〈広島→山口県 周防大島 移住〉33歳女子、家を購入。迷いや不安はなかった?

〈広島→山口県 周防大島 移住〉33歳女子、家を購入。迷いや不安はなかった?
写真提供: りんこ

近年、テレワークの普及やライフスタイルの多様化により、都市から地方へ完全移住をする人々が増加傾向にあるのはご存知でしょうか。自然豊かな環境でのびのびと生活ができる、住宅費などの物価の安さ、あるいは子育てのメリットなども魅力の地方移住。一方で、実際に移住した人たちのリアルな本音はどうなのでしょうか。自らの価値観に基づき「暮らしを選ぶ人」から、その魅力や課題、リアルな日常を深掘り。理想と現実の狭間で見えてくる移住者たちの「暮らしの選択肢」の今を伝えます。

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今回お話を伺ったのは、2026年に広島から山口県の周防大島へ移住された、りんこさん。20代の頃から島巡りをはじめ、すっかり島に魅了された彼女が、「いつか島移住をしたいと」夢を抱くようになったのは自然な流れだったと言う。一方で、家族からは単身で島移住することに難色を示されたり、また彼女自身の心の準備も整わず、一歩を踏み出すまでに時間がかかった。足かけ数年に及ぶ夢の実現は、2026年6月。ある転機が同時に起こる。タイミングを逃さなかった、りんこさんの決断の背景には何があったのか。りんこさんの #暮らしの選択肢 に迫ります。

〈移住者プロフィール〉りんこ

1993年生まれ。 瀬戸内海出身。

2026年6月より、山口県周防大島に家を購入し、島移住をする。

 Instagram: @rinko_kurashi93

いきおいで家を購入。迷いや不安はなかった?

山口県東南部に位置し、瀬戸内海に浮かぶ島では、淡路島、小豆島に次いで3番目の面積の山口県 周防大島。温暖な気候と豊かな自然環境が魅力のこの島に、平屋建ての家を購入し、単身で移住したのが、りんこさんだ。

りんこさんは、もともと瀬戸内海育ちで、直近では広島に住んでいた。「日本海は、瀬戸内海に比べると波が力強くて、びびります(笑)だから、瀬戸内海からは出たくなくて」と話すりんこさんが、島に魅了されるようになったのは、社会人になったばかりの20代の頃。島巡りをはじめたからだ。半年ごとに、瀬戸内海に浮かぶ大小さまざまな島を訪れていく中で、「いつか島移住したい!」という思いが芽生えるようになったのだと話す。

「それぞれの島には、それぞれの魅力があるのですが、どこの島にも共通するのは、島の人々の暖かさです。仲良くなったら、家に招いてくれて。そういった距離感がとても心地良い、と感じるようになりました」

りんこさんの理想の暮らしは、彼女の大好きな映画『ALWAYS 三丁目の夕日』のような、昭和の人付き合いができる環境。困ったときは、ご近所さん同士が大家族のように助け合ったり、時にはみんなで集まってテレビを見るなど、日常の喜びや悲しみを地域全体で分かち合っている風景に憧れがあるのだという。さまざまな島を訪れ、島民の方々と仲良くなるたびに「じゃあ、うちにおいでよ」と誘われる。そんな経験を繰り返すうちに、「今の時代、『ALWAYS』が体現できるのは、島なんじゃないかな」と感じるようになったんだそう。

しかし、島移住を実現するまでの道のりはそう簡単なものではなかった。中でも難関だったのが、家族からの応援が得られなかったということだったという。

「以前から家族に、島に住みたいと言っていました。けれど、私はもともと大きな会社に正社員で勤めていたので、それを手放してまで島に住むというのに、疑問があったのだと思います。それに、結婚はどうなの?という空気感もあったような気がします」

また、りんこさん自身の考え方も、島移住へ踏み出すうえでの足枷になっていたのかもしれないと、今になって振り返る。家族の気持ちを優先するだけでなく、友人や会社の同僚にどう思われるのか――そんな周囲の目を気にして、踏み出すことをためらっていたのかもしれない、と。

転機が訪れたのは、2026年に入ってからだった。

長年、「島に移住したい」と言い続けてきたことで、少しずつ家族の理解も得られるようになった。「そういうのもアリなのかもね」。そんな言葉が聞けるようになり、島移住への追い風が吹き始めた。

ちょうど同じ頃、友人を介して周防大島町役場の職員を紹介してもらい、島を案内してもらう機会にも恵まれた。

実は、りんこさんが以前から憧れていたのは、アートの島として全国的に知られる香川県の島だったそう。移住のチャンスがなかったわけではない。しかし当時は、家族の反対があったことに加え、りんこさん自身もまだ心の準備が整っていなかった。思い描いていた島暮らしは、なかなか実現しなかった。

