「血液の流れやすさ」は赤血球の柔らかさで変わる?最新研究でわかってきた毛細血管と赤血球の関係
血液をサラサラにする、と聞くと、玉ねぎや納豆を食べたり、水をこまめに飲んだりすることを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。もちろん、食事や水分補給は大切です。でも、血液の流れやすさは、それだけで決まるわけではありません。実は、血液の中を流れている「赤血球の柔らかさ」も大切なポイントなんです。今回は、普段あまり意識することのない赤血球と毛細血管の関係について、医師がわかりやすく解説します。
赤血球は、ただ酸素を運ぶだけじゃない
赤血球の役割は、肺で受け取った酸素を全身に届けることです。
赤血球は、中央がくぼんだ円盤のような形をしています。そして、もうひとつ大きな特徴があります。それは、形を柔軟に変えられることです。
なぜ、そんな柔らかさが必要なのでしょうか。
私たちの体には、髪の毛よりもずっと細い血管が張り巡らされています。それが「毛細血管」です。酸素や栄養を、筋肉や皮膚、脳などの細胞に届ける大切な通り道です。
赤血球の直径はおよそ7〜8マイクロメートルですが、毛細血管の中には、それより細いものもあります。
そのままでは通りにくい場所でも、赤血球は自分の形を変えながら、狭い血管をすり抜けていきます。まるで、狭い隙間を体を縮めて通り抜けるようなイメージですね。
赤血球が硬くなると、どうなるの?
では、赤血球の柔軟性が低下したら、どうなるのでしょうか。
赤血球が変形しにくくなると、細い血管を通過する際に抵抗が大きくなり、血液の流れに影響する可能性があります。
特に気になるのが、糖尿病や高血圧などとの関係です。
研究では、糖尿病や高血圧のある人で、赤血球の変形しやすさが低下していることが報告されています。酸化ストレスなどによって赤血球の膜や内部の性質が変化することも、その理由のひとつと考えられています。
こうした変化が毛細血管の血流に影響すると、組織に酸素を届ける働きにも関わってくる可能性があります。
例えば糖尿病では、網膜や腎臓などの細い血管に障害が起こることがあります。2026年に発表された研究でも、糖尿病網膜症の患者では、赤血球の変形しやすさが低いほど、網膜の血流障害や病気の重症度と関連していました。
ただし、赤血球の硬さだけが原因というわけではありません。血管そのものの状態や血糖値など、さまざまな要因が関係しています。
「血液サラサラ」と「赤血球の柔らかさ」は同じ?
ここは、少し誤解しやすいところです。
一般に「血液がドロドロ」といわれると、血液中の脂質が多い状態をイメージするかもしれません。でも、血液の流れやすさには、赤血球の柔軟性だけでなく、赤血球の量や血漿(けっしょう)の性質なども関係しています。
また、血液が固まる働きと、血液が流れやすいかどうかも別の話です。
つまり、赤血球が柔らかければ、それだけで血液が健康になるわけではありません。
赤血球の柔軟性は、血液の流れを考えるうえで大切な要素のひとつですが、普段の健康診断で直接測定する一般的な項目ではありません。数値だけで健康状態を判断することも、現時点では難しいのです。
赤血球の健康を守るためにできることは?
赤血球の柔軟性を保つために、これさえすれば大丈夫、という特別な食品や方法が確立されているわけではありません。
だからこそ、まずは基本的な生活習慣を大切にしたいところです。
- 食事はバランスよく。 野菜や果物、魚などを取り入れ、偏った食生活を避けましょう。
- 適度に体を動かす。 ウォーキングなど、無理なく続けられる運動がおすすめです。
- 血糖値や血圧を管理する。 糖尿病や高血圧がある方は、治療や定期的な受診を続けることが大切です。
- 水分補給を忘れずに。 特に汗をかく日や暑い季節は、脱水を防ぐよう心がけましょう。
なお、水をたくさん飲めば赤血球が柔らかくなる、というわけではありません。持病などで水分制限がある方は、医師の指示に従ってください。
血液の健康は、目に見えないところにもある
血液の流れやすさを考えるとき、コレステロールや血糖値に目が向きがちです。でも、血液そのものの性質や、赤血球の柔軟性も、全身に酸素を届けるうえで重要な役割を担っています。
赤血球の柔軟性と病気の関係については、現在も研究が進んでいます。ただし、赤血球を柔らかくすれば病気を予防できる、とまでわかっているわけではありません。
まずは、食事や運動などの生活習慣を整え、血圧や血糖値をきちんと管理すること。地道な取り組みですが、血管の健康を守るための基本です。
体の隅々まで酸素を届けるために、赤血球は毎日働いています。普段は意識しない小さな働きにも目を向けながら、自分の体を大切にしていきたいですね。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。
- SHARE:
- X(旧twitter)
- LINE
- noteで書く





