血液検査でわかるのは、あくまで血液中の成分や体の働きの一部です。血管の壁にどの程度の変化が起きているのか、血管の内側にどんな状態のプラークがあるのかまで、通常の血液検査だけで直接確認することはできません。
例えば、LDLコレステロールが現在は正常範囲でも、過去に高い状態が長く続いていた場合、すでに動脈硬化が進んでいる可能性があります。
また、コレステロールが基準範囲内だからといって、動脈硬化がまったく起きていないとは限りません。
血液検査は大切な手がかりですが、それだけで血管の状態をすべて判断することはできないのです。
血管の壁にできる「プラーク」が問題になることも
血管の病気を考えるうえで、知っておきたいのが「プラーク」です。
プラークとは、血管の壁にコレステロールなどが蓄積してできるかたまりのこと。動脈硬化が進むと、血管の内側にプラークができ、血管が狭くなることがあります。
ただ、怖いのは血管が狭くなることだけではありません。
プラークの状態によっては、その表面が破れたり、傷ついたりすることがあります。すると、そこに血小板などが集まって血栓ができ、血管が急に詰まってしまうことがあるのです。
心臓の血管で起きれば心筋梗塞、脳の血管で起きれば脳梗塞につながる可能性があります。
しかも、血管がある程度狭くなっていても、普段は症状が出ないことがあります。安静にしていると問題なく過ごせていても、運動などで心臓が多くの血液を必要としたときに、胸の痛みや息切れが現れる場合もあります。
一方で、プラークが破れて急に血管が詰まると、それまで目立った症状がなかった人でも、突然、心筋梗塞などを発症することがあります。
つまり、血液検査の数値だけでなく、血管の中で何が起きているのかも重要なのです。
「今の数値」だけではわからない、これまでの積み重ね
もうひとつ、見落としたくないのが、これまでの生活習慣や検査結果です。
健康診断は、基本的にその時点での体の状態を確認するものです。しかし、動脈硬化は一晩で進むわけではありません。
長年にわたる高血圧や高血糖、コレステロールの異常、喫煙など、さまざまな要因が積み重なって進行していきます。
例えば、40代のころはLDLコレステロールが高かったものの、食事や運動を見直して、50代では正常範囲に戻ったとします。
これは、とてもよい変化です。ただし、数値が改善したからといって、それまでに起きた血管の変化がすべて元に戻るわけではありません。
同じように、血圧の薬を飲んで数値が落ち着いていても、過去の高血圧による影響が残っていることがあります。
だからこそ、健康診断の結果を見るときは、今年の数値だけでなく、過去数年間の変化も確認してみてください。
「去年より少し悪くなっている」「ここ数年、血糖値がじわじわ上がっている」といった変化も、体からの大切なサインです。
血液検査が正常でも、気をつけたい人は?
では、どんな人が特に注意したほうがよいのでしょうか。
例えば、次のような人です。
- たばこを吸っている、または以前に長期間吸っていた
- 過去に高血圧や糖尿病、脂質異常症を指摘されたことがある
- 親やきょうだいなど、近い血縁者に若い年齢で心筋梗塞を起こした人がいる
- 慢性腎臓病がある
- 以前より体重が増え、運動する機会が減っている
もちろん、これらに当てはまるからといって、必ず血管の病気になるわけではありません。
ただ、現在の検査値が正常でも、こうした要因がある場合には、全体的なリスクを考えることが大切です。
特に、喫煙や糖尿病、高血圧などが複数重なっていると、心血管疾患のリスクは高まりやすくなります。
「検査結果に異常がないから大丈夫」と決めつけるのではなく、自分の年齢や病歴、家族歴、生活習慣も含めて考えてみましょう。
一般的な健康診断ではわからないことを、どう調べる?
ここまで読むと、「では、血管の状態を知るには、特別な検査を受けたほうがいいの?」と思うかもしれません。
実は、血管の状態を調べる検査には、いくつかの種類があります。
例えば、
[頸動脈エコー検査]首の血管を超音波で観察し、血管の壁の厚さやプラークの有無などを確認できます。
[ABI検査]腕と足首の血圧を比較して、足の動脈が狭くなっていないかを調べるために使われます。
[脈波伝播速度などを測定する検査]動脈の硬さを評価することもできます。
ただし、これらの検査ですべての血管を完全に調べられるわけではありません。頸動脈に異常がないからといって、心臓の血管にも異常がないとは限らないのです。
また、症状のない人全員が、こうした検査を受ける必要があるわけでもありません。
検査を追加するかどうかは、年齢や持病、喫煙歴、家族歴、症状などを踏まえて判断します。気になることがあれば、かかりつけ医に相談してみてください。
胸の痛みや息切れは、見逃さないで
血管の病気で注意したいのは、初期には症状が出にくいことがある一方で、症状が現れたときには早急な対応が必要な場合もある、ということです。
例えば、歩いたり階段を上ったりすると胸が締めつけられる、以前より息切れしやすくなった、少し動いただけで胸が苦しくなる、といった症状には注意が必要です。
もちろん、こうした症状がすべて心臓の病気によるものとは限りません。それでも、繰り返す場合や以前と違う変化がある場合は、早めに医療機関で相談してください。
特に、以下の症状が出た場合は、心筋梗塞や脳卒中などの可能性があります。すぐに119番へ連絡してください。
- 突然の強い胸痛や息苦しさ
- 冷や汗を伴う胸の不快感
- 顔や腕の片側の麻痺
- ろれつが回らない
健康診断の結果が正常だったとしても、こうした症状を「気のせい」と片づけてはいけません。
血管を守るために、今日からできること
では、血管の病気を防ぐために、普段から何を心がければよいのでしょうか。
基本は、特別なことよりも、毎日の生活習慣です。
まずは、血圧やコレステロール、血糖値を適切に管理すること。
健康診断で異常を指摘された場合は、そのままにせず、必要に応じて医療機関で相談しましょう。
喫煙している人は、禁煙を考えてみてください。
食事では塩分をとりすぎないようにし、野菜や魚、大豆製品などを取り入れることも大切です。
運動についても、いきなり激しいトレーニングを始める必要はありません。
散歩をする、少し遠回りして歩く、座りっぱなしの時間を減らすなど、無理なく続けられることから始めてみましょう。
そして、健康診断の結果は、毎年保管しておくのがおすすめです。数値の変化を追っていくと、自分の体がどう変わってきたのかが見えやすくなります。
「正常だから安心」で終わらせない
血液検査で異常がないことは、もちろんよいことです。必要以上に心配する必要はありません。
ただ、血液検査は血管の状態を直接すべて調べるものではなく、動脈硬化や心筋梗塞などのリスクを完全に否定できるわけではありません。
大切なのは、検査結果を正しく受け止めること。そして、数値だけでなく、これまでの病歴や生活習慣、体の変化にも目を向けることです。
「健康診断は正常だったけれど、最近、階段で息切れするようになった」「家族に若くして心筋梗塞を起こした人がいる」ーそんな場合は、検査結果だけで判断せず、医師に相談してみてください。
血管は、普段は目に見えません。だからこそ、症状がないうちから健康状態を確認し、できることを続けていくことが大切です。
健康診断の結果がよかったら、まずは素直に喜びましょう。そのうえで、これからも血管をいたわる生活を続けていきたいですね。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
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