それから時が経ち、りんこさんは30代になっていた。今度は、家族からの理解も得られ、自分自身の気持ちも固まっていた。島へ移住するための壁が、外側からも内側からも、少しずつなくなっていたのだ。

そんなタイミングで出会ったのが、周防大島だった。

周防大島は、りんこさんが以前からドライブで訪れていた、馴染みのある島でもあった。期待を胸に島を訪れると、その直感は見事に的中。島を案内してもらう中で、後にりんこさんの住まいとなる一軒の平屋と出会った。

島内でいくつかの物件を見て回った中で、なぜその家に惹かれたのか。

理由は、とてもシンプル。

「今すぐにでも住める家だったから」

紹介された物件の中では築年数が最も新しく、大きな改修工事も必要ない。島での暮らしを始めるための準備が、ほとんど整っていた。

「いきおいで家を買いました」

そう笑うりんこさん。

長年思い描いてきた「島に住む」という夢は、思いがけず、ひとつの家との出会いをきっかけに、現実のものとなった。

「今だ」というチャンスを見逃さなかったりんこさんだが、いくらなんでも家を買うというのは大きな買い物。また、仕事のことや、単身で移住することに対して、不安はなかったのかについて聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「2年ほど前から、自分自身と向き合う時間を意識的に作ってきたんです。ジャーナリングなどを通して、自分が本当に望んでいる暮らしが明確になっていきました。だから、家を購入するときも大きな迷いや不安はなかったです。以前は、世間一般の『普通』や周りからどう思われるかを気にしていました。でも、自分自身と向き合ううちに、人生はもっと自由でいいんだと思えるようになったんです。何歳からでも人生は変えられるし、自分の選択次第でいくらでも面白くできる。だからこそ、これからも自分で選んだ人生を正解にしていきたいです」

写真提供: りんこ
写真提供: りんこ

こうして、2026年6月、りんこさんの周防大島での島暮らしがはじまった。

離職中、島での過ごし方

りんこさんは、現在キャリアブレイク中。島に家を購入した最初の数ヶ月間は、広島で仕事を続けながら、二拠点生活という形で、行き来を続けたが、その仕事も一区切りし退職して、完全移住が叶った。

現在の1日の過ごし方を伺ってみると、多くの人が思い描く、地方暮らし、田舎暮らしの構図が広がっていた。

朝は8時頃からスタート。「もうちょっと早く起きたいんですけど、いくらでも寝れちゃうんです」と、顔をほころばせながら言う。その後、家のことをしたり、ジャーナリングをしたり、読書をしたり。また、夕方には海の方まで、散歩に出かけるのが今の生活の一番の楽しみだそう。瀬戸内海で生まれ育ったこともあり、海は彼女にとってはなくてはならないものなんだとか。海を眺めながらぼーっとする時間は、ただの暇つぶしではなく、心と体を深く癒やす最高のリフレッシュタイムになる。

そして、夜は22時までには寝る。広島で働いていた時は、家に帰るのが0時を過ぎるなんてこともざらにあったため、180度異なる生活だ。

「今は会社員を辞めて、自分のペースで好きなことをしながら過ごしています。実は、島でお店を開くことが決まったんです。前職ではカフェの店長をしていたので、その経験も活かしながら、いろんな人が気軽に立ち寄れる場所を作りたいと思っています。これから少しずつ準備が始まるので、今は自分の時間も大切にしながら、これからの暮らしを楽しんでいます」

写真提供: りんこ
写真提供: りんこ

ちなみに、りんこさんが理想とした『ALWAYS 三丁目の夕日』のような人付き合いについては、実現できたのか伺ってみると、返ってきたのは意外な答えだった。

「住んでみたら、意外とドライな人付き合いではあったんですよ。嫌な意味ではなく、あまりプライベートなことには立ち入らないというような。だけど、道端ですれ違ったら挨拶をしたり、立ち話もします。仲良くなったらやっぱり「家においでよ」と誘ってくれます」

周防大島は、全国的に見ても、高齢化が進んでいる地域。そこで、りんこさんが出会い、交流する島民の多くも、お年寄りがほとんどなんだそう。

「私はまだ30代ですが、お年寄りの方から逆に元気をもらっています。そういったことを経験できる人付き合いができたのは、島暮らしならではなんじゃないかと思います」

映画とは、少々異なった人付き合いではあるけれど、それでも島の人からもらえるエネルギーに感化されているという、りんこさん。後半では、さらに詳しく、周防大島での暮らしについて伺った。

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