「投票先が決められない」「後悔したら」趣味のように政治を語る2人に訊く選挙とのちょうどいい距離感

セイジドウラクのお二人(撮影:雪代すみれ)
セイジドウラクのお二人(撮影:雪代すみれ)

「政治の話」と聞いて、「難しそう」「簡単に語っちゃダメな気がする」といったイメージを持っている人は少なくないかもしれません。TBSラジオのポッドキャスト番組『セイジドウラク』は「趣味のように政治を楽しむ」をコンセプトに配信が行われています。本ポッドキャストがベースとなって誕生した本が『選挙・政治のふしぎ しくみがわかればガチでおもしろい!』(小学館)。著者の澤田大樹さん・宮原ジェフリーさんに、投票先の選び方や、応援していた候補者が落選したときの受け止め方、投票に後悔したら…?などお伺いしました。

Google Newsでヨガジャーナルの記事が見つけやすくなります

Googleに登録する
広告

投票先、どうやって選ぶ?

——選挙のときに「投票先の選び方がわからない」と悩む人は多いです。どうやって考えればいいのでしょうか。

澤田大樹さん(以下、澤田):一つの考え方として、自分の中の関心や問題意識、優先順位などを整理する方法があります。誰かと政治について話していると「この人はこういう問題意識なんだな」と気づけて、逆に「自分はどうだろう」と考えるきっかけになるのですが、普通に生活していて、政治の話をする機会はあまりないですよね。

日頃、政治に触れていないと、自分が政治の中でどこに関心があるのか、聞かれてわからない人も多いと思うんです。なのでまずは「自分にとって身近な政治的な課題は何か」から考え始めるのがいいと思います。人によっては子育てのことかもしれないし、介護のことかもしれないし、物価高が気になる人もいますよね。

宮原ジェフリーさん(以下、宮原):ただ「自分の政治的な課題は何か」という問いは、質問として大きすぎるところもあると思うんです。それに、自分にとっての課題を見つけておくことも大事ですが、そのまま答えになるようなことを言ってくれる候補者はなかなかいないんです。もちろん「このテーマについて意見を聞かせて」と直接聞く方法もあるのですが、最初からは難しいですよね。

僕はそれぞれの候補者が何を言っているかを見て、そこから逆算する方法をおすすめすることもあります。選挙になると候補者たちが色々なことを言い始めるので横に並べて比べてみると、国政なら国政で、自分の町なら町で、こういう問題があって、こういう議論がされているんだと知ることができる。そのうえで「じゃあ自分はどう考えるか」と進めていく。「候補者の中で何が課題として提案されているのか」を見て、選択肢を並べて比べることも、一つの方法だと思っています。

澤田:自分の生活から考え始めるか、候補者の主張から考え始めるか、考え方の入り口は一つではないということですね。

——候補者が少ない選挙だと「候補者の中に良いと思える人がいない」ということもあると思います。

宮原:選挙では候補者の中から誰かが選ばれてしまいますし、選挙で決まった結果としてその後の政治は動いていきます。でも大事なのは、自分が考えているような課題が政治の場で語られていないと気づくこと。公約には書かれていなくても、その人が別の場でどんな発言をしているか、どんな考え方を持っているかを探してみるのもいいと思います。

自分の気づきを候補者にメールなどで届ける方法もあります。返答をもらえても「全然ずれているな」と感じることもあると思います。それでも「ただわからない」よりも「調べた結果、この選択肢は最悪だ」と思える方がじっくり検討できたってことですよね。選挙で政治は終わりではないですから、選挙を通じて見えたことを出発点に、日々の政治のことを考えていくきっかけになればいいんじゃないかと思います。

左から宮原ジェフリーさん、澤田大樹さん(撮影:雪代すみれ)
左から宮原ジェフリーさん、澤田大樹さん(撮影:雪代すみれ)

投票を間違えることもある。大事なのはその後

——選挙公報を見て前日や当日に決めている人も多いと思います。選挙好きなお二人にとって、それではもったいないという感覚はありますか?

澤田:選挙公報どころか、投票所に行ってからポスターを見て決めている人もいると思います。

宮原:政治との関わりの度合いは人それぞれ違います。これまで選挙に行かなかった人が「選挙公報を見て選ぼう」という意識を持っているなら、それは大きな変化で素晴らしいことだと思います。一人ひとりが深く考えて関わっていく状況は理想ですが、全員がそうできるわけではありません。

日頃から政治に関心を持ち、選挙にも熱心に向き合っている人からしたら「もっと情報を知ってほしい」と思うかもしれない。けれど、それはある意味でお節介でもあるんです。少しずつ情報に触れることで意識が変わってくると思うので、無理のない範囲の学びとして、セイジドウラクを活用していただけたらと思います。

——一方で、慎重な人ほど「自分が投票した人が政治家としてちゃんと仕事できないような人だったらどうしよう」と、投票そのものに責任を感じすぎてしまう声も聞きます。

澤田:間違えることはあると思っています。企業だって採用で見抜けないことがありますよね。投票する距離感で見ているだけでは、その人がどんな人か本質的な部分まで見抜くのは難しいものです。極端な例ですけど、「ある党の候補者だから」と投票したら、いつの間にか別の党に移っていた、なんてこともありますし。

失敗したと思っても、そのことが頭に引っかかっていれば「こういう選び方をしたけれどよくなかった」「違うポイントを見なきゃいけないな」と気づける。それだけで前より一歩成長した自分になっていますよね。

宮原:身近な例でいえば、マッチングアプリで「嫌な人だったらどうしよう」と思っても、とりあえず一度会ってみるじゃないですか。そのうえで採用でも恋愛でも「容姿だけで選んだらダメ」とか「いいことしか言わない人は要注意」とか、だんだん判断基準がわかってきますよね。政治も同じであって、政治だから特別と思わなくていいと思います。

澤田:後悔してもいいですけど、後悔にこだわり続ける必要はないといいますか、次は違う見方や選び方をすればいいので、そんなに構えなくていいと思います。

宮原:数票差で当選ということもありますが、だからといって何人も投票した人がいる中で、「あなたが悪い」とはならないですし。

——白票を投じるという選択についてはどうお考えですか。

宮原:白票という選択肢もあり得ると思います。

澤田:僕は白票なら投票に行かなくていいと思っています。

宮原:そこは二人で意見が違うところですね。大事なのは、行くか行かないか、白票にするかどうかも含めて、自分で選ぶことなのかなと思います。

左から宮原ジェフリーさん、澤田大樹さん(撮影:雪代すみれ)
左から宮原ジェフリーさん、澤田大樹さん(撮影:雪代すみれ)

落選しても、一票は無駄にならない

——自分が応援した候補者が落選したとき「自分の投票は無駄だった」と落ち込んでしまう人もいます。

澤田:無駄ではないですね。選挙に出た人はそのときもらった票の数を一桁単位で覚えていることが多いです。ポスターを見るだけの遠い距離感の人であっても、自分に一票を入れてくれたことは、選挙に出た人にとって大きな重みになる。何百票の世界でも、何万票の世界でも、一票の価値は、出馬した人にとってはとても大きなものなんです。

宮原:選挙に出て訴えたことに対して、その人の名前を投票用紙に書いた人が、たとえ二桁の人数だったとしても、家族でも友人でもない誰かが自分の名前を書いてくれたということは、少なくともその人の中には残ります。それに、必ずしも当選した人が掲げた政策がそのまま実現するというわけでもないんです。言い換えれば、落選しても「その人の言っていることを支持する人がこれだけの数いる」という記録は残る。一票は色々な意味でのメッセージにもなりうるので、決して無駄にはならないですね。

——落選という結果自体は、応援していた人からするとやはり悲しいものです。

宮原:それはそうですよね。ただ同時に、自分が応援していない候補者に投票した人が、それだけの数いたことをどう捉えるかも大事だと思います。

澤田:アプローチの仕方を変える選択もあります。「この人の素晴らしさを多くの人に知ってほしい。この人には政治家になってほしい」と強く思うなら、神輿の担ぎ手になる道もあります。ただ票を入れるだけでなく、たとえばボランティアをするとか、運動して押し上げていく側に回るという方法も。

宮原:自分の一票だけではなく、その人に積み重なっていく票をどう集めるか、その力になれるかまで考えるようになると、政治との関わりのフェーズが一段階変わってきますよね。「落選したから終わり」ではないんです。

※後編に続きます。

 

『選挙・政治のふしぎ しくみがわかればガチでおもしろい!』(小学館)
『選挙・政治のふしぎ しくみがわかればガチでおもしろい!』(小学館)

 

左から宮原ジェフリーさん、澤田大樹さん(撮影:雪代すみれ)
左から宮原ジェフリーさん、澤田大樹さん(撮影:雪代すみれ)

 

【プロフィール】
澤田大樹(さわだ・だいき)

TBSラジオ国会担当記者。「荻上チキ・Session」「武田砂鉄のプレ金ナイト」などに出演。取材範囲は政府、国会、省庁のほか、新型コロナ、東日本大震災、高校演劇など。著書に『ラジオ報道の現場から 声を上げる、声を届ける』(亜紀書房)、『永田町の人をウォッチしてみた』(カンゼン)。
X:@nankuru_akabeko

宮原ジェフリー(みやはら・じぇふりー)

選挙ライター、キュレーター。大学職員、美術館学芸員、専門学校講師などを経て現在フリーランスで選挙と現代美術を中心にライター、コメンテーターとして活動。著書に『沖縄〈泡沫候補〉バトルロイヤル』(ボーダーインク)。
X:@ichiro_jeffrey

Google Newsでヨガジャーナルの記事が見つけやすくなります

Googleに登録する
広告

RELATED関連記事

Galleryこの記事の画像/動画一覧

左から宮原ジェフリーさん、澤田大樹さん(撮影:雪代すみれ)
左から宮原ジェフリーさん、澤田大樹さん(撮影:雪代すみれ)
『選挙・政治のふしぎ しくみがわかればガチでおもしろい!』(小学館)
左から宮原ジェフリーさん、澤田大樹さん(撮影:雪代すみれ)