HSPの人が「敏感なまま働く」方法ー仕事でつまずく原因と対策
「HSPだとわかった。でも、仕事は相変わらずしんどい」そんなあなたへ。HSP専門のキャリアコンサルタントが「自分が消耗しにくい環境」を知り、働き方を組み立て直していく方法をお伝えします。『繊細な自分のままで賢く生きる』(フォレスト出版)より内容を一部抜粋して紹介します。
HSPとは:アメリカの心理学者、エレイン・N・アーロン博士が提唱した「Highly Sensitive Person」(感受性が非常に高い人)という心理概念をもとにした言葉です。刺激や変化を深く受け取り、気持ちも深く動きやすいため、よく考えて行動を選ぼうとする生まれ持った気質のことです。HSPは病気や、性格の欠陥ではなく、神経系の特徴の一つとされています。人口の約30パーセントにみられるとされ、特別な少数派というより、人間の自然な気質のバリエーションの一つです。
悩みはあなたを知るヒント
これまで受けたご相談を振り返ると、HSPの方が仕事でつまずくとき、悩みの出方にはいくつかの典型的なパターンがあります。
一見、バラバラの悩みに見えるのですが、実は、根っこのところでつながっています。「感受性の使いどころが、ちょっとズレているだけ」。それだけのことが多いのです。
ここから、相談でよくお話を伺う、具体的な3つの場面を見ていきます。
①自分の改善点をエンドレスに探してしまう
自分なりに、最善は尽くしている。なのに、「ここが足りなかった」「もっとできたはず」と、考え続けている状態のことです。
落ち着いて振り返ると、周囲からは「そこまでやらなくていいよ」「ここまでできているんだから、そんなにひどい状況ではないよ」と、声をかけてもらえている。それなのに、「いや、その言葉に甘んじてはいけない」と、力が入ってしまうのです。
どうすればよかったのか、と内省することに、かなりの時間とエネルギーを割いてしまう。気づけば、休むタイミングも失って、ダウンしてしまったことも、これまで何度もあった。
「やりたい仕事のはずなのに、なぜかしんどい」。そんな矛盾めいた状態が続いて、自信も、少しずつ失っていく。
これは、 「自分で自分を追い詰める」という、完璧主義の現れです。
②合うと思った仕事が合わないとき
医療系、教育系、対人支援の仕事で、よく聞く悩みです。
人の役に立ちたいという思いで、専門学校に通って、資格をとって、仕事を始めた。
ところが、いざ働き始めてみたら、「こんなはずじゃなかった」と感じることが、重なってくる。例えば、患者さんには優しく接する上司なのに、自分への指導は嫌味ばかりで、人間として尊敬できないことが耐えられなくなるなどです。目の前の方をサポートするぶんには、やりがいを感じている。けれど、他のところで、神経をすり減らすのです。
専門性が高い仕事なので、まったく違う仕事につこうと思っても難しい。じゃあ職場を変えればいいのか、と転職してみても、似たような状況が、また始まる。
周りの人がそつなく業務をこなす姿と、自分を比べてしまう。どこへ行ってもストレスを抱えてしまうは、自分の性格が問題なんじゃないか、と行き場のない思いに、かられることもあります。
これは、 「理想と現実のバランスが取れない」という、板挟みの状態です。
③新しい仕事を始めたときの緊張
転職や、異動、昇格で、新しい業務を手がけるとき。
上司や同僚からは「わからないことがあったら遠慮なく聞いてね」「期待しているよ」と、前向きな声をかけてもらえる。
でも、頭の中では、こんな声が同時に流れています。
「期待以上の成果を出さなきゃ」
「勢いあまって、期待外れの結果になったらどうしよう」
踏み込みたい気持ちと、慎重に進めたい気持ちが、ぶつかりあっている状態です。
自分で自分の働き方を振り返ると、滑り出しは、頼もしくてかっこいいほど。ところが、社内チャットで報告するスレッドを間違えてしまった、というような、本当に小さなつまずきで、一気に勢いが止まる。
頭の中では「あの誤投稿、みんな見たかな…」のリプレイが30分続いていたりします。
はしゃいでいた自分が、急に恥ずかしくなって、周りとのコミュニケーションを、避けるようになる。
これは、 「スキル発揮と自意識過剰」という、感情のジェットコースターに振り回されている状態です。
感受性を活かせていない正体
ここまで見てきた3つの悩みは、内容は違って見えますが、原因は、ほぼ共通しています。
強い感受性を、ストレス源に向けすぎている。ただ、それだけです。
能力がないとか、社会人として適切な振る舞いができないとか、そういう話では、まったくありません。起こったことに対して、感受性を、ネガティブな方向に使ってしまっているだけ、なのです。
努力が足りないのでは、と自分の考えや行動を過剰に振り返ってしまうのは、自分への期待が高すぎるから。
理想の仕事なのに合わない気がするのは、仕事の内容だけでなく、人間関係や評価制度の中身まで、理想化してしまっているから。
大したことないつまずきで自信をなくすのは、つまずきをきっかけに慎重になりすぎて、正解以外の出来事を、許容できなくなっているから。
もし、これらが努力不足から起きているのなら、もっと努力すれば改善するのかもしれません。けれど、実際はどうでしょうか。
もがけばもがくほど、空回りする。そんな感覚、ありませんか。
つまり、努力不足や、能力の問題では、ありません。HSPの感受性そのものが原因でも、ありません。感受性の向く先が、ネガティブな方に偏っているだけ。
「でも、感受性なんてコントロールできないよね?」と思った方、その通りです。そう、感受性そのものは、コントロールできません。感覚のアンテナを閉じて、鈍感になりましょうと言いたいわけではないのです。
感じたことを、ネガティブに捉えすぎないようにする。同じように、意味もなくポジティブな解釈を加える必要もありません。
ポジティブかネガティブかをジャッジする視点を抜けて、「どうしたら少し前に進めるか」という見方に差し替えるだけです。
HSPらしく能力を発揮するためには、「自分を変える」より、「使い方を変える」ことの方が向いています。
実際、働き方や関わり方を少し調整しただけで、「前よりラク」「意外と続けられるかも」と感じ始める方もいます。
力を出し方を一気に変える必要もなく、小さな調整の積み重ねで、景色が変わってゆくのです。
この本の著者…みさきじゅり
HSP専門キャリアコンサルタント・国家資格キャリアコンサルタント。自身もHSS型HSP。日本におけるHSPキャリア支援の先駆者の一人として、2018年より専門的な支援に従事。営業・人事など日系/外資での実務経験を持ち、約30年にわたり心理学・自己理解・キャリア形成を学び続けてきた。これまで延べ数千人のキャリア・転職・人間関係の相談に携わり、「人×環境×神経特性」の相性を重視した支援を行う。自著4冊・累計約3万部。ダイヤモンド・オンラインへの寄稿は今も読み継がれ、新聞・雑誌などメディア取材実績も多数。現在は転職エージェントのキャリアアドバイザーとしても活動している。
